「まさかこの場所で」 シリア北西部イドリブ、人口密集地で空爆
2020年11月03日現地時間10月26日午前、シリア北西部のイドリブ県北部で空爆があり、地元メディアによると同日中に少なくとも75人が死亡、135人が負傷した。国境なき医師団(MSF)は負傷者への緊急対応を行うとともに、地元の病院へ医療物資の提供を行った。
次々と運び込まれる負傷者
「空爆を受け、私たちは多数の負傷者の受入計画を発動しました。それから間もなく、手術の必要な重傷者の受け入れが始まったのです。手足の損傷がひどく、切断せざるを得なかった患者さんも2人いました」。シリア北西部のMSFプロジェクト・コーディネーター、クリスチャン・レンデルはそう話す。
MSFは共同運営する病院で11人の負傷者に対応したものの、うち1人は到着直後に死亡が確認された。
空爆から時間を経ても、イドリブの各病院には負傷者が次々に運び込まれた。MSFは共同運営先の病院での対応に加え、すでに90人の負傷者を受け入れていた医療施設に手術50回分の外科キットを提供した。
予期していなかった場所で
今回の空爆は、通常激しい衝突の見られないトルコ国境沿いの人口密集地で行われた。この地域は昨今の軍事攻勢を逃れたシリア市民の避難先となっていたため、攻撃はこの地域までは及ばないと考えられていたのだ。
「イドリブ県内でも特にこの地域の病院は、空爆の負傷者への対応に慣れていません。地元住民にも比較的安全だと見なされていた場所なのです」とレンデルは説明する。
「シリア北西部では、停戦協定が締結された3月以降も戦線付近で空爆が続いています。ただ、この2週間で3回も空爆による負傷者を病院に受け入れていて、その頻度が高まっていること、また、こうして県内でも安全と見なされている場所にまで空爆が及んでいることを憂慮しています。
新型コロナウイルスによる公衆衛生上の危機、そして紛争の状況のいずれに目を向けても、本当に切迫しています。これらさまざまな要素が絡み合い、100万人もの国内避難民を抱えるこの地域の苦境に拍車をかけているのです」