新年のごあいさつを申し上げます

2023年01月01日

旧年中は国境なき医師団(MSF)の活動にあたたかいご支援を賜り、誠にありがとうございました。
 
MSFは昨年も、命の危機にさらされた数多くの人びとへ独立・中立・公平な立場で医療・人道援助を届けることができました。これらの活動の基盤となっているのが、団体に賛同してくださっている皆さまお一人お一人の温かいお気持ちです。多大なるご協力に改めて感謝いたします。
 
「ついに1億人を超えた──」。昨年、そんなニュースが駆け巡りました。紛争や迫害によって住む場所を追われた、世界の難民・国内避難民の数です。
 
昨年、日本でも関心が高まったウクライナでの戦争のみならず、アフガニスタンの混乱、エチオピアの紛争などで多くの人びとが国内外に避難を余儀なくされました。シリアでは内戦が始まってから昨年で11年。バングラデシュでは、70万人を超えるロヒンギャの人びとがミャンマーでの迫害から逃れた危機から5年と、問題は長期化しています。

バングラデシュの難民キャンプを訪問し、ロヒンギャの女性たちに話を聞く村田 <br> Ⓒ Elizabeth D. Costa/MSF
バングラデシュの難民キャンプを訪問し、ロヒンギャの女性たちに話を聞く村田 
Ⓒ Elizabeth D. Costa/MSF

さらにいま、国際人道法に反して紛争地で医療が攻撃の対象となり、助かるはずの命が助からないという悲劇が多数発生しています。世界に衝撃を与えたウクライナの産科病院への攻撃もその一つで、決して見過ごしてはならない現実です。私たちはこれからも、命を脅かす理不尽な事態に声を上げ続けていきます。
 
今年から2年間、日本は国連安全保障理事会で非常任理事国としての任期を務めます。命の危機にある人びとがこれ以上の苦境に立たされることがないよう、また、医療・人道援助活動従事者が必要とする人びとに支援を届けられるよう、国際人道法の順守や人道援助の強化に日本がリーダーシップを果たすことを期待します。
 
私たちMSFは、変わらぬ理念を大切にする一方で、フランスでの誕生から半世紀の間に組織が大きくなり、時代に適応した変革も求められています。欧州中心の流れから脱して、アフリカやアジアなど地域ごとに速やかに意思決定し動けるようにすることで、その国や地域の文化に合った援助活動ができ、機動力も増すはずです。多様性が増す世界でより良い医療援助を行うために、日本やアジアからの視点を積極的に提起していきたいと考えています。
 
また私たちは、講演会や学校教材などを通し、次世代に向けた取り組みも進めています。人道問題を遠い世界の出来事ではなく自分ごととしてとらえ、行動を起こせる人材を育てることが目的です。そしてこれからも、メディアやイベント、ウェブサイト、ニュースレター等を通して、MSFが人道危機の現場で目撃した事実を一人でも多くの方に伝えられるよう尽力してまいります。
 
人道援助への関心を広げ、日本から世界へより大きな力を届けられるよう、私たちの挑戦は続きます。2023年、そしてその先の未来の命のために。
 
本年も、皆さまの変わらぬご支援をお願い申し上げます。

国境なき医師団日本
会長 中嶋 優子
事務局長 村田 慎二郎

左:中嶋優子 右:村田慎二郎 © MSF
左:中嶋優子 右:村田慎二郎 © MSF

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