ウクライナ難民を迎えるポーランド 国境で見た援助の状況 支援継続が大きな課題に

2022年03月16日
国境を越え、ポーランドに入国したウクライナの男性 Ⓒ Paweł Banaszczyk/MSF
国境を越え、ポーランドに入国したウクライナの男性 Ⓒ Paweł Banaszczyk/MSF

ウクライナで戦争が始まって以来、隣国ポーランドは国境を開放し、避難する人びとを迎え入れている。ポーランドとウクライナの国境で、緊急対応チームの一員として活動した国境なき医師団(MSF)のフェリペ・バン・ブラークが現地の状況を報告する。

「優しさがあふれていた」

戦争の醜さと、危機的な状況に際して人びとの内面から湧き上がる美しさ。いま、ポーランドではその両方を見ることができます。ポーランドには現在、およそ183万人以上のウクライナ難民がおり、その数は毎日増え続けています。

ポーランド当局やポーランドの人びとによる支援には目を見張るばかりです。当初は全体的な指揮などはなく、それぞれができる範囲で行動していました。それでも、これほど大規模な支援活動が自発的に行われる様子は見たことがありません。世界のどの地域から来る難民にも、同じような優しさを持って対応することが必要です。

先週はある国境地点で、ウクライナから避難した数百人の人びとが国境を越えるため待っていました。ポーランド側では全国から集まったボランティアが、彼らのスーツケースを運ぶのを手伝い、温かいスープやSIMカード、衛生用品、防寒着などを配っています。

キエフ(ウクライナ名:キーウ)から来たというパキスタン人の男性に話を聞くと、「地獄に踏み込んで死んでしまうかと思いましたが、ポーランドでは着いた瞬間から優しさがあふれていました」と話してくれました。

国境の入り口には、衣類、毛布、おもちゃ、ベビーミルク、ペットフードなどの寄付品が積まれている Ⓒ Paweł Banaszczyk/MSF
国境の入り口には、衣類、毛布、おもちゃ、ベビーミルク、ペットフードなどの寄付品が積まれている Ⓒ Paweł Banaszczyk/MSF

必要な支援を継続するために

この状況が今後どうなっていくか──。それを考えなければなりません。ボランティアとして活動している多くの人びとは、いずれ各々の仕事に戻る必要があるでしょう。また、戦争が始まってから2週間経った現在も、膨大な数の人びとが移動しているため、この支援態勢がいつまで保てるかは分かりません。これだけ多くの人びとをケアし、衣食住を提供するのは、どこの国でも大変です。

ポーランドは、ウクライナ国民に正規の在留資格を与え、仕事、教育、行政などのサービスを利用できる法律を承認しました。それでも、ポーランドが直面する課題は計り知れません。欧州地域の最富裕諸国をはじめ、その他の国も協力することが望まれます。

医療面でも課題があります。そのうちの一つが、慢性疾患のある患者さんのケアをどのように続けていくか、ということ。ウクライナから避難してきた人びとの中には、高血圧、糖尿病、てんかん、精神障害、結核、その他健康に問題のある方がいます。そのため、普段から服用している薬が必要です。定期的に薬を服用しなければ、病状は悪化し入院が必要になるかもしれません。

ポーランドの医療関係者に話を聞きましたが、現地の医療体制がこのような医療ニーズの急増に対応できるかは分からないそうです。医薬品を人びとの元に届け、ケアが滞らないよう徹底していくとともに、診療体制を優先して拡充することが重要です。

難民の国籍を問わない対応を

また、留学生や就労者など、ウクライナに居住・就労していた外国籍の人びとも同じ待遇を受けられるようにすることも大切です。

たとえば先週、ある駅でウクライナからやって来たインド人の若者たちが、ドイツ行きの列車に乗ろうとしているのを見かけました。ポーランドでは現在、ウクライナ人の交通費は無料ですが、この若者たちは運賃を求められました。

特定の人びとが支援の手から取りこぼされてしまう事態は避けなければいけません。また、医療へのアクセスに関する情報は、国籍に関係なく、ウクライナから避難してきた人びと全員に行き渡るように徹底していく必要があります。

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