ブルキナファソ:紛争と暴力で苦しむ国に新型コロナウイルスという新たな難題も

2020年04月09日掲載

これまで紛争やクーデターが続いてきた西アフリカの内陸国ブルキナファソ。先ごろ、同国を訪れた国境なき医師団(MSF)オペレーション・ディレクターのイザベル・ドゥフルニーが、この深刻な紛争被害地域で起きている人道危機について警鐘を鳴らした。

ブルキナファソで医療援助活動にあたるMSFスタッフ © Noelie Sawadogo/MSF ブルキナファソで医療援助活動にあたるMSFスタッフ © Noelie Sawadogo/MSF

ブルキナファソの人道危機と暴力はどれほど深刻なのでしょうか?

2015年以来、ブルキナファソ国内では、イスラム教聖戦主義グループが犯行声明を出して実行に出る事態が起きています。ここ2年で、治安状況はこれ以上ない速度で悪化しており、前代未聞の危機に陥っています。

特に影響の深刻な北部地方、中北部地方、サヘル地方では、暴力の絶える日がほとんどありません。一般市民は、武装組織の抗争や、国軍およびその同盟勢力との戦闘に加えて、略奪、暗殺、虐殺など、さまざまな暴力行為にさらされています。

直近では、3月8日に、北部地方ヤテンガ県の3つの村が襲撃されています。政府発表によると、少なくとも43人が殺害されました。被害者の大部分はフラニ人です。彼らは、かねてより聖戦主義者たちに協力的であるとして他の村々から疎外され、非難の対象となりがちでした。MSFは、昨今相次いでいる襲撃によって被害を受けた生存者たちへの治療を支援し、ヤテンガ県の中心都市ワヒグヤの病院において、数千人の避難民に向けた診療と給水にあたっています。

住まいを追われる人びとが増加するということは、国内のフラニ人以外の人びとの生命も危機にさらされる可能性が高まるということです。2018年末時点における国内避難民の数は4万8000人近くでした。それが、2019年末には56万人となり、現在は78万人に及んでいます。今後数カ月で100万人を超えるという予測もあります。

ブルキナファソで医療援助活動にあたるMSFスタッフ © Noelie Sawadogo/MSFブルキナファソで医療援助活動にあたるMSFスタッフ © Noelie Sawadogo/MSF

MSFなどの援助団体は、被害者たちの基本的ニーズを十分に満たしていると言えるでしょうか? こうした環境下で、どのような対応を取っているのでしょうか?

危機が深刻化する速さには、現地に入った援助団体も困惑するばかりで、明らかに援助の手が足りない状況です。避難民の数が多くなると、避難先地域のインフラにも影響が出てきます。例えば、ティタオ町では、もはや水が十分に行き渡っていない状況です。そこで、2019年11月から、MSFは複数の井戸を掘削し、約1万人の地元住民と約2万人の避難民に水を供給してきました。ただし、1人あたり1日5リットルほどを確保できるかどうかといったところです。ティタオとウィンディギの2カ所では、必需品キット3600組の配布にも当たっています。ブルキナファソ当局と世界食糧計画(WFP)が食糧配給を始めたものの、一部の紛争被害者の手に届くだけにとどまっています。また、栄養状態の悪化を防ぐ食料品目はほとんど含まれていません。

医療体制も事実上崩壊しかけています。特に影響の深刻な北部地方、中北部地方、サヘル地方では、医療施設の大半が閉鎖もしくはほとんど機能していない状態です。 MSFは、バルサロゴ、ジボ、ワヒグヤ、ティタオ、ウィンディギなどで医療を提供していますが、治安の問題があり、活動展開が著しく困難になる場合もあります。私たちは小規模チームを編成して活動していますが、その一部はどこにも移動できず足止めされている状態です。一方、比較的移動しやすい地域もあります。ブクル・デュ・ムウン地方を例に挙げると、デドゥグとボロモの2郡において、12万の子どもを対象としたはしかの集団予防接種を計画中です。ただし、これもまた、いつ急激に状況が悪化するか分かりません。

最後に申し上げておきたいのは、大勢の住民が暴力にさらされているということです。軍事行動の激しい地域の住民には、もはやMSFも接触すらできない状況です。必要最低限の安全も確保できないので、現地入りして医療ニーズを調査して、適切な対応措置を立ち上げるといったことが難しいのです。ティタオの北のマリ国境に近いバーンとソレなどが、その状況に当てはまります。

ブルキナファソのティタオ町にてMSFが運営する給水場 © Noelie Sawadogo/MSFブルキナファソのティタオ町にてMSFが運営する給水場 © Noelie Sawadogo/MSF

すでに人道的状況は深刻ですが、季節性マラリアのピークと農業の端境期に入る6月には、さらに事態が悪化していく可能性が高いと思われます。暗い見通しですが、回避する手段はあるのでしょうか?

MSFでは、その回避を優先課題としています。もちろん、もっと多くの地域へのアクセスを確保し、どこであろうとニーズがあれば援助を提供できるようにしないといけません。それゆえ、今後も、MSFのプレゼンスを強化していき、地元住民との緊密なネットワークを構築していくべきでしょう。ただし、現在でも、村、町、避難キャンプにいる大勢の人びとに接触できています。治安の問題はあるものの、そうした場所に人道援助を提供することは、依然として可能な状況です。
 
毎年6月から10月は、サヘル地帯の幼い子どもにとって生死を分ける期間です。ブルキナファソでは、マラリア症例の大発生を防ぐために、かねてから医薬品の配布キャンペーン(いわゆる季節性マラリアの化学的予防)が実施されていました。しかし、今年は通常通りの実現が難しい状況です。78万人の避難民の大半が、土地、家畜、家財など、あらゆるものを残して家を出ていかざるを得ず、深刻な経済的苦境にあります。農業の端境期で食糧が不足する時期への準備もままならない見通しです。この点も頭に入れておくべきでしょう。紛争が農業・商業に対して非常に大きな損害を与えており、避難者を受け入れた地元村民たちの負担も大きくなっています。
 
実効性のある大規模な緊急援助対策を展開して、6月に予想される死者数の激増を回避したいところですが、その時間的猶予は、あと数カ月しかありません。対策の中身としては、十分な量の給水、栄養補助食品を含む食糧配給、医療ケアの確保などが考えられます。まだ手遅れではありません。MSFの活動も含めて、今こそ援助に向けた動きを拡大していかなくてはなりません。

ブルキナファソ国内に設置されたMSF医療施設 © Noelie Sawadogo/MSFブルキナファソ国内に設置されたMSF医療施設 © Noelie Sawadogo/MSF

サハラ以南アフリカで最初の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)死亡例がブルキナファソで報告されました。これは新たな懸念材料となるでしょうか?

3月9日に、首都ワガドゥグにて、最初の複数の症例が確認されました。フランス国内での感染をきっかけに、同月18日には、少なくとも27人へと瞬く間に拡大しました。ブルキナファソは、ただでさえ前例のない人道危機に直面しており、その結果、医療体制も脆弱になっているだけに、非常に気がかりです。
 
MSFは、政府当局と連絡を取りながら、新型コロナウイルス感染症の流行抑止と患者対応に向けて、いかなる支援ができるかを検討しています。今回のような流行では、医療従事者が最前線に立ちます。彼らを感染症から守り、必要に応じた医療を受けられるようにすることが重要です。
 
渡航制限に見られるような人の移動規制も、MSFにとっては厄介です。経験豊富なスタッフをブルキナファソに派遣して、今後何週間もかけて人道援助を拡大していくことが困難となる恐れがあります。 

ブルキナファソで医療援助活動に従事するMSFスタッフたち © Noelie Sawadogo/MSブルキナファソで医療援助活動に従事するMSFスタッフたち © Noelie Sawadogo/MS

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