「発熱から3日後、顔に穴が開き……」肌と骨が破壊される病気で顔を失う子どもたち

2019年01月07日掲載

「以前は健康で明るい子でした。急に熱を出したと思ったら、3日後には顔に穴が開いたんです」。国境なき医師団(MSF)の病院を訪れたヤアシェちゃん(6歳)の母親、ヤガナさんはこう振り返る。 

病院のおもちゃで遊ぶヤアシェちゃん(右)と母親のヤガナさん病院のおもちゃで遊ぶヤアシェちゃん(右)と母親のヤガナさん

ナイジェリア北東部ボルノ州出身のヤガナさん一家に父親はいない。就寝中の無抵抗なところを過激派組織「ボコ・ハラム」が襲撃し、ヤガナさんのすぐ隣で寝ていた夫を殺害したのだ。

ヤガナさんは5人の子どもを連れ、ボルノ州の州都マイドゥグリにあるムナ避難民キャンプに逃れた。ヤアシェちゃんが発症したのは、避難から2ヵ月が経過した頃だ。栄養不良や劣悪な衛生環境から引き起こされる「水がん(すいがん)」だった。 

武装勢力や政府軍の暴力から逃れた避難者が身を寄せるマイドゥグリのキャンプ武装勢力や政府軍の暴力から逃れた避難者が身を寄せるマイドゥグリのキャンプ

水がんは、細菌が顔の骨や組織を破壊する壊疽(えそ)性の口内炎。感染すると歯肉炎を起こし、わずか数日のうちに唇、頬、鼻や目など顔面のさまざまな部位に広がっていく。患者の多くは、へき地の貧困世帯で暮らす5歳未満児だ。

早期に受診して適切な治療を行えば2週間ほどで回復するが、病気の認知度が低いうえ、地理的・経済的な理由で治療を受けられずに命を落とすケースも多い。そのため、MSFは遠隔地へ出向いて水がんの健康教育を行うほか、患者を探し出し、病院へ搬送している。 

ヤアシェちゃん(右)に付き添う姉妹。MSFのソコト水がん病院でヤアシェちゃん(右)に付き添う姉妹。MSFのソコト水がん病院で

ヤアシェちゃんは、避難民キャンプを訪れたMSFの医師に促され、ボルノ州から1000km離れたソコト州の水がん病院に運ばれた。2014年にMSFと現地保健省が立ち上げた、ナイジェリア唯一の水がん専門病院だ。

ここでは無償で水がんを治療しているほか、回復した患者に対する外科手術心理ケアにも取り組んでいる。 

MSFのソコト水がん病院で治療を受けるスフュアヌちゃんMSFのソコト水がん病院で治療を受けるスフュアヌちゃん

ソコト州の村から水がん病院に到着したスフュアヌちゃん(3歳)の病状は悪く、既に顔面が破壊されていた。水がんの原因でもある栄養失調になっていたため、栄養治療を開始。さらに抗菌治療を受け、無事に退院することができたが、顔には後遺症が残った。

外見が損なわれた患者は偏見にさらされ、社会から孤立することも多い。スフュアヌちゃんは成長を待って、失った皮膚を再建するための外科手術を受けることになっている。 

家族とともに地元の村へ戻ったスフィアヌちゃん。自宅前で家族とともに地元の村へ戻ったスフィアヌちゃん。自宅前で

ソコト水がん病院では3ヵ月ごとに外科手術を行う。高度な技術を持つMSFの形成外科医、顎・顔面外科医、麻酔科医、看護師が世界から派遣され、水がんで破壊された顔の部位を皮膚移植によって再建する。

手術が始まると、院内は興奮に包まれる——患者たちが数ヵ月、あるいは数年間待ちわびた日がようやく訪れたのだ。 

患者を診察するMSF医師。傷痕の状態に応じて手術時期を決める患者を診察するMSF医師。傷痕の状態に応じて手術時期を決める

ボルノ州から来たヤアシェちゃんは、退院の半年後、ようやく1回目の再建手術を受けることができた。

皮膚を移植した娘を見たヤガナさんは喜びを隠せない。
「手術を終えて出てくる娘を見たとき、神に感謝しました。あの子をとっても愛しています」

皮膚組織の大部分を失ったヤアシェちゃんは、今後も複数回にわたって手術する予定だ。 

皮膚の移植手術を終えた4歳の女の子皮膚の移植手術を終えた4歳の女の子

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