エボラ感染 史上2番目の大流行 だが情勢不安で住民は治療が受けにくく…

2019年01月23日

エボラ感染の危険が高まっている地域で、活動準備をするMSFスタッフ。© Gabriele François Casini/MSFエボラ感染の危険が高まっている地域で、活動準備をするMSFスタッフ。© Gabriele François Casini/MSF

コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)北東部のエボラ出血熱流行が宣言されて約半年が経過した。国境なき医師団(MSF)のスタッフは、今も現場で対応を続けており、エボラ流行の抑止に苦労している。これまで、エボラに感染した患者は619人、このうち死者は361人。コンゴでエボラ・ウイルスが発見された1976年以降、史上2番目となる大規模な流行となっている。

新規の確定症例が増え続ける中、北キブ州ベニとその周辺では大統領選挙をきっかけとした不穏な空気が高まり、住民はこれまで以上に保健医療を受けにくくなっている。現地では抗議運動によっていくつものヘルスセンターが被害を受けた。残存する施設も対応に手いっぱいで、エボラ症例の速やかな診断も難しくなってきている。 

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ベニの1次受入施設で活動するMSFスタッフ。© Gabriele François Casini/MSFベニの1次受入施設で活動するMSFスタッフ。© Gabriele François Casini/MSF

「現状では適切なトリアージ(患者の症状を判断し、治療の優先順位を決めること)や感染予防・管理策が講じられていない医療施設に対応を求めるしかないのかもしれません。しかしそれが、エボラ・ウイルス汚染のリスクを高めています」と、MSF緊急対応コーディネーターのロランス・サイイは話す。

「私たちが対応している人びとは、長年の紛争を耐え忍んできました。それに加えて、コンゴ史上最悪のエボラ流行に見舞われています。ここ何週間かの情勢不安によって、適切な医療が受けにくくなり、苦境に拍車がかかっています」 

治療のための準備をするMSFスタッフ。© Gabriele François Casini/MSF治療のための準備をするMSFスタッフ。© Gabriele François Casini/MSF

流行が宣言された2018年8月1日以来、MSFは増加する確定したエボラ症例に対応するため、患者ケア活動を継続的に拡大。直近では、北キブ州ブテンボ、カトワ、イトゥリ州コマンダの3保健区域を拠点としている。ブテンボでは、エボラ治療センター(ETC)を64床から96床に増やし、ブテンボ東側にあるカトワにも治療センターを新設した。イトゥリ州でも、エボラ流行が深刻な地域が複数カ所新たに確認された。コマンダに、エボラ患者らのための1次受入施設を開いた。

「人口約100万人のブテンボ市では、エボラ症例がどんどん増えていきました。早急に2つ目の治療センターを設置する必要がありました」とMSFプロジェクト・コーディネーターのエマニュエル・マッサールは説明する。

「また、エボラ流行地域の人びとの信頼を得る必要にも迫られました。カトワの治療センターは、患者さんにより良い対応できるように設計しました。窓が大きいので、患者さんは、治療にあたる医師や看護師の顔が見えます。ご家族もお見舞いをしやすくなっているんです。治療センターではなかなか難しい、人との触れ合いができるようになっています」 

2019年1月にオープンしたカトワにあるエボラ治療センター。© Lisa Veran/MSF2019年1月にオープンしたカトワにあるエボラ治療センター。© Lisa Veran/MSF

地域でのエボラ拡大を抑える対策の周知も、大きな課題の1つだ。援助活動を担う関係者が、その対策にも対応している。ブテンボとベニでは、選挙延期後の緊張の高まりから、住民はエボラ対策をすることが難しくなった。地域との接触も以前と比べて容易ではない。安全な埋葬や、診療所・家庭内での除染といったエボラ感染予防対策なども、受け入れられにくい状況となっている。

「エボラ対応には、治療センターだけでは不十分です。地域と連携し、住民らとの信頼を築き上げることが流行抑止の鍵となります」とMSF人類学者ロベルト・ライトは訴える。

「住民の皆さんに、流行対策へ積極的に関わってもらえるよう、ますます努力しなければいけません。その一環として、エボラにとどまらないニーズにも対応します。例えば昨年末、暴力に備えて、地元診療所に外傷キットを配布しました。MSFの1次受入施設では、エボラ患者を見極め、治療先を紹介するためだけでなく、その他の健康問題を適切にケアします。活動に先立ち、地域住民を訪ねていくことも、相互理解を深め、よりよい協力関係を築くには大切なことです」

これまでの経過についてはこちら。 

活動概況

MSFはエボラ流行が宣言された2018年8月1日以来、北キブ州および隣のイトゥリ州で対応を続けてきた。現在もブテンボとカトワの2市でエボラ治療センターを設置している他、ベニとコマンダで1次受入施設、ブニアで隔離施設を運営している。さらに、最前線で治療活動にあたる医療従事者らにワクチン接種をし、流行する地域の住民らを対象とした感染予防活動などに取り組んでいる。 

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