「住民の姿が消えた」ブルキナファソで武装勢力の攻撃が拡大 避難者が急増

2022年09月13日
ブルキナファソ西部デドゥグでMSFが建設中の医療施設=2022年7月 © MSF/Adama Gnanou 
ブルキナファソ西部デドゥグでMSFが建設中の医療施設=2022年7月 © MSF/Adama Gnanou 

「お金も食べものも、何も持たずに逃げました。自転車さえ置いてきたのです」

西アフリカの内陸国ブルキナファソでは、西部ブクル・デュ・ムウン地方で武装勢力による攻撃が激化している。ハビさん(仮名)はその影響で首府デドゥグに逃れた1人だ。

ハビさんはデドゥグから20キロほど離れた町に住んでいた。7月7日と8日の夜、武装した男たちに町が襲われ、恐怖で胃を締め付けられながら、すぐさま家族と共に逃げ出した。子どもたちを安全な場所に連れ出さなければならなかった。

安全だった西部にも攻撃が広がる

ハビさんと同じように首府に避難した人たちは、約6700人にのぼる。ブルキナファソで2015年に起きた政変以降、それまで危機の中心地は東部や北部で、西部のこの地方は紛争や激しい暴力による被害が比較的少ないと見られていた。だが今年7月に入り、攻撃が急に激しくなった。

武装勢力からの圧力で、ブクル・デュ・ムウン地方では住民の姿が消えた町が増えつつある。生き延びた人の中には、家族を目の前で殺害された人たちもいて、残虐行為が行われていることは明らかだ。国境なき医師団(MSF)は2021年1月からこの地方で当局と連携し、医療・人道援助を行っている。

恐怖とショックをまだ生々しく感じています。そのため都市で暮らすのが厳しくても、農期で畑に戻りたい気持ちがあっても、人びとは自宅に戻れないのです。

バカリ・ウードラゴ/国境なき医師団プロジェクト・コーディネーター

首府デドゥグでMSFが支援する診療所の待合室 © MSF/Adama Gnanou 
首府デドゥグでMSFが支援する診療所の待合室 © MSF/Adama Gnanou 

ハビさん一家は避難後、まず学校で寝泊まりし、その後、デドゥグに長く住む親戚の家に移った。大家族が2つの小さな部屋で暮らすのは手狭だが、ハビさんにとって最大の懸念は食事だ。

「住む場所はお腹が満たされてから考えるつもりです。穀物を3袋もらいましたが、もう1袋しか残っていません。30人以上の家族で、稼ぎ手は一家で1人だけ。どうやって子どもたちを養えばよいのでしょう。お腹が空き過ぎて、皆眠ることもできません」

彼女は家族のために洗濯の仕事をして現金を得たいのだが、変形性関節症を長年患い、歩くこともままならない。マラリアに感染し、ここ数日は体力も弱っていた。ハビさんはMSFが支援する診療所を訪れた。

MSFは保健省と連携し、今年6月からデドゥグにある診療所で基礎医療を無償で提供している。「すでに5000件以上の診療を行いましたが、ほとんどの患者は最近避難してきた人たちです。また、マラリア流行が本格化する季節のため、保健省と協力して地域の医療センターに40床の入院病棟を開設し、重症化した子どもや大人の治療にも力を入れていきます」とウードラゴは話す。

MSFはさらにカウンセラーによるグループセッションや個別相談で、この困難な時期を乗り越えるための心のケアも行っている。

デドゥグの診療所で患者の診察を行う医療スタッフ © MSF/Adama Gnanou
デドゥグの診療所で患者の診察を行う医療スタッフ © MSF/Adama Gnanou

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