スーダンで2023年4月15日、スーダン軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の間で始まった内戦は、2年を経た今も続いている。
そして今年4月11日、RSFは多くの
避難民が身を寄せる北ダルフール州エル・ファシールのザムザムキャンプへ大規模な地上攻撃を行った。それから3週間が過ぎたが、エル・ファシール近郊では依然として激しい戦闘が続き、人びとはザムザムキャンプから60キロメートル離れたタウィラへの移動を余儀なくされている。
ザムザムキャンプは2024年8月に飢饉の状態にあると報告されており、また、今回の攻撃で多くの人びとが重傷を負った。そのため、人びとは非常に弱った状態でタウィラに到着している。
国境なき医師団(MSF)は避難してきた人びとに対し、市内の病院で救急医療および栄養支援サービスの対応に当たっている。
殺害、レイプ、略奪──激化する暴力
「彼らは銃を持ってやって来ました」とザムザムキャンプが攻撃されてから3日後にタウィラに到着したマリアムさん(40歳・仮名)は言う。
彼らは人びとを襲い、殺しました。子どもたちでさえもです。家も家財も、すべて焼き払われました。女性のレイプ、殺害、そして略奪も行われました。
マリアムさん タウィラに逃れてきた女性
「ザムザムキャンプは1年にもわたって包囲されていたので、攻撃される前にも、渇きや飢えで多くの人びとが命を落としていました。何もかもがとても高価で、手に入らなくなっていました」
マリアムさんは母親、姉妹、その子どもたちの総勢20名でタウィラにやって来た。数本の枝と布切れで作った仮設の狭いシェルターで身を寄せ合い、わずかにできる日陰を譲り合いながら暮らしている。
「ここには食べ物が何もありません。タウィラに住んでいる数人の人びとが、キビ粉を少し分けてくれて、お粥を作りました。これが、私たちが生き延びてきた方法、つまり、物乞いです。水はタンクからくみますが、一家族につき一缶分しかありません。毛布も1枚しか持っていません。私たち家族は20人もいるのに──」
避難先でも続く苦難
ザムザムキャンプからタウィラへの避難が始まった4月12日以来、この街の周辺は様変わりし、数週間前にはまったく人気のなかった野原に、今では数万人の人びとが仮設シェルターを作って生活している。
「ここに来て4日、ご覧の通り、私たちは壁も屋根もない状態で過ごしています」と、11人の家族とともに、徒歩でザムザムキャンプから逃げてきたイブラヒムさん(42歳・仮名)は話す。
彼は5日間、子どもの一人を肩に、もう一人を背中に背負って歩いた。このような状況で避難するのは、この10年間で4度目だ。彼は兵士が人びとの家に押し入り、外へ連れ出して発砲するのを見た。兄弟3人も同じようにして殺されたという。そして、タウィラに向かう途中、略奪に遭い、動けなくなるまで激しく殴打される人びとを目の当たりにした。
ここはとても混み合っていて、水も居場所も足りません。食べるものもなく、皆がお腹を空かせています。
イブラヒムさん タウィラに逃れてきた男性
「コミュニティの炊き出しで、食べ物を少し分けてもらっています。時々、配給で米を手に入れることができますが、手に入らないと翌日まで何も食べられません。水は井戸からくむのですが、人が多すぎて何時間も待たなければなりません」
1つのベッドに4人──圧倒的に足りない医療
タウィラではいくつかの援助団体が活動しているが、支援を必要とする人びとの数はその対応能力をはるかに上回っている。MSFは主要な地点に2つの簡易診療所を設置し、新たに到着した人びとに対し、水や栄養食の提供や医療支援を行っている。また、重症患者を、MSFが2024年10月から支援しているタウィラの地方病院へ紹介している。
「救急治療室は混乱状態でした」と大勢の重症患者が運び込まれた4月12日、病院で勤務していたMSFの看護師長ティファニー・サーモンは語る。
最初の数日間で、患者数はほぼ2倍になりました。ある時はスペースが足りず、1つのベッドに4人の患者が横たわっていることもありました。患者の多くは銃弾や爆風によって負傷していました。
ティファニー・サーモン MSF看護師長
「この3週間で、138人の子どもを含む779人を治療し、そのうちの187人は重症でした。私がケアをした中で最も若かったのは、生後7カ月の赤ちゃんです。あごから肩まで銃弾が貫通していました。生後1日で脱水症状に陥った赤ちゃんもいました。子どもの多くは両親がいない状態で運び込まれ、親たちは必死に我が子を探していました」
子どもを苦しめる栄養失調とはしかの流行
病院では、重度の急性
栄養失調に加え、他の合併症を患う5歳未満の子どもを治療する入院栄養治療センター(ITFC)の患者が急増した。患者が殺到した翌週には、入院患者数は週平均6~7人から60人以上、実に10倍近く増加した。その大半はザムザムキャンプから来た子どもたちで、飢饉に見舞われたキャンプの栄養状況の厳しさを如実に物語っていた。
さらに状況を悪化させたのは、3月にタウィラで
はしかの流行が疑われたことだ。病院では2月初旬からはしかの疑いのある患者900人以上を治療し、そのうち300人以上は重症で入院が必要だった。
この状況を受け、MSFは4月の第1週に大規模な集団
予防接種を開始し、5歳未満の1万8000人以上の子どもにワクチンを接種した。しかし、ザムザムキャンプから大勢の人びとが移動してから1週間後、MSFは到着したばかりの子どもの中に、はしかの疑いのある症例を何件か見つけた。これは、はしかがタウィラの避難先でもすでに広がり始めているということだ。
避難所のような人口密度が高く、衛生状態が悪い場所では特に、栄養失調とはしかの合併症は幼い子どもたちに致命的な結果をもたらす恐れがある。
増大し続けるニーズ 援助拡大が急務
MSFはタウィラでの活動を引き続き強化している。毎日数百件の診療を行うほか、地域のコミュニティに乾燥食品を寄付し、1日1万6000食以上の食事を準備・配布できるようにしている。また、1日10万リットルの清潔な水を供給しており、300個のトイレの建設も計画中だ。
しかし、ニーズは依然として膨大であり、MSFの対応能力をはるかに超えている。他の関係機関も動員され、最初の大規模な食料配給が実施されたが、引き続き緊急かつ迅速な援助の拡大が急務だ。
MSFは国連機関に対し、増大し続けるニーズに対応できる規模の援助を調整するため、現地でのプレゼンスを大幅に強化するよう求めている。
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