忘れられた危機を生きる人びとに、希望を── モザンビーク、活動の一部を現地当局に移譲
2022年05月16日
- QなぜMSFはメトゥゲでプロジェクトを始めたのですか?
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ここカーボ・デルガード州の紛争は、大きな人道危機を引き起こしています。国際移住機関(IOM)によると、この危機で80万人近くが避難しましたが、メトゥゲはその多くを受け入れている地区の一つなのです。

2020年3月、MSFは治安の悪化によりマコミアから避難し、拠点を州都のペンバ市へ移して水・衛生活動を開始しました。やがて、紛争から逃れてきた人たちが、着の身着のままに近い状態でペンバやメトゥゲに押し寄せてきたのです。
紛争の被害を受けた人びと、暴力を目にし家を破壊された人びとに出会いました。大勢の人が家族と離れ離れになり、基礎医療や安全な飲み水もない状態でした
2021年9月からは、メトゥゲで水・衛生活動を開始するとともに、新たに到着した人びとを支援するために移動診療を開始しました。
現在でもメトゥゲは、ペンバ以外ではカーボ・デルガード州で最大の避難先です。IOMによると、危機以前の人口はわずか7万人だったこの地区に、12万人以上の避難民が到着したのです。
- Qメトゥゲではどのような援助活動を行いましたか?
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最大の成功は、人道危機に際してすぐに対応して、避難している人びとが基礎医療を受けられるようにしたことです。主な避難民キャンプで移動診療と常設の診療所を運営し、安全な水と排水設備を利用できるようにしました。

子どもから大人まで幅広く対応する援助活動を行えたことも成果の一つです。女性には産前健診や家族計画のほか、心のケアも受けられるようにしました。それは、ショッキングな出来事に遭遇して心的外傷を負った人びとにとって非常に大切なことです。

また、患者の搬送体制をできる限り改善し、井戸の修復や既存の水道網の拡張など、安全な水の供給にも力を注ぎました。医療施設の改善や、この地区で活動を始めた他の団体とも協力しました。地域の医療を持続可能にするためには不可欠なことでした。
2021年1月以降、10万人以上の患者を診療し、そのうち2万人以上がマラリア、3万人近くが呼吸器疾患、約1万人が下痢であることが確認されました。また、5000人以上の女性に対し、リプロダクティブ・ヘルスケア(性と生殖に関する医療)や家族計画、産前ケアなどの支援も行いました。
心のケアのチームから報告された症状で、一番多かったのは「不安」です。住む場所を追われ、家や持ち物を壊され、家族と離れ離れになった人たちに対し、MSFの心理療法士が行ったカウンセリングは1000回に達しています。

- Qなぜいま、MSFはメトゥゲの活動をモザンビーク保健省に移譲するのですか?
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2021年の終わりには、メトゥゲは他団体から多くの支援を受けるようになりました。少なくとも6つの健康関連団体が現地に入っており、中には開発プロジェクトに重点を置いている団体もありました。
そのため、MSFは2022年3月末まで滞在し、この地域の風土病である下痢の流行に備えて複数の診療所で用意を整え、現在はモザンビーク保健省にこの活動を引き渡しています。これにより、メトゥゲの避難民キャンプで暮らす人びとは、これからも無理なく診療を受けることができます。
今後MSFは、最も医療・人道援助のニーズの高いところにリソースを投入していきます。特に、医療や安全な飲料水が手に入らないマコミアで、緊急に活動の規模を拡大しているところです。
- Qマコミアで活動を拡大するのはなぜですか?
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マコミアはカーボ・デルガード州で最も紛争被害の大きかった地区の一つです。この町にはまだ多くの人びとが避難することなく残っていて、他に深刻な被害を受けた村からも多くの避難民がやって来ます。
治安の悪化により人道支援が著しく欠如しているため、何千人もの人びとが茂みに隠れたり、スラム地区に集まっており、医療サービスや清潔な水、その他の基本的な生活必需品が利用できないまましのいでいます。
マコミアの住民に届く人道支援のレベルは、住民の基本的なニーズに全く追いついていないのです
