助けに来る者もなく──欧州諸国は地中海の難民たちをいつまで見捨て続けるのか
2023年12月15日
イタリアとアフリカを結ぶ地中海の中央部──この「移民ルート」として知られる一帯では、2023年の1年間だけで、死者および行方不明者が2200人近くに達しているとされる。これほどの死者が出たのは2017年以来だ。
国境なき医師団(MSF)は報告書『No one came to our rescue(助けに来る者もなく)』(英文)を発表。その中で、欧州諸国が暴力的な国境警備体制を敷き、遭難者たちを放置しており、そうした状況が海難死亡者の増大を招いている点について指摘している。
1日平均8人が死亡か行方不明に
暴力と苦難に満ちた旅
欧州諸国は人命救助を放棄している
自国のすぐそばで繰り広げられている人びとの苦しみ──欧州連合(EU)とその加盟国は、それらを無視するかのような政策や法律を作って実行に移してきた。MSFは、地中海において、欧州諸国がリビアへの強制送還を執行しているところを目撃してきた。今年夏も、欧州諸国は、チュニジアやアルバニアといった第三国と新たな協定を結んだ。保護を要する人びとを支援する義務から免れようとするものである。
この点について、先ほどのギルは語る。
いつものことです。人びとの権利や生命を守ることより、彼らの入国を抑止し、封じ込めることにやっきになっているのです。
この点について、ギルが次のように語る。
「生存者たちが陸に上がってから受けられるべき医療援助や社会サービスが遅延したこともありました。MSFが海上で遭難者たちを助ける活動から意図的に遠ざけられたこともありました。イタリアの新しいルールはNGOをターゲットにしたものですが、それで実際の被害を受けるのは、地中海を渡って逃げてくる人びとです」
まさに彼らは、だれも助けに来る者がいない状況なのです。
非人道的アプローチの方針転換を
MSFの地中海における捜索救助活動
MSFは、2015年から海難捜索救助活動に取り組んでいる。単独あるいは他のNGOと連携したものも含め8隻の捜索救助船で活動しており、総計9万人以上を救助してきた。
ジオ・バレンツ号による活動は2021年5月より開始。2023年11月までに、9762人を救助したほか(うち4011人は2023年に救助)、11人の遺体も回収している。さらに、船上における分娩介助活動にも従事している。