医療・研究関係の方へのお知らせ
第54回世界肺の健康会議:アクセスに関する初の本会議で国境なき医師団が発表
2024年11月25日インドネシアのバリ島で開催された結核に関する世界的な会議「第53回世界肺の健康会議」(結核ユニオン会議)で、11月13日、国境なき医師団(MSF)のアクセス・キャンペーンの結核アドボカシー薬剤師であるクリストフ・ペランが本会議に招かれ、医薬品と診断へのアクセスについて発表した。ユニオン本会議で医療ツールへのアクセスに焦点があてられたのは初めてのことである。
MSFアクセス・キャンペーンにおける結核アドボカシー薬剤師クリストフ・ペランによる発表
結核ユニオンの本会議で、医療ツールへのアクセスに関する初めてのセッションが開かれたことは、結核コミュニティ全体にとって画期的な出来事です。結核に関する科学とケアにおいて重要な位置を占めるこの会議で、人びとが結核検査や結核治療薬にアクセスするための絶え間ない苦難が認知されました。
これは、この致命的な病気と闘う科学者や指導者たちが、新しい科学や研究から明らかになった命を守るツールを、最も必要な人びとが最終的に利用できるようにするために、権限を与えられた地域社会や市民社会が重要な役割を果たすことをようやく認識した証です。
MSFは25年にわたり、患者とコミュニティのために医薬品へのアクセスを訴えてきました。医療資源が乏しい地域でまん延するHIVなどの疾病に用いる薬の価格の高さに私たちが最初に警鐘を鳴らしたのは、1999年の世界貿易機関(WTO)シアトル会議でした。私たちは、命を救える薬が存在するのに、高価で手が届かないことが理由で患者たちが亡くなっていくのを黙って見ているわけにはいかなかったのです。
残念ながら、結核もそうであるように、高価格や独占を拡大する不当な特許のために人びとが治療を受けられないという歴史が繰り返されるのを、私たちは目撃し続けています。
TBチャンピオン(結核を克服した患者)たちや結核団体、市民社会は、より新しく安全な結核治療薬を10年以上にわたって必要な人びとの手から遠ざけてきた特許による独占と高価格に抵抗する上で、極めて重要な役割を果たしてきました。これらの団体による粘り強い活動により、薬剤耐性結核の一連の治療コースの価格は劇的に下がり、以前は1人あたり6000米ドルであったものが、現在では約400米ドル*にまで下がっています。
結核検査の要であるGeneXpertのカートリッジの価格も、結核コミュニティの長期にわたるアドボカシー・キャンペーンの結果、ついに20%下がりました。しかし、超薬剤耐性結核の検査やデラマニドなどの重要な治療薬の価格は依然として法外に高く、結核コミュニティは引き続き価格引き下げを粘り強く訴えています。
将来の医療ツールについては、国やドナーが国際保健関連の諸機関の支援を受けながら、研究や開発のために提供される公的資金にアクセス要件を付けるようになることを望んでいます。研究開発資金にアクセス確保のための紐付けがなされてはじめて、その成果物である検査や治療が、どこに住んでいようと、それを必要とする人びとに手ごろな価格で入手可能になることが保証されるのです。
アクセスは、世界で最も致命的な感染症と闘うための科学的なブレークスルーや政治的公約、そして資金と同じくらい重要です。命を救う治療を必要とする人びとがそれを入手できなければ、何の意味があるでしょうか? 簡単に言えば、命を守る医療ツールは決して贅沢品であってはならないのです。
*WHOが推奨する、経口薬のみで成る6ヵ月間の薬剤耐性結核治療レジメンBPaLM(ベダキリン、プレトマニド、リネゾリド、モキシフロキサシンを含む)の薬価は、現在、1コース当たり416ドルである。