DVを逃れ母娘はヨーロッパへやってきた 壊れそうな心「もう命を絶とうかと」

2018年10月01日掲載

ギリシャ・レスボス島のモリア難民キャンプギリシャ・レスボス島のモリア難民キャンプ

「2人の娘と一緒に逃げたのは、夫が暴力を振るうからです」

そう語るのは、故郷のイラクから逃げ、ギリシャのレスボス島にたどり着いたファティマさん(仮名)だ。モリア難民キャンプで国境なき医師団(MSF)の心理ケアを受けている。このキャンプはギリシャ政府が管理し、今、定員約3000人を大きく超える9000人以上の難民が勾留されている。人びとはキャンプを出ることも許されないまま、身の危険を感じながら先の見えない日々を過ごしている。
 

狭いコンテナに28人が押し込められて

キャンプは食料も住居も足りず、人びとの体調が悪化しているキャンプは食料も住居も足りず、人びとの体調が悪化している

「イラクでは、夫に肩の骨を折られたこともあります。誰も想像できないような、ひどい暴力を受けていました。夫は娘たちを結婚させたがっていました。私たちを殴り、娘たちの学校もやめさせました。通学できないよう、娘たちの爪をはがしたんです」

「トルコ行きの飛行機に乗って逃げました。友人から、家族と夫が私を探していると聞いて、居場所を転々としなければなりませんでした。最終的に海を渡りギリシャのレスボス島に来ました。テントを割り当てられましたが、しばらくして私が体調を崩し、他の8家族と共同のコンテナ式住居に移されました。今、コンテナには28人が暮らしています。とても狭くて落ち着かず、掃除用具が足りないので清潔にもできません。まともな扱いを受けられず、食べ物もろくに手に入らなくて栄養失調になっています。それで娘たちが気を失うこともよくあります」
 

ヨーロッパはこんなところなの?

キャンプで暮らす若者の間で自殺願望や自傷行為も増えているキャンプで暮らす若者の間で自殺願望や自傷行為も増えている

「ここでは身を守るものもありません。4週間ほど前に、長女が男に襲われました。まだ17歳なのに……。警察がその男を見つけましたが、何も起こりませんでした。国連難民高等弁務官事務所とキャンプの管理部門に、ここから出て行かせてほしいと何度もお願いしているのですが、いまだに叶わずにいます。ここには身を守る術も、娘たちの通う学校も、何もありません。私たちのたどり着いたヨーロッパは、こんなところなのでしょうか?」

「下の娘はまだ14歳で、ナイフを肌身離さず持っていて、自分を傷つけてしまうと言いながら泣きます。以前は、上の娘とひどいけんかをすることもありませんでした。次女はここに来てから口数も少なく、学校にも行きたがらず、乱暴ですぐにかっとなります。話そうともしません」
 

希望を持つのもやめた

MSFはモリア難民キャンプの人びとに心理ケアを提供しているMSFはモリア難民キャンプの人びとに心理ケアを提供している

「モリアに来て10日経ったころ、次女が錠剤を1シート分全部飲んでしまいました。イラクで殴られていたから逃げて来たのに何も変わってない。誰が守ってくれるのか、と……。枕の下からナイフが出てきたことも2回あります。キャンプの生活におびえているんです。1人にしておくと、いつもうつむいて泣いています」

「母親として2人を守ろうと頑張るのも、疲れてしまいました。守ることなんて本当はできない。何もかもうまくいくと思っていたのに、安全もないし、保護も教育もない。レスボス島に着いてから、希望を持つのもやめました。ここもイラクと同じ。難民の庇護認定を受けるための次の面接は来年の2月ですが、それまでこんなところで待てません。もう命を絶って、終わりにしたいと考えてしまうときもあります」
 

関連情報