ウクライナ:負傷者の増加に備え、外科チームが首都キエフの病院を技術支援 

2022年03月18日
キエフの病院で外傷手術に当たるMSFの外科医 © MSF
キエフの病院で外傷手術に当たるMSFの外科医 © MSF

国境なき医師団(MSF)の外科チームは、3月14日から15日にかけて、ウクライナの首都キエフ(キーウ)中心部で最大規模の病院の一つであるオーホマッディート小児病院(750床)で、多数の負傷者が一斉に運ばれる事態に備えた研修を行った。

ウクライナでMSF緊急対応コーディネーターを務めるアニャ・ウォルツはこう語る。
 
「戦傷外科の専門性を持つMSFの外科医が難度の高い手術を行ったところ、病院の外科医らがすぐに、『ぜひ技術を教えてほしい』と集まってきました。

この病院の外科医は大半がそれぞれの分野の専門医ですが、外傷外科の専門医はいません。そのため、銃撃や爆発片のけがの治療には欠かせない、感染を起こした傷や壊死した組織の切除(デブリドマン)にも本格的な経験はないのです。傷への対応が遅れたり、適切でなかったりすると、あっという間に感染症が起きてしまう恐れがあります」

外出禁止令が敷かれたキエフでは空襲警報も頻繁に鳴り響き、多くの人がシェルターに避難し出勤が難しいため、通常2000人の病院スタッフは約200人の中核チームのみに縮小。従来の患者の大部分を退院または転院させ、負傷者の治療に備えた態勢づくりを進めている。

研修実施の時点では人員不足に陥っていないが、病院スタッフは負傷者の増加に備え、戦闘で傷ついた人の治療方法を学ぼうと意欲的だった。

技術支援の主な内容

一度に多数の負傷者が運び込まれた場合の対応策

病院スタッフはこのような状況に備え、トリアージ(重症度・緊急度などによる治療の優先順位づけ)と態勢づくりの計画を立てたいと希望。紛争地経験のあるMSFの救急医が、多数の負傷者対応の実践例を、200人の在勤スタッフのうち40人に座学で説明した。また、多数の負傷者受入時における患者の動線の変更についても助言を行った。

外傷外科の技術

病院の外科医はそれぞれの分野に特化した専門医が多いため、紛争地経験のあるMSFの血管外科医が、銃弾や爆発片の摘出、内出血の予防、効果的な傷の清浄化など、負傷者の救命と治療に必要な技術を手術室で指導した。

物資の補給と運用

多数の負傷者に長期的に対応できるよう、必要な物資をどう補給し運用するかについて、病院から助言を求められた。MSFは既存の備蓄量を確認し、戦傷外科の必需品の継続的な調達についての助言を行った。

「今回の短時間の訪問をさらに意味のあるものにするため、可能であればまた訪問したいです」とウォルツは話す。

「大勢の負傷者に対応するための研修は完全には終わっていません。物資が無事に調達されるかも引き続き注意して見ていきます。病院からもそのような要望を受けました。臨床や手術室で、外科医向けの実地の研修と助言をもっと行っていきたいと考えています」

ウクライナ西部のリビウからキエフに向かうアニャ・ウォルツと外科チーム © Peter Braeunig/MSF
ウクライナ西部のリビウからキエフに向かうアニャ・ウォルツと外科チーム © Peter Braeunig/MSF

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