イラン:ザヘダンからの活動撤退を余儀なくされる
2011年10月03日
女性と子どもに無償の医療を提供してきた。
国境なき医師団(MSF)は、イラン当局の要請を受けて、同国南東部に位置するシスタン・バルチスタン州の州都ザヘダン市での医療活動を停止した。現地のアフガニスタン難民や貧困層の人びとが、今後も必要な医療を受けることができるかどうかを、MSFは非常に懸念している。
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難民と貧困層に提供してきた医療
シスタン・バルチスタン州の州都ザヘダン市は、パキスタンとアフガニスタンの国境から約70kmの道程(直線距離では20~30km)に位置するイランの都市である。2001年以降、国境なき医師団(MSF)は、アフガニスタンからの難民と医療費負担が困難な現地のイラン人を対象に、無償の医療を提供してきた。活動場所は、シラバッド、カリマバッド、ベサットという市内の最も貧しい地域の診療所であった。
過去数年にわたり、イラン当局はこの地域に住むアフガン難民(約7万5000人)をアフガニスタンへ送還してきた。その上、2007年にはシスタン・バルチスタン州は「内部の情勢悪化」を理由に外国人立ち入り禁止区域に指定された。2008年以降、MSFは現地スタッフの働きのために活動を続けることができていたが、現地で唯一「黙認されていた」国際的な団体であった。
イランにおけるMSFの活動責任者、カリーヌ・ジランは、同国の首都テヘランでこう語った。
「私たちは、イラン当局から活動地を離れるよう指示する最後通達を何度も受け取りました。その度に交渉を行い、活動終了を数ヵ月先延ばしすることができましたが、先週、活動を終了するほかなくなりました」
「患者に治療の道が開かれているよう願う」

MSFの医師、看護師、助産師は、最後まで開いていた母子医療専門の診療所ともう1つの診療所で、1ヵ月あたり平均5000件を超える無償の診療を行っていた。患者のほとんどは貧困世帯の女性と子どもであった。
ジランは続ける。
「保健省の医療施設が、これまで私たちが最も急を要する患者を彼らのもとに搬送していたときと同じように、私たちの診療所に来ていた患者を診てくれることを願っています。しかし、最も貧しい患者たちが治療費を負担できなくなることや、治療を受けに行くことをためらう事態を、私たちは危惧しています」