緊迫するウクライナ MSFは活動を一時休止も隣国からの緊急対応を準備

2022年02月26日
紛争の境界線に近いドネツク州の村で廃屋に立つスタッフ。MSFはこの村で移動診療を行った =2019年2月撮影 © Nico Dauterive/MSF
紛争の境界線に近いドネツク州の村で廃屋に立つスタッフ。MSFはこの村で移動診療を行った =2019年2月撮影 © Nico Dauterive/MSF

国境なき医師団(MSF)は、紛争ウクライナの人びとや地域コミュニティーに及ぼす影響について深く憂慮する。すでに何万人もの市民がおびえながら避難する姿を確認している。MSFは引き続きウクライナにとどまり、紛争の状況に応じてどのような援助を提供できるかを判断する。

MSFはこれまで、ウクライナ東部セベロドネツクでのHIVケア、北西部ジトーミルでの結核ケアのほか、東部ドネツクでの医療アクセス改善など紛争被害地で暮らす人びとに医療を提供し続けてきたが、この度の情勢急変により、医療援助を一時休止するという苦渋の決断を迫られた。現在、これらのプロジェクトはほぼ全てを休止している。

7年以上にわたって紛争下で生活をしてきた現地の人びとの医療ニーズは高く、今回の紛争が長引けば、高齢者や慢性疾患を抱える患者への影響が心配される。国内での緊張が高まる直前、MSFはドネツク州やルハンスク州の複数の病院と連絡を取り合い、救急医療や外科手術に備えたトレーニングを実施。マリウポリの病院には、一度に多くの負傷者が出る事態に対応できるよう救急外傷キットを提供した。敵対行為が続くなかで、人びとが医療と医薬品へアクセスできることが非常に重要だ。

状況が刻一刻と変化するなか、MSFは今後の医療ニーズに対応できるよう、緊急援助の準備を進めている。隣国ベラルーシとロシアのMSFチームは必要に応じて人道援助を提供できるよう待機するとともに、他の近隣諸国にもチームを派遣し、ウクライナ国内への援助や、国外に避難する人びとへ医療・人道援助を提供できるよう準備する予定。また、必要な物資の輸送と供給を担うサプライセンターでは、医療物資を迅速に発送できるよう準備を進めている。MSFは引き続き、安全かつ公平な人道援助をどのように提供できるかを見極めていく。

命を救う活動を、どうぞご支援ください。

寄付をする

※国境なき医師団への寄付は税制優遇措置(寄付金控除)の対象となります。
 

ウクライナ国内のMSFの活動

ドネツク州では、紛争被害地で暮らす人びとが質の高い医療を受けられるよう活動。境界線に近い地域の診療所で医師や看護師へトレーニングを行うとともに、地域のボランティアによる患者の診療所への送迎や処方薬の受け取りなどを支援している。また、紛争被害地の人びとに重要な心のケアも支援。世界保健機関(WHO)のプログラムを通じて医療従事者にトレーニングを行ってきた。新型コロナウイルス感染症への対応も実施。
 
ルハンスク州では2020年1月以降、地域のHIVおよび結核プログラムへの支援を行っている。HIV感染症の進行した患者の診断と治療を改善するとともに、日和見感染症の治療に必要な薬や、ワクチン、その他の医薬品や検査機材を提供。2022年からは、避妊具を使用しない性行為をする若者や性産業に従事する人、薬物使用者など感染リスクの高い人びとを対象に、積極的な症例発見活動も展開している。
 
ジトーミル州では、2018年以降、保健省と地域の結核病院の協力のもと、薬剤耐性結核(DR-TB)プロジェクトを展開。2019年からは、患者中心のケアモデルの有効性を調査するため、治療期間の短縮、心理カウンセリングや社会的支援を組みあわせた治療を行っている。また、病院内に最新のバイオセーフティレベル(BSL)3の検査室を建設中だ。

この記事のタグ

関連記事

活動ニュースを選ぶ