僕たちはかつて、子ども兵士だった…。故郷での生活…家族…もう1度取り戻したい。

2019年03月18日掲載

元子ども兵士だった女の子の髪を結う女性たち。© Alex McBride/MSF元子ども兵士だった女の子の髪を結う女性たち。© Alex McBride/MSF

2011年に独立した世界で最も新しい国、南スーダン。武力紛争が激しかった頃、未成年の子どもたちが、子ども兵士として大人に利用されていたという。銃を置き、復員した子どもたち。故郷に帰ってきましたが、なかなか故郷の暮らしには溶け込めない。今、国境なき医師団(MSF)の初の取り組みとなるサポートを受けて、日常を取り戻そうとしている。

MSFは2018年2月から、南スーダン南部にある西エクアトリア州で、他団体と協力して、子ども兵士だった子たちのサポートをしている。子どもたちは、国内全域で子ども兵士として利用されてきた。ユニセフによると、これまでにMSFが援助している地域では983人の子どもが、国内全体では3000人以上の子どもが復員したという。 

学校に行く途中で拉致された子どもたち

MSFの心理ケアマネジャー、シルビア・マルケス。© MSFMSFの心理ケアマネジャー、シルビア・マルケス。© MSF

心理ケア活動マネジャーを務めるシルビア・マルケスによると、患者となっている元子ども兵士たちは、みなが同じ地域の出身。年齢は10~19歳で、多くが15~17歳。その3分の1は、女の子だ。多くは、学校か畑仕事に行く途中で拉致された。

マルケスは「少数ですが、自分の意志で武装勢力に加わったという子もいます。でも当時は未成年だったため、武装勢力に関わった後にどうなるのかという所までは完全に理解していたとは言えません。また、家庭環境が悪かったため、武装勢力に加わったとする子もいました」と指摘する。 

「おかえり」 でも誰もが複雑な気持ち

かつて子ども兵士だった子が、家族で営む農園で草を刈っている。© Alex McBride/MSFかつて子ども兵士だった子が、家族で営む農園で草を刈っている。© Alex McBride/MSF

MSFは、性暴力も含む武力紛争に関連した病状に対応している。子どもたちが心理ケアによって、兵士として過ごした時期のさまざまな経験を乗り越えられるよう、サポートする。子どもたちの中には、武器を持ち歩いたり、暴力を目にしたりしたと訴える子どももいる。そうした子どもたちを対象に、MSFは2018年、1400件以上の診療と、900件以上の心のケアのための集会を開いた。

子どもたちが復員した後、元の家族のところに帰れた子どももいるが、家族や親戚を見つけるにも苦労している子どももいる。紛争によって、どこかに避難しているか、既に亡くなっているケースもあるからだ。そのため、お荷物扱いされている子どももいる。また紛争で大きな打撃を受けた地域では、復員を受け入れてもらえなかった子どももいた。それにより、「もう誰にも受け入れてもらえないのでは」と不安を抱えるケースもある。

だが、子どもたちの多くは学業を再開し、勉強しながら働いている。家族で営む農園で、弟らを手伝ったり、結婚したりした子どももいる。 

戦闘のフラッシュバック

自宅の前で取材に応じる元子ども兵士。© Alex McBride/MSF自宅の前で取材に応じる元子ども兵士。© Alex McBride/MSF

MSFの患者の35%は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を訴えている。うつ病になっている患者も多い。その他にも、頻繁にフラッシュバックがあるなど、さまざまな症状を抱えている。中には、戦闘のただ中に舞い戻ったように感じになる子ども、突然予期しない考えやイメージが浮んでつらくなる子ども、自殺願望を持ったり自傷行為を考えたりしている子どももいる。 

MSFによるサポート

ゲームをして遊ぶ元子ども兵士。© Alex McBride/MSFゲームをして遊ぶ元子ども兵士。© Alex McBride/MSF

心理ケアに関わるMSFのチームでは、100人が働いている。患者をサポートするため、リラクゼーションを使って、不安や恐怖といった症状に対応している。

また、患者自身が不安や恐怖などに対応できる力を高めることにも取り組む。グループワークや、心理教育を開き、さまざまなテーマについて話し合ってもらう。また、レクリエーション活動や、サッカー試合、お絵かきなども企画している。 

「また兵士に戻りたい」…高まる願望

でも、子どもたちにとって、故郷の暮らしに戻るまでの道は楽ではない。日々の生活が複雑になるにつれ、子どもたちの中には、武装勢力への復帰を考える子も出てくる。「戦闘をすれば、もっとお金やモノ、サービスが手に入るのでは」と考えるからだ。そうした場合、他団体のサービスを紹介するなどしている。子どもたちは、学校に入れたりすることで、地域の一員として活躍できていると実感できるようになる。 

誰もが持つ「回復する力」

「症状は治るのか」と、人びとに聞かれることがあるという。だが、子どもたちの心理ケアを続けるマルケスは、こう話す。

「子どもと若者は、たしかに多くの困難や、傷を負った経験をしました。でも、誰もが地域で活躍できることを楽しみにしています。このことに、私自身本当に心を動かされました。たいていの子どもたちは、結婚し、仕事を持ち、家族の所に戻って行きたいと願っています。治療の経過でも、実際にこうした目標を達成できた子どもたちがいます。家族らは、治療の効果を感じています。退院した3分の2の患者が、無事治療を終えています。人間には、大きな回復の力があります。過去の大変な事柄だけを見つめるのではなく、未来を見すえ、再び幸せを見つける力が備わっているのです」
 

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