インドネシア・スラウェシ島地震 現地医師が見た災害支援の現場

2018年12月03日掲載

パル市南部のペトボ地区でも液状化現象が発生した © MSFパル市南部のペトボ地区でも液状化現象が発生した © MSF

2018年9月28日、マグニチュード7.5の地震に見舞われたインドネシア・スラウェシ島。この地震と津波により、これまでに2101人が死亡し、4438人が重傷を負った(10月30日現在)。内陸部では大規模な液状化現象も発生し、多数の人や家屋が濁流に飲み込まれた。10月12日に捜索・救助活動が打ち切られたが、1373人以上がいまだ行方不明だ(インドネシア国家防災庁(BNBP)発表)。

国境なき医師団(MSF)はシギ県、ドンガラ県と州都パル市に医師ら12人からなるチームを派遣し、診療や仮設施設の建設、トイレと水場を設置する衛生面での援助のほか、被災者の心理ケアなどを行ってきた。

MSFチームの一員として活動した現地医師が手記を寄せた。 

震災で心の傷を負った被災者、言葉の壁も/ユスフ・トバ(インドネシア出身のMSF医師)

やけどを負った女性を診察するトバ医師 © MSFやけどを負った女性を診察するトバ医師 © MSF

MSFの活動は今回が初めてで、何が待ち受けているのか、本当に予想ができませんでした。でも、自国で被災した人たちの医療ケアの必要性に応えようと決心していました——この大災害で、大勢が家や大切な人を失ってしまったという痛ましい話を見聞きしていましたから。

MSFが医師を募集していると知り、すぐ応募しました。私の出身は南スラウェシ州のマカッサル市。中部スラウェシ州の州都パルまでは飛行機で2時間です。国立病院の救急科での勤務経験があったため、救急処置については分かっていました。 

現地での主な業務は移動診療でした。地震が発生し、自宅から飛び出した際に、沸騰した水でやけどしてしまった女性の症例など、大部分が外傷への処置でした。骨折、打撲、切り傷……さまざまな負傷者をたくさん診ました。そのほか、感染症予防や疫学的調査、避難所やMSFの仮設診療所の調査も私の仕事でした。

震災で損壊したドロ郡南部の教会 © Achmad Yusuf Toba/MSF震災で損壊したドロ郡南部の教会 © Achmad Yusuf Toba/MSF

パル市の南にある南ドロ郡バルアセ村の診療所は地震で大きく損壊していたため、MSFチームは仮設診療所を開きました。余震への不安から、屋内にとどまることに不安を感じる被災者が多かったため、MSFスタッフが入室を促し、診療を勧める必要がありました。

現地の言葉も障壁でした。現地語を話せる人がなかなか見つけられず、当初は地元の人との意思疎通に苦労しました。幸い運転手が地元出身で、患者の言うことが理解できたので通訳となり、患者や地域の人びととのコミュニケーションも手伝ってくれました。 

術後の経過観察をするトバ医師 © MSF術後の経過観察をするトバ医師 © MSF

今回MSFスタッフとして過ごして、かけがえのない時間を過ごしました。チームの仕事ぶりには、目からうろこが落ちる思いでした。メンバー全員が、意欲的に、献身的に取り組んでいたんです。ハードな状況にも不平ひとつ言わず人びとに尽くし、お互いを家族のように思いやっていました。

また派遣の機会があれば、きっと飛びつくと思います。MSFにいれば、私の助けを必要としている人びとに手を差し伸べることができるのですから。 

MSFは現在、インドネシアの中部スラウェシ州における緊急対応の撤収を進めている。今回の緊急対応では、1日平均16人、通算約1000件の診療を行った。被災者への心理ケアは12月中旬まで継続し、今後も現地の医療従事者が活動を継続できるよう研修する予定。 

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