緊迫するウクライナ MSFは活動を一時休止も隣国からの緊急対応を準備
2022年02月26日
国境なき医師団(MSF)は、紛争がウクライナの人びとや地域コミュニティーに及ぼす影響について深く憂慮する。すでに何万人もの市民がおびえながら避難する姿を確認している。MSFは引き続きウクライナにとどまり、紛争の状況に応じてどのような援助を提供できるかを判断する。
MSFはこれまで、ウクライナ東部セベロドネツクでのHIVケア、北西部ジトーミルでの結核ケアのほか、東部ドネツクでの医療アクセス改善など紛争被害地で暮らす人びとに医療を提供し続けてきたが、この度の情勢急変により、医療援助を一時休止するという苦渋の決断を迫られた。現在、これらのプロジェクトはほぼ全てを休止している。
7年以上にわたって紛争下で生活をしてきた現地の人びとの医療ニーズは高く、今回の紛争が長引けば、高齢者や慢性疾患を抱える患者への影響が心配される。国内での緊張が高まる直前、MSFはドネツク州やルハンスク州の複数の病院と連絡を取り合い、救急医療や外科手術に備えたトレーニングを実施。マリウポリの病院には、一度に多くの負傷者が出る事態に対応できるよう救急外傷キットを提供した。敵対行為が続くなかで、人びとが医療と医薬品へアクセスできることが非常に重要だ。
状況が刻一刻と変化するなか、MSFは今後の医療ニーズに対応できるよう、緊急援助の準備を進めている。隣国ベラルーシとロシアのMSFチームは必要に応じて人道援助を提供できるよう待機するとともに、他の近隣諸国にもチームを派遣し、ウクライナ国内への援助や、国外に避難する人びとへ医療・人道援助を提供できるよう準備する予定。また、必要な物資の輸送と供給を担うサプライセンターでは、医療物資を迅速に発送できるよう準備を進めている。MSFは引き続き、安全かつ公平な人道援助をどのように提供できるかを見極めていく。