イベント報告

【イベント報告】ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2022連携企画

2022年06月18日
🄫 MSF
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国境なき医師団(MSF)は5月25日、アジア最大級の国際短編映画祭 ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF&ASIA)連携オンライントークイベントを開催し、生きるために移動を強いられる人びとをテーマに、 SSFF&ASIA代表で俳優の別所哲也さん とMSFプロジェクト・コーディネーターの末藤千翔がトークをしました。

シリアやロヒンギャ、フィリピンのマラウィの人びとなど、難民や国内避難民としての生活を余儀なくされている人たちの実際の生活の様子や、人びとの声、MSFの活動の様子を、映像や写真を通じてご紹介しました。

別所さんは、「難民の人びとの置かれた状況、人道危機の現実を日本でもより多くの人にわかりやすく伝える手段として映像がある。またこのように話し、つながっていくことも、国際貢献の第一歩として続けていきたい」と話しました。

末藤は、「この2年間世界はコロナという共通の課題をともに生き抜いてきた。医療や日常生活に必要なサービスが受けられることが当たり前でない状況を経験した。世界には恒常的にこのような状況に置かれている人びとが1億人以上いる。寄付や参加以外にも、映像を見て事実を知り、自分ごと化する、まわりに伝える、活動する人をサポートすることも大きな国際貢献だと思う」と呼びかけました。

当日および事後視聴合わせ視聴回数は6600回を超え、多くの方に視聴いただいています。
映画祭は6月20日まで都内複数会場にて開催、オンライン会場は6月30日まで開催中です。世界の今を映すショートフィルムを無料でご覧いただけます。

トークイベントの録画は以下より視聴できます。ぜひご覧ください。(再生時間:約60分)

イベントでは参加者の皆さまから登壇者の末藤宛にたくさんのご質問をいただきました。当日回答しきれなかったご質問について、いくつかお答えします。

Qなぜ難民問題に関心を持ったのですか。

 (MSFプロジェクト・コーディネーター 末藤)
難民、強制移動の問題に関しては大学時代に、難民支援に取り組む団体でインターンシップを経験し日本にも難民の人が多くいること、しかし国内での認知や保護が広がっていないことを知ったことがきっかけです。学生時代難民のバックグラウンドを持った友達がいて、難民問題が「自分ごと」となったことも影響していると思います。
特にアメリカやヨーロッパにいると、難民としてベトナム、旧ユーゴスラビア、中東諸国から来た人は本当に多くいて、一見自分やその他の人と全く変わらない生活を送っている一方、難民として保護を受ける前には想像を絶する経験をしていることを知り、難民を生む社会でおきていることについて知りたいと思ったと同時に、自分には何ができるだろうか、と考えるようになりました。

この問題をもっと知りたい、考えを深めたいと思い、多くのドキュメンタリー映画や写真展に足を運んだり、休暇を利用してバックパック旅をし見聞を広げ理解を深めました。難民や強制移動の問題のほか、格差や貧困、紛争、平和構築など広範にわたって興味を持っています。



Q世界の人道危機の現場で活動して一番強く感じたことは何か教えてください。

(MSFプロジェクト・コーディネーター 末藤)
私たちは皆「人」としてつながっているというということです。
たとえ言葉が通じなくても何ヶ月も一緒に、同じ目標に向かっていると、離任時に活動地を去る別れの時はいつも悲しいし、美味しいご飯を一緒に食べれば笑顔が溢れるものです。例え見た目、国籍、言語、教育、信仰など異なっても、誰しもが自分や家族の健康を願っていて、より良い社会をみんなで創造していきたいと努力していると感じます。

時に報道では私たちの違いが強調されることがありますが、「人」としての共通点の方が本当は圧倒的に多いのです。それを理解するためにも、人間や社会が作り上げた既成概念に囚われず、自らの経験を通して考えや意見を形成することが大事だと思います。

Q生きるために移動を余儀なくされている人びとに関わる自分をどう位置付けていますか。相手のために関わりたいという意思なのか、それとも自分の何かのためか、仕事をする上で関われることだから、など想いを伺いたいです。

(MSFプロジェクト・コーディネーター 末藤)
私はたまたま日本に生まれ、家族がいて、家があって、教育を受けることができ、パスポート一つで100以上の国や地域へ安全に渡航が許される。それは人道危機に直面し、過酷な状況を生きる多くの人にとっては夢のように感じることではないでしょうか。一方で生まれる場所や属性(国籍、民族、信仰など)、社会地位ゆえに紛争や暴力に晒されることが当たり前であってはいけないと強く感じます。
自らが得ることが許された知識、経験、能力をもって、少しでもそのような不条理を変える力となれればと思っています。

このような仕事は「人のために何かをする」仕事であると思われがちですが、それ以上に多くを得て、人として豊かになれる仕事です。自分がやりたいことを仕事にできているという意味でも「仕事をしている」という感覚より「自分がやりたいこと、やるべきと感じることをしているだけ」という感覚です。

Q圧倒的にやるべきことが多すぎ、心身が疲労困憊した時どうやって使命感とモチベーションを維持しますか?

(MSFプロジェクト・コーディネーター 末藤)
現場では出来ることもいっぱいありますが、他方できないこともたくさんあります。勝手な先入観を持ったり、むやみな期待をしすぎないことを大切にしています。どこでもそこの当たり前があり、その範囲内で出来ることを探し、最善を尽くすことが大切だと思います。

課題が多い時、やることが多い時、一生懸命になっている時ほど、「できないこと」や「うまくいかないこと」に目が行ってしまいがちですが、実はできていることもたくさんあると思います。そんな時こそ、小さな前進の積み重ねが実を結ぶものだと信じて、できていることを自ら、そしてチームとして評価して引き続き前を向いてやっていく気持ちと視点が大切だと思います。
よく言われる例ですが、「コップが半分空」と捉えるのか「コップが半分満たされている」と捉えるのか。物事は捉えようでもあると思います。

短くてもいいから自分の時間を作ったり、ストレス解消を日常的に行ったり、信頼できる人に心の中で引っ掛かっていることを共有したり、MSFには心理ケアのサポートもあるので場合によってはそれを利用したり、自分に合った方法で心身の健康管理には努めています。


登壇者プロフィール

別所 哲也 氏(ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 代表/俳優)

1990年、日米合作映画『クライシス2050』でハリウッドデビュー。米国映画俳優組合(SAG)メンバーとなる。
その後、映画・TV・舞台・ラジオ等で幅広く活躍し、第1回岩谷時子賞奨励賞、第63回横浜文化賞を受賞。
1999年より、日本発の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル」を主宰し、文化庁文化発信部門長官表彰を受賞。
観光庁「VISIT JAPAN 大使」、外務省「ジャパン・ハウス」有識者諮問会議メンバーに就任。
内閣府「世界で活躍し『日本』を発信する日本人」の一人に選出。

末藤 千翔(国境なき医師団 プロジェクト・コーディネーター)

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🄫 MSF
1988年東京都生まれ。2011年法政大学卒業後、日本の国際協力NGOに就職。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、パリ政治学院修士課程を経て、
2018年、人事・財務を担うアドミニストレーターとして国境なき医師団に参加。
2020年よりプロジェクト・コーディネーターに。
バングラデシュ、シリア、フィリピン、イラクで活動。

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