政情不安が続くベネズエラ 防げる病気がまん延の危機

2019年04月05日掲載

首都カラカスの様子(2016年撮影)© Marta Soszynska/MSF首都カラカスの様子(2016年撮影)© Marta Soszynska/MSF

政情不安が続く南米ベネズエラ。長年の経済政策の失敗や汚職などが横行し、経済的・政治的危機に陥っている。現在も、現大統領と野党勢力とで対立が続く。こうした政争が新たな局面に入ったことを受け、ベネズエラに注目が集まっている。今回の政争は長年の経済・政治危機に加わる形で起きたため、人びとの日常生活は大きな影響を受けている。国境なき医師団(MSF)は、2015年以来、ベネズエラで医療援助活動をしている。MSFのオペレーション・マネジャー、クリステル・エールデケンスに、現地での活動について聞いた。 

MSFの活動について

マラリア対策の一環で、蚊帳を配布するMSFスタッフ © Diana Puyo/MSFマラリア対策の一環で、蚊帳を配布するMSFスタッフ © Diana Puyo/MSF

現在、ベネズエラには4つの医療プログラムがあります。首都カラカスでは、地元の団体と公的機関とが連携して、性暴力被害者の医療と心のケアを担っています。カラカスは、世界で最も暴力的な都市と言われています。性暴力は、医療面の緊急事態であると考えているため、医療と心のケアを組み合わせた総合的なアプローチを推進しています。

近年はボリバル州シフォンテス市で、マラリアプログラムも支援しています。フォンテス市は金山が多く、国内全域から多くの人が集まってくるため、マラリアが急速に広まりました。背景には、住民の頻繁な移動、貧弱な住環境、マラリア対策に必要な資金や人材不足--などがあります。MSFは2018年、22万人以上の人びとにマラリア検査をした他、マラリア患者を約13万人治療しました。新たな感染を防ぐために、2万張りの蚊帳も配布し、3900世帯で薬剤を散布しました。

MSFは2019年2月以来、スクレ州カルパノに拠点を置いて活動しています。マラリア研究所と連携し、全国的なマラリア対策を支えています。また、現地の連携先団体を通じて、リプロダクティブ・ヘルス を中心とした一次医療も担っています。初期段階にあるにもかかわらず、深刻な医薬品不足に苦しんでいた人びとに応えています。MSFはマラカイボ市でも2016年~2018年2月、同様のサポートをしました。
 

MSFの心理ケアのプログラムを受ける子ども(2016年撮影)© Marta Soszynska/MSFMSFの心理ケアのプログラムを受ける子ども(2016年撮影)© Marta Soszynska/MSF

MSFは引き続き、各地で暴動が起きる可能性や、経済・社会・政治危機に対応できるよう備えています。事態が急激に悪化した場合に備えて、既に医療物資を国内各地の病院に寄贈しました。状況によってはさらに続けるかもしれません。一度に多数の負傷者にも対応できるよう、現地の医療スタッフも訓練しました。また、ボランティアで構成された救助隊などに、心理的な応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド:PFA)も提供しました。2018年には、ボリバル州とファルコン州で、洪水被災者に対する医療ケアと心のケアも提供しました。
 

国内の医療状況は

マラリア対策のために蚊帳を配布する間に、マラリアに感染しているか簡易式の検査をするMSFスタッフ © Diana Puyo/MSFマラリア対策のために蚊帳を配布する間に、マラリアに感染しているか簡易式の検査をするMSFスタッフ © Diana Puyo/MSF

ベネズエラは経済・政治危機の最中にあり、全ての人びとが影響を受けています。数ヵ所にしかチームがいないので、とても活動しにくいです。そのため、国内の医療ニーズについて、全てをお話しするのが難しい状況です。また2015年以降、公表された医療データも限られているため、 全容を把握できるような分析結果も出しづらくなっています。

活動地では、献身的かつ技能のある医療従事者が地域に尽くしています。全てが限られていて、医薬品の供給は中断されたり、不定期になったりしています。医療機器やインフラも全く無いに近い状態です。国内で起きているハイパーインフレと、医療体制の財源不足のため、質の高い医療は大変難しくなっています。ベネズエラから出て行った医療従事者もいます。MSFのチームメンバーも例外ではありません。そのため、以前は対策ができていたマラリアや、ジフテリア、はしかなど、予防できる症例が増えています。1960年代には、ベネズエラはマラリア撲滅のパイオニアで、現在もその知識と専門機関が存在しています。でも、マラリアが大流行している地域は、医療体制が重圧にさらされている場所でもあります。マラリア対策プログラムも影響を受けています。

一方、MSFが2018年2月まで活動したマラカイボ市では、診療不足のため産科救急と手術に遅れが出ていました。国境を越えてブラジルかコロンビアに入ったベネズエラ人は、MSFのところで医療を受けているほか、食糧と質の高い医療が不足したため、出国を決めたと話しています。

今後について

MSFは、今後もニーズに応じてベネズエラの人びとのための医療ケアを担っていきます。これまでの活動をより充実させ、活動の規模を拡大していく方法も検討していきます。必要であれば、国を離れてブラジルやコロンビアなどの中南米地域各国にいるベネズエラ人にも、引き続き医療援助を行っていく予定です。

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