ジャパン・イノベーション・ユニットのブログ

リモート・オンボーディング(矛盾しているように聞こえるけれど)

2020年09月24日

新型コロナウイルスの影響により、リモートワークは新しい日常になっています。もちろん新しくチームに加わるスタッフも同じで、実際に“職場”に行くことなく、新しい職場環境に慣れ、チームの一員とならなければなりません。「リモートでのオンボーディング」と言うと、一見矛盾しているように聞こえますが、現在のパンデミックの文脈においては、意味を持たせなければならない言葉の一つです。私たちジャパン・イノベーション・ユニットでは、リモートワークとオンボーディングの両方の経験があります。このブログでは、リモート・オンボーディングの課題を克服するために、それぞれから得られたいくつかの関連する事柄を洞察してみたいと思います。
 
優れたオンボーディング・プロセスには、通常4つの要素が含まれています:オリエンテーション・ブリーフィング、オン・ザ・ジョブ・トレーニング、上司や人事部との定期的な1on1ミーティング、そしてチームの一員となるためのアクティビティです。オリエンテーションと1on1ミーティングは、主に対面での会話で成り立ってきました。これらは、表情や雰囲気といった非言語的なコミュニケーションをカバーするために少し調整を加える必要はあるものの、ズームやスカイプ、またはその他のソフトウェアを使用して大部分が再現可能です。トレーニングも、共有ホワイトボードを備えたソフトウェアや、リモートワークで説明したファシリテーション技術の多くを使用してオンラインで実施することがより簡単になってきています。
 
しかし、新しいメンバーをチームの一員とするためのアクティビティをリモートで行うのは、はるかに困難です。他の3つのオンボーディング要素とは異なり、チームへの統合は非公式なコミュニケーションに多く依存しています。このような非公式なコミュニケーションを経験しなければ、新メンバーが新しい部署のスタッフ同士や他部署のスタッフとの関係、外部のパートナーとの関係を包括的に理解することは非常に困難です。従来、このような既存する関係性へのオンボーディングは所謂『給湯室会議』やオフィス内での休憩時間、そして就業時間後の一杯など、何気ない形で行われていました。このような場は、新メンバーにとっては「新しい同僚との出会いの場」でもあります。これは、新メンバーが新しいチームの働き方や歴史、社会的ダイナミクスを理解し、このような業務から一歩外れた時間を既存メンバーと共有するだけで“メンバーの一員”になるチャンスとなります。重要なのは、既存のチームメンバーがオンボーディングのこの要素には不可欠であり、言い換えると、新しいメンバーをうまくチームの一員として溶け込ませるためには既存メンバーがその場にいる必要がある、ということです。
 
この何気ない空間を再現することが、おそらくリモート・オンボーディングの最大の課題です。 どのような方法がベストなのかを分析するにはまだ時間がかかりますが、リモートで新しいスタッフを適切にチームの一員とするためには、いろいろな方法を試してみる必要があることは間違いありません。日本では、「呑み会」におけるチームメンバー同士の非公式な交流は、ビジネスを全体的に機能させるために(よくも悪くも)重要であることはよく知られています。COVID-19が世界的に流行している現状では直接会っての交流が困難になったため、呑み会はすぐにオンラインに移行し、「オンライン呑み会」、つまり「オン(ライン)呑み(会)」になりました。人々はパソコンの前に座り、カメラを通して、ビールを片手におしゃべりをして、交流を重ねるようになりました。
 
もちろん、オン呑みよりもシンプルな方法もあります。例えば、オンライン・ミーティングの前にカジュアルなおしゃべりの時間を設定して、新メンバーがチームメンバー間の関係性を観察する機会とすることなどが考えられるでしょう。しかし、どのような形式であっても、既存のチームメンバーがこのオンボーディングの要素に関わっていることには変わりません。オンラインでもオフラインでも、チームを構成するメンバーがこのような非公式な交流に加わっている必要があります。
 
新しいスタッフのオンボーディングは、コロナ前であっても一筋縄ではいきませんでした。しかし、「withコロナ」の時代が始まる今こそ、組織にとってオンボーディング・プロセスを再設計するチャンスです。成功するためには、「リモート・オンボーディング」がもはや造語ではないことを確認しなければなりません。しかし、そのためにはチーム全体のコミットメントが必要です。もしそれが実現できれば、物理的な距離が社会的な距離感と同じである必要はなくなるのです。

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