ベネズエラ:医療ごみの取り扱いに要注意 感染対策でカギとなる処理方法とは

2021年07月13日掲載

ベネズエラでMSFが活動する医療施設では廃棄物の分別処理を行っている © Veronica Ravelo ベネズエラでMSFが活動する医療施設では廃棄物の分別処理を行っている © Veronica Ravelo 

「以前は診療所から出たごみも、普通のごみとして捨てられていたんです。燃やされたり、川に流されたりしていました。子どもが落ちていた注射針を拾って遊ぶことさえありました」

そう語るホセ・チャコンは、ベネズエラ北東部、カリブ海に面したスクレ州にある診療所で長年勤めてきた。毎朝早くから防護服を身に着け、ホセは診療所の一角に集められた医療廃棄物の処理に取りかかる。単純な作業のように見えるが、その仕事は地域住民に大きく影響している。

廃棄物による感染をなくすために

農村部サン・ビセンテにあるこの国境なき医師団(MSF)の診療所には、医療を求める患者が周辺地域から徒歩でやってくる。受診の理由はマラリア、ワクチン接種、呼吸器疾患、外傷、裂傷、妊娠などさまざまだが、こうした診療で排出されるごみは、スタッフや住民の健康、環境をも脅かす要因となる。

「サン・ビセンテで活動を始めたMSFチームは、医療ごみを捨てられる場所がないと知り、この問題に取り組み始めました。水道を設置し、廃棄用の穴を掘り、スタッフにごみ分別についての講習を行ったのです」と地元で生まれ育ったホセが説明する。

サン・ビセンテ診療所で医療廃棄物処理を担当するホセ・チャコン © Matias Delacroix サン・ビセンテ診療所で医療廃棄物処理を担当するホセ・チャコン © Matias Delacroix 

医療廃棄物はしっかり管理しなければ、感染の危険が生じる。医療施設でごみを分別して処理する専用区画が必要となるのは、そのためだ。何らかの理由で廃棄素材に触れ、感染してしまうことも未然に防げる。

廃棄物は4種類に分けられる──汚染する恐れがあるもの、感染性のもの、生物学的なもの、そして一般ごみだ。いずれも気密性の高い容器に入れて密封し、すぐに処理や焼却を行う。この手順は、使い捨てマスクや防護具といった、新型コロナウイルス感染症の医療廃棄物にも適用される。

ごみは種類ごとに、それぞれ焼却炉と廃棄用の穴を設けている。ガーゼや綿パッド、マスク、プラスチック製品などと、注射針などの鋭利なごみを一緒に処理してはならない。また小びんや検査用プレートなどはガラス破砕器にかけ、胎盤などの生物学的廃棄物は専用の穴に捨てられる。

注射器の針や鋭利な廃棄物は紙箱に入れて処理 © Veronica Ravelo 注射器の針や鋭利な廃棄物は紙箱に入れて処理 © Veronica Ravelo 

廃棄物の処理方法を行き渡らせる

MSFは国の保健当局と連携し、スクレ州で感染症対策を目的とした廃棄物管理活動を展開。医療従事者を対象とした廃棄物の安全な分別・処理についての研修計画を作成するとともに、州内3カ所の病院(※1)と5つの診療所(※2)で廃棄物処理の専用区画を設けた。
※1)クマナ、カルパノ、ヤグアラパロ ※2)コイクアル、プトゥクアル、アグア・クラリタ、サン・ビセンテ、グアカ

MSFの感染予防・制御専門家レベッカ・サンタナは、医療廃棄物の処理が住民の健康にもたらす効果は数値化しがたいものの、その意義に疑いはないという。

「医療廃棄物の処理で、肝炎やHIVなどの感染を防げることが知られています。医療施設で処理区画を設けることは、地域で安全に医療活動を行う上で基本かつ必須の要件です。水の供給と同じように欠かせません」

診療所で廃棄物処理の全工程に携わるホセはいま、自らの仕事がもつ意味を見出し、大きな満足を覚えている。診療所の内外で多くの病気の予防に確実に役立っているからだ。

サン・ビセンテ診療所で診察を待つ人びと © Matias Delacroix サン・ビセンテ診療所で診察を待つ人びと © Matias Delacroix 

MSFは2015年からベネズエラで継続的に活動。2020年はアマソナス、ボリバル、スクレの3州で、地域住民とスタッフが感染にさらされないよう適切な医療廃棄物処理場を整備した。その他、アンソアテギ、タチラ、ミランダの3州と首都区でも活動している。

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