スーダン首都:空爆と砲撃の中での外科手術

2023年05月29日
外科手術によって負傷者の体内から取り出された弾丸 © MSF/Ala Kheir
外科手術によって負傷者の体内から取り出された弾丸 © MSF/Ala Kheir

4月から戦闘が続いているスーダン。国境なき医師団(MSF)は首都ハルツームの病院にて、現地のスタッフやボランティアとともに医療活動を展開している。1週間余りで240人に及ぶ患者の治療に当たってきた。首都一帯で空爆や砲撃が続いており、その負傷者が続々と病院に運ばれている。

スタッフがいなくなった病院の再開

ハルツームで本格的戦闘が始まったのは4月15日だ。戦線が拡大するにつれ、病院や医療施設も対応に苦慮している。戦闘による被害を受けた医療施設もあれば、スタッフが避難を余儀なくされたり通勤困難に陥っているケースもある。

ハルツーム南部のバシャール医学校附属病院は、一時的に閉鎖に追い込まれた。MSF緊急対応コーディネータを務めるウィル・ハーパーが語る。

「病院のスタッフたちが身の安全のために避難したためです。しかし、医師、看護師、そして地元の若者たちが、この病院を再開しようと動き出しました。私たちMSFの外科チームが現地に着いた頃には、彼らが危険をかえりみず病院を切り盛りしていました。彼らと協力して、この地域住民に向けた医療活動に取りかかっているところです」

MSFの医師ヒシャム・エイドも語る。「ここに来た時、現場は混乱していました。病院はまだ機能しきれていませんでした。電気もわずかにしか通っておらず、あらゆる物資が不足していました。大勢の患者さんがやってくる中、ごくわずかな医師とボランティアの方々が、できる限りのことを尽くしていました。現在はようやく状況が良くなってきましたね。患者さんたちにスムーズに対応できるようになっています」

一時的な閉鎖から再開にこぎつけた病院  © MSF/Ala Kheir
一時的な閉鎖から再開にこぎつけた病院  © MSF/Ala Kheir

戦火のなか240件の外科手術

MSFチームがこの病院での活動を再開したのは5月9日。それ以来、240件以上の外科手術が実施された。大がかりな手術も1日に4件前後ほどある。その多くが複雑で生死を分けるものばかりだ。

MSFの外科医シャジード・マジードは語る。「銃で撃たれて重体となった患者さんたちを何人も診てきました。胸を撃たれた人もいれば、腹部を負傷した人もいます。血管の再建手術もここでやっていて、死の危機、手足を失う危機にあった人びとをなんとか救うことができています」

ハルツーム南部で稼働する数少ない病院として、多くの患者が訪れる  © MSF/Ala Kheir
ハルツーム南部で稼働する数少ない病院として、多くの患者が訪れる  © MSF/Ala Kheir

さらなる物資と人員を

ただし、こうした救命医療を続けるための物資確保は、いまもなお綱渡りに近い状況だ。MSFをはじめとするさまざまな組織が、スーダン国内にある医療物資の在庫をハルツームや他の地域の病院へと送り続けている。しかし、物流経路や事務手続などの事情がからんで、その輸送プロセスは滞りがちだ。さらに、電力供給も不安定で、発電機を動かす燃料をどうするかが深刻な問題となっている。

ウィル・ハーパーがこの点も語った。「ケアの質は高まってきたし、ボランティアやスタッフなどの人員も揃ってきました。戦闘で負傷した人びとのために外科手術を施せるようにもなりました。一方、深刻なのは、術後ケアや感染症の対策です。こうした問題は平時でも大変なのに、いまは水道、電気、医療物資などが滞っていますからね」

紛争終結の見通しはいまだに立っていない。戦闘で負傷した人たちが着実に救命医療を受けられるために、医療ニーズの高い地域にさらなる物資とスタッフを届けることが求められている。

不安定な状況のもと手術の準備を進める医師  © MSF/Ala Kheir
不安定な状況のもと手術の準備を進める医師  © MSF/Ala Kheir

この記事のタグ

関連記事

活動ニュースを選ぶ