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【報告】第38回日本外傷学会総会・学術集会でスポンサードセミナー「紛争地における外傷治療~パレスチナ・アフガニスタンの事例から~」を開催

2024年05月14日

2024年4月25日~26日に大阪で開催された第38回日本外傷学会総会・学術集会で国境なき医師団(MSF)がスポンサードセミナーを開催しました。
 
本セミナーでは「紛争地における外傷治療~パレスチナ・アフガニスタンの事例から~」として、座長である小笠原智子医師(日本医科大学付属病院/令和あらかわ病院)のもと、MSFの寺田貴史医師、今村剛朗医師がそれぞれの活動地での経験を語りました。会場はほぼ満席になるほど多くの方が参加してくださり、紛争地での医療援助活動に対する関心の高さが感じられました。

スポンサードセミナー登壇者。左から今村医師、寺田医師 © MSF
スポンサードセミナー登壇者。左から今村医師、寺田医師 © MSF
講演する寺田医師 🄫 MSF
講演する寺田医師 🄫 MSF
最初に登壇した寺田医師は、紛争終結後のアフガニスタンのクンドゥーズでの活動について報告しました。
救急医・集中治療医として活動した寺田医師は、現地スタッフの感染症に対するマネジメントの向上の必要性を感じ、週に1回30分~1時間のトレーニングを実施しました。
しかし、シフトの関係やその他の要因からスタッフの参加状況が芳しくなく、トレーニングが困難でした。そこで、寺田医師が以前勤務していた大阪市立大学医学部附属病院(現・大阪公立大学医学部附属病院)で行われていた短時間のトレーニングを参考に、毎日数分間のトレーニングを実施しました。
その結果、さまざまな人が参加しやすい体制かつ、お互いの知識を共有しやすい環境をつくることができたと報告しました。
講演する今村医師 🄫 MSF
講演する今村医師 🄫 MSF
救急医として活動した今村医師は、パレスチナ自治区ジェニンにて、救急外来スタッフへのFAST(Focused Assessment with Sonography for Trauma)や一連の外傷診療についてのトレーニング、状況に応じた医療支援ニーズの探索を行いました。
活動中には病院に通じる道路が軍用車両で封鎖されたり、救急車が銃撃を受けたり、負傷した患者が病院へたどり着けなかったり、といった医療アクセスへの妨害がありました。そこで、病院にたどり着けない、もしくはたどり着けたとしても時間を要する患者の状態を、病院前診療によってある程度安定化させることに重点を置くよう方針を変更し、救急隊員らにも病院前外傷救急のトレーニングを実施しました。
活動を通して、医療アクセスへの妨害により、救命できる可能性のあった患者の死亡が増えていること、トリアージの導入やチームで組織化した外傷診療トレーニングを行うことで救命できる患者を増やすことができるだろうと報告しました。

質疑応答では、アフガニスタンの外傷センターにおいて、外傷以外の急性疾患の受け入れの有無についての質問があり、寺田医師は、外傷のみ対応しておりそれ以外は近隣の病院で対応してもらう体制を取っていたと回答しました。

別の参加者からは、治療やトレーニング実施も含めMSFで全てを完結する方針で継続的に海外派遣スタッフを現地に派遣しているのか、もしくは地域の医療施設やスタッフと連携しているのかという質問があがりました。今村医師は、MSFは最終的には現地の医療スタッフのみで完結できることを目指して支援していること、ジェニンでの活動に関しては、当初からMSFが治療を主導するのではなく、あくまでも現地スタッフをサポートする形式での活動だったことを回答しました。寺田医師からも、クンドゥーズでの活動は最終的に現地スタッフで対応していけるようにすることを目的としたものであり、そのために医療全体の底上げを目指していく必要があること、そのために現地で実施しやすいようなレクチャーを実施・提供していくことが重要であると回答しました。
 
また、同学会ではMSFのブースも出展しており、2日間を通して多くの方にお立ち寄りいただきました。ブースでは、海外派遣スタッフとしての参加を考える方に応募資格などの詳しい情報提供も行いました。

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