【動画】爆風の中での援助──国境なき医師団責任者が語るウクライナでの3年

2025年02月28日
動画:1分38秒

ロシアとウクライナの紛争が激化して3年が経った。激しい戦闘で多くの病院が破壊され、前線の位置は刻々と変わった。国境なき医師団(MSF)はこの3年、ウクライナでどう活動してきたのか。

MSFのウクライナ活動責任者トーマス・マルケーズは、ロシアがウクライナへの全面攻撃を始めた2022年2月24日のことを、こう振り返る。

アイルランドの自宅でニュースを見ていると、すぐにMSFの緊急対策室から電話があり、飛行機に飛び乗りました。翌日、ポーランドに到着してからは、移動診療を行うため、車を2台確保しました。そして準備を整え、3月上旬には、ウクライナに入ることができたのです。

MSFウクライナ活動責任者 トーマス・マルケーズ

ロシア軍による侵攻開始直後、マルケーズらMSFのスタッフはポーランドから陸路でウクライナに入り、どのような医療援助ができるか状況を調査した。

攻撃を受けた病院の機能を復旧させ医療活動を続けられるよう、自家発電機を設置したり、水など必要物資の供給を始めたりした。

ロシア軍が急速に迫る中、東部ドネツク州スラビャンスクの病院のすぐ近くにも砲弾が撃ち込まれ、スタッフらが爆風を感じることもあった。

変化する医療援助のかたち

ウクライナではこの3年間で2000カ所以上の医療施設が被害を受け、400カ所以上が完全に破壊された。ドローンやミサイルによる攻撃は、日常になってしまった。前線から1000キロ近く離れた都市が攻撃されることもある。

こうした状況の変化に合わせ、 MSFの医療援助のかたちも変わり続けている。
 
MSFは一時、車内を改造して前線に近い地域の患者を比較的安全な地域に移す「医療列車」を、ウクライナ国鉄と共同で運行した。
 
現在では、各地の救急車網を充実させ、前線に近く病院での対応が限界状態となっている東部の患者を、中部や西部に搬送し、医療を受けてもらうようにしている。 MSFの救急車は、過去3年間に2万5000人超の患者を搬送した。 

MSFには今、21台の救急車がある。また、東部の前線地帯約1200キロのほぼ全域を各プロジェクトがカバーしている。
 
「優れた組織力と計画性が求められる、大規模で困難な活動です。医療施設への攻撃が続いているため、病院チームと保健省は、引き続き大きな課題に直面しながら活動を続けなければなりません」とマルケーズは語る。

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