気候危機:最も弱い立場の人びとの健康を守るため、団体のCO2排出量削減を目指す

2022年04月14日
コンゴ民主共和国、南キブ州の総合病院にソーラーパネルシステムを設置 Ⓒ Pablo Garrigos/MSF
コンゴ民主共和国、南キブ州の総合病院にソーラーパネルシステムを設置 Ⓒ Pablo Garrigos/MSF

地球の未来と、世界の人びとの健康と安全を脅かす、気候危機。国境なき医師団(MSF)が活動を行う国や地域に住む人びとは、すでにその影響を受けており、気候変動が加速するにつれて、健康危機や人道危機の規模もますます深刻になることがわかっています。より多くの人びとの苦しみを防ぎ、その影響に対応するため、すぐにでも行動を起こさなければいけません。

MSFの取り組み

地球規模の問題である二酸化炭素(C02)排出と、人間が原因の環境破壊。MSFも医療・人道援助活動の中でこの二つに関わっている認識から、2030年までに団体の排出量を2019年比で50%以下に削減することを宣言しました。気候変動について、地球温暖化を2℃未満に抑えるというパリ協定の目標に則し、脱炭素化への確実な道のりを目指します。世界各国で活動するMSFが、この意欲的な目標に向かって行動し、進捗を報告することを決めました。

「気候危機の悪影響によって人類の健康被害は増えていくでしょう。健康上の問題が発生した時にだけ対応するのでは不十分です。そもそも問題が発生しないようにするために、相応の役割を果たさなくてはいけません。いま行動を起こさなければ、患者さんや地域社会に対する医療・倫理上の義務を果たしていないことになります」

MSFインターナショナル会長のクリストス・クリストゥ医師はそう話します。

MSFでは、2019年のCO2排出量の測定調査を継続して行っていますが、団体として、人の移動や供給、建設、エネルギーや廃棄物の管理といった課題に応じた取り組みを続けていかなければならないことは確かです。

最大の被害者は、最も弱い立場の人びと

世界中の多くの活動地で、MSFのスタッフは環境の変化と人びとの健康状態が密接に結びつく状況に対応しています。例えば、降雨量や気温の変化により、マラリア、デング熱、コレラなどの感染症にかかる人が増えています。また、環境への負荷が高まることで、生物から感染する病気の症例も増加が見られます。サイクロン、ハリケーン、干ばつなどの異常気象も頻繁に起こり、それが栄養失調につながることもあります。

現在、MSFのチームは多くの場所で、感染症の流行や食糧不安、紛争、避難などにより、複数の健康上の問題を抱える人びとの姿を目の当たりにしています。これらはすべて気候変動という緊急事態によって悪化しているのです。

大規模な洪水により深刻な被害を受けた南スーダンのベンティウ=2021年12月 Ⓒ Pablo Garrigos/MSF
大規模な洪水により深刻な被害を受けた南スーダンのベンティウ=2021年12月 Ⓒ Pablo Garrigos/MSF

具体的な行動が急務

MSFは2020年の団体としての環境合意に基づき、気候変動が健康に及ぼす影響を抑制するため早急かつ本格的な変化が必要だと認識しています。そこで、これから10年間の排出量の大幅な削減を約束するとともに、「Climate and Environment Charter for Humanitarian Organizations(人道団体のための気候・環境憲章)」に署名した約200の人道援助団体の仲間入りをしました。
 
緊急医療・人道援助団体として、世界でも特に遠隔地にいる人びとへ迅速な援助を届けることを今後も優先していくものの、その過程で、環境への負荷を最小限に抑える方法も模索しなくてはなりません。MSFと人道援助関係者、そして社会全体で、活動を行う方法の見直しが求められています。困難が予想されますが、気候変動が人道危機にいっそう拍車をかける中、その必要性はますます高まっていくでしょう。

「70カ国以上の国と地域で展開する、緊急医療プロジェクトの実践・支援方法を脱炭素化することは簡単な仕事ではありません。それでも私たちはその達成を決意し、あらゆる視点から解決の道を模索しています」とクリストゥは語ります。
 
「未来の世代をこれ以上の苦しみや災害から守りたいのであれば、私たち全員で責任を持つ必要があるでしょう。気候危機は究極的には健康の危機であり、排出量の抑制はいまや人道的行動の一部になっているのです」

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