ファイザー、ビオンテック、モデルナがコロナワクチン技術をいますぐ共有すべき4つの理由

2021年09月15日

新型コロナウイルスの感染拡大が続く一方、ワクチン接種を完了した人が人口の3%にも満たないアフリカ(※)。もしアフリカ諸国が、ワクチンを輸入に頼らず自力で製造できるようになったら、どれほど大きな進展が望めるでしょうか。
※​アフリカ疾病対策センターのデータ(2021月9月14日現在)

コロナ禍でのワクチン開発競争は、画期的な新技術であるmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンの導入をもたらしました。mRNAを用いたコロナワクチンは、命を救い、感染拡大を抑える有効な手段の一つとなっていますが、あまりに多くの人びとが接種を待たされているのが現状です。

ワクチンの生産量が足りていない背景には、一部の製薬会社が生産者や供給先を決める権利を独占していることも関係しています。しかもこれらのワクチンは、各国政府から巨額の公的資金を受けて研究開発が行われてきたのです。

世界保健機関(WHO)は、アフリカでの現地生産を実現するため、mRNA ワクチンの技術移転を担うハブ(拠点)を南アフリカ共和国に設置しました。ただ、承認済みのmRNAワクチンを開発した米ファイザーと独ビオンテック、そして米モデルナは、技術やノウハウの提供を申し出ていません。WHOのハブにはすでに複数のメーカーが参加し、生産を始める準備ができているにもかかわらず、です。

3社はこのハブにワクチン技術をすぐに共有すべきです。その理由は4つあります。

1. アフリカ諸国のワクチン輸入依存を改善できる

アフリカの少なくとも1カ国にある既存の設備1カ所でmRNAワクチン製造を確立できれば、10カ月以内に年間最大1億回分を生産する能力が打ち立てられると予想されます。

現在アフリカ諸国は、新型コロナやその他のワクチンについて、ほぼ全面的に輸入と寄付に依存しています。このため大半の国でワクチンの普及は限定され、遅れが生じていて、地域間の格差につながっています。

ファイザーとビオンテック、そしてモデルナの技術が、WHOのハブを介して移転できれば、エジプト、チュニジア、モロッコ、南アフリカといったアフリカ大陸の国々で、メーカーが独自にワクチンを生産し、世界全体の供給量も増やすことができます。さらにアフリカのこれらのメーカーは、ワクチンの供給先について発言権を持てるようになるのです。

2. mRNAワクチンは、従来のワクチンよりも速く、安く製造できる

従来のワクチンでは製造施設を整備するまでに何年も要しますが、mRNA技術はワクチン専門ではない既存の施設にも迅速に適用できるため、製造能力をゼロから立ち上げる必要がありません。例えば注射薬をつくるようなメーカーなら、それほどの困難もなくmRNAワクチンを製造できますし、ビオンテックは抗がん薬の工場をわずか半年でmRNAワクチンの工場に変え、規制当局の承認も得ました。

MSFは、アフリカ諸国でmRNAワクチンを製造する能力をもつメーカー7社をすでに特定しています。ファイザーとビオンテック、モデルナが技術と知識を共有すれば、アフリカでのmRNAワクチン量産が10カ月後には可能となるでしょう。

3. mRNAワクチンは感染予防の効果が高く、変異株への対応も容易

mRNAワクチンは現在、新型コロナの感染予防に最も効果的なワクチンであり、新たな変異株への応用もしやすいことがわかっています。モデルナが変異株に有効なmRNAワクチンを開発し、第Ⅰ相臨床試験で使用できる段階までに要した日数は、たった30日程度。一方で、従来型のワクチンを変異株に対応させるには、最短でも5カ月かかります。

さらにこの技術は、他の感染症に応用できる可能性も持っています。一つの生産設備で、さまざまなワクチンや治療薬に製造を切り替えて稼働する、といったことも実現するかもしれません。従って、mRNAワクチンの製造能力を高めることは、コロナワクチンを早急に供給するだけでなく、より長期的で広範囲の効果を地域にもたらすと期待されるのです。

4. 先進国からの提供や、製品化の委託だけでは足りない

途上国にワクチンを配分する現在の手段では、全く足りません。WHOが主導する枠組み「COVAX(コバックス)」 を通じて、高所得国が確保しすぎたワクチンを低・中所得国へ早急に再分配することが、命を救い、ワクチンを無駄にすることも防ぐ、最短の方法ではあります。しかしそれは短期的な解決策です。

今年7月、ファイザーとビオンテックは、南アフリカのバイオバック社に「充てんと製品化」を委託する提携を行いました。これは第一歩ですが、ワクチンをめぐるアフリカの独立性を確保するうえでは不十分です。委託では、提携メーカーが開発企業に依存せざるを得ないからです。必要な量まで生産を拡大するには、より多くのメーカーがワクチン製造の初期段階から梱包に至るまで、全ての要素とノウハウを利用できることが求められます。

パンデミック(世界的大流行)が宣言された当初、指導者たちはワクチンを「世界の公共財」とすることを呼びかけ、国際社会に連帯を求めました。

1年半が経過したいま、現実はそこから進展していません。一部の先進国では、必要量をはるかに上回るワクチンを確保する一方で、低・中所得国の弱い立場の人びとはいまだに1回目の接種を待っています。ファイザーとビオンテック、モデルナは、公的資金が注がれた技術で利益を上げるのではなく、できるだけ多くのメーカーがmRNAワクチンを製造できる体制づくりに貢献すべきです。

私たちにはワクチンの不公平さを解消し、新型コロナウイルス感染症からさらに何億もの人びとを守る方法があります。ワクチン生産が拡大しない理由はたった一つ──開発企業がそれを妨げているからです。

命を救うために、ファイザー、ビオンテック、モデルナは、いますぐワクチン技術を共有してください。

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