妊娠中の女性も、子供も高齢者も…女性の誰もがレイプの標的に…

2018年12月26日掲載

レイプ被害にあった28歳の女性。© MSF/Carl Theunisレイプ被害にあった28歳の女性。© MSF/Carl Theunis

「武力衝突があると奴らは必ず来て、女性をレイプするんです。妊娠中の女性も子どもも高齢の女性でもお構いなしです」

コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)内陸部のマニエマ州サランビア。近くにあるナモヤには、金の鉱床があり、長らく現地住民の主な収入源になってきた。だが2012年、金鉱床と土地の利用を巡って始まった紛争をきっかけに、住民はそうした恩恵も受けられなくなった。事態が解決しない状況が続き、武装兵士だけがじわじわと増えていった。略奪、放火など、町は荒廃し、武装勢力が対立する度に、大勢の人が暴力に遭った。多くの女性たちも紛争の犠牲になってきた。紛争で命が脅かされるという意味ではない。その多くが、レイプ被害の犠牲者だ。

国境なき医師団(MSF)は2018年4月以降、現地でレイプ被害者に対する援助活動を始めた。来院する性暴力被害者からの状況など聞くなどして、対応を強化している。
 

レイプ被害により、エイズに感染した10代の女性。© MSF/Carl Theunisレイプ被害により、エイズに感染した10代の女性。© MSF/Carl Theunis

7人の子どもを持つある女性は、サランビア出身の36歳。MSFが治療したレイプ被害者の1人だ。「畑へ行ったら、3人の武装した男たちがやって来て、代わる代わる私をレイプしたんです」
あまりにも悲惨な体験だが、彼女のような話は珍しくないのが現実だ。

4月以来、国境なき医師団(MSF)が、この町で治療した性暴力被害者は150人以上。だが、この地域のカトリック教会のオーガスチン神父(Father Augustin)によると、この数字は全体のごく一部に過ぎず、ほとんどは公にされていないという。

「MSFが来るまでに、報告された性暴力は、みな私のところに来たものだけですから、本当の数はこんなものではないと確信しています。多くの女性や夫婦は、仲間はずれにされるのを恐れて事件について口に出したがりません」
 

被害者を支える

性暴力被害者を援助してきたママ・Hさん。© MSF/Carl Theunis性暴力被害者を援助してきたママ・Hさん。© MSF/Carl Theunis

ママ・Hさんは、性暴力の被害者を助けてきた一人だ。こうした役割は地域に欠かせないが、その数は少ない。被害者を迎え入れ、相談に乗り、それぞれの状況に応じて適切な支援機関に紹介している。彼女によると、被害者数は、地域に来た武装兵士の数と密に関係しているという。「武力衝突があると奴らは必ず来て、女性をレイプするんです。妊娠中の女性も子どもも高齢の女性でもお構いなしです」

被害者の苦しみは、レイプされた後も続く。周囲から偏見を持たれ、地域や家族から締め出されてしまうのだ。病気、望まない妊娠…。被害者は、数え切れないほどの心の傷を負う。

先ほどの7人の子どもを持つ女性。こう打ち明ける。

「夫は私を捨て、私のことはもう聞きたくないと話しています。いま、私はママ・Hさんと7人の子どもと一緒に暮らしています。環境を変えたいので、故郷にいる両親のもとで暮らそうと考えています。帰ったら理由を聞かれるでしょうね。あまりいろいろ聞かれるくらいなら、死んだほうがまし。子どもたちにとってもその方がいい。だっていじめられないですむから。今いちばんつらいのは、周囲の人びとからの拒絶です」
 

多くの女性が 来る日も来る日もレイプ被害に

レイプ被害にあった43歳の女性。© MSF/Carl Theunisレイプ被害にあった43歳の女性。© MSF/Carl Theunis

MSFは2018年、この場所での援助活動を開始。サランビラ総合拠点病院と周辺の3ヵ所の診療所を援助し、性暴力の被害者への医療・心理ケアを活動の軸としている。

だが、MSFの活動後も、現地の女性に対する暴力は絶えない。畑や家など、どこにいても、何歳であっても、社会的地位や体調に関わりなく、女性たちは来る日も来る日も同じ残虐行為にさらされている。

現地の医療施設の機能は不十分で、定期的に略奪されているため、資金や人材も足りていない。レイプ被害者の誰もが、安全な場所で保護された上で、社会経済的な支援、地域の理解を必要としている。だが、MSF以外の人道援助団体や機関はなかなか援助に入らない。この地域は、繰り返し危険な状況におかれ、リスクが高いからだ。
 

広がれ「ケアの輪」

国境なき医師団(MSF)のインタビューに応じてくれた女性たち。© MSF/Carl Theunis国境なき医師団(MSF)のインタビューに応じてくれた女性たち。© MSF/Carl Theunis

一方で、レイプ被害者に対する援助の輪も広がっている。「ケアの輪」とも呼ばれている。

緊急対応チームのビクトリーヌ医師は、「必要な情報は地域の連絡網であちこちの村に伝わり、住民に届くようになっています。被害者を見つけたら連絡調整役の担当者に引き合わせて、一緒に病院か最寄りの医療機関に連れていってもらいます。そこで医師の診察を受けてから治療やお薬について決めます。一方、心理療法士は心の傷の重症度を判定し、病院か自宅で被害者を経過観察します。可能な人の場合は病院でします」という。

またMSFは、地域の男性向けのプログラムも立ち上げた。「男性の学校」と呼ばれ、地域にいる全ての男性と夫に、性暴力被害について知ってもらうことを目指している。被害などの実態を知ってもらい、被害に遭った妻や娘たちを心の面から支えてもらおうことがねらいだ。 

活動概況

MSFはコンゴ民主共和国で1981年から活動。現在は国内26州のうち20州で活動し、紛争と暴力による被害者、国内避難民、エボラ、コレラ、はしか、HIV/エイズなどの感染症患者に医療を提供している。南キブ州では2007年から活動し、緊急対応チームは州内全域で流行・自然災害・紛争に対応している。マニエマ州サランビラでは、2018年4月から活動。避難者と現地住民に無償の医療を提供している。診療内容は暴力、内科・外科の急患、栄養失調、心理ケア、リプロダクティブ・ヘルスなどを展開している。 

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