はしか流行と新型コロナウイルスという2つの脅威に直面するコンゴ民主共和国の苦悩

2020年05月22日

世界最大級のはしか流行が続くコンゴ民主共和国(以下、コンゴ)に、新型コロナウイルス感染症という新たな脅威が忍び寄っている。2019年1月以降、同国内では、5歳未満児を中心に、6600人以上がはしかで死亡した。2019年末、コンゴ当局は臨時の集団予防接種を実施して流行抑制を図ったが、期待されたほどの効果はなく、複数の地域では症例数が増加している。2020年に入ってからも、感染者5万人、死者数600人以上を記録している。

はしかに感染してMSF医療施設に来た子ども © MSF/Caroline Thirion
はしかに感染してMSF医療施設に来た子ども © MSF/Caroline Thirion

コンゴ北部に位置するモンガラ州ボソマンジ保健地区は、今回のはしか流行が深刻となっている地域の1つだ。今年はじめに、何百もの症例が報告されたことを受けて、国境なき医師団(MSF)は、2月に緊急対応チームを派遣して、新たな予防接種活動の立ち上げと、地元医療従事者の支援に入った。この緊急対応は6週間にわたり、ボソマンジ病院で1000人以上を治療するほか、同保健地区の子ども4万4000人にワクチンを接種している。

はしか流行への対策は急務だ。ワクチンも輸送しないといけない。専門家チームも招集すべきだし、集団予防接種にも着手すべきだ。一方で、この国では、エボラ出血熱への対応も必要とされている。それに加えて、新型コロナウイルス感染症の予防策も取らなければならなくなった。こうした状況が、はしか対策を進める上での足かせとなっている。

新型コロナウイルス問題への取り組みが、他の医療問題を収束させるわけではない。はしか、マラリア、栄養失調などの深刻な病気との闘いは、これからも続く。MSFは、コンゴにおいても新型コロナウイルス対応にあたっている。しかし、その問題だけに拘泥すれば、他のリスクを拡大させることになる。公衆衛生上の問題があるからといって、ワクチン接種、栄養補助、マラリア予防などの活動が止まってしまうと、他のリスクを誘発して、状況を悪化させる恐れがある。

2020年、MSFは、高ウエレ州、コンゴ中央州、北ウバンギ州、南キブ州など、コンゴ全土にわたって複数の地域にチームを派遣した。今年だけで、26万人以上の子どもにはしかワクチンを接種し、1万7500人のはしか患者を治療してきた。2019年には、81万6000人の子どもに予防接種を施し、5万人以上の人びとを治療した。 

はしかが重症化しているドド・マルバンザちゃん(3歳)。症状が現れた初期段階では伝統療法に頼っていたが、回復に向かわないため、母親がバイクに我が子を乗せて、65キロ先にあるボソ・マンジ総合基幹病院に連れて来た。今年2月に現地派遣されたMSF緊急対応チームの手当てを受けているところ。© MSF/Caroline Thirion
はしかが重症化しているドド・マルバンザちゃん(3歳)。症状が現れた初期段階では伝統療法に頼っていたが、回復に向かわないため、母親がバイクに我が子を乗せて、65キロ先にあるボソ・マンジ総合基幹病院に連れて来た。今年2月に現地派遣されたMSF緊急対応チームの手当てを受けているところ。© MSF/Caroline Thirion
そのドドちゃんを抱く母親のワネア・マベレさん(40歳)。トドちゃんは、目への感染が進行しており、視力の回復は困難と見られている。© MSF/Caroline Thirion
そのドドちゃんを抱く母親のワネア・マベレさん(40歳)。トドちゃんは、目への感染が進行しており、視力の回復は困難と見られている。© MSF/Caroline Thirion
MSFチームによる治療を受けているドド・マムバンザちゃん © MSF/Caroline Thirion
MSFチームによる治療を受けているドド・マムバンザちゃん © MSF/Caroline Thirion
MSFがはしか患者の治療を支援するモンガラ州ボソ・マンジ総合基幹病院に入院中のたングバンデマちゃん(3歳)。口の周りに見える皮膚病変、耳の膿、栄養失調の兆候などは、いずれもはしか感染によるものだ。© MSF/Caroline Thirion
MSFがはしか患者の治療を支援するモンガラ州ボソ・マンジ総合基幹病院に入院中のたングバンデマちゃん(3歳)。口の周りに見える皮膚病変、耳の膿、栄養失調の兆候などは、いずれもはしか感染によるものだ。© MSF/Caroline Thirion
はしか流行被害が深刻となっているボソ・マンジ保健地区。バイクを使って、交通の便の悪い同地区にはしかワクチンを届けるMSFスタッフたち。© MSF/Caroline Thirion
はしか流行被害が深刻となっているボソ・マンジ保健地区。バイクを使って、交通の便の悪い同地区にはしかワクチンを届けるMSFスタッフたち。© MSF/Caroline Thirion
マカオ村のマダ・マドさん(35歳)とオノレ・オテテさん(39歳)。7人いる子どもの1人がはしかで亡くなり埋葬された。残る6人も、2019年末に保健省によるワクチン接種を受けたものの、結局、全員が感染した。© MSF/Caroline Thirion
マカオ村のマダ・マドさん(35歳)とオノレ・オテテさん(39歳)。7人いる子どもの1人がはしかで亡くなり埋葬された。残る6人も、2019年末に保健省によるワクチン接種を受けたものの、結局、全員が感染した。© MSF/Caroline Thirion
ボソ・マンジ保健地区マカオ村におけるはしか啓発集会で温かい歓迎を受けるMSF健康教育チーム。この数日後には、保健省と合同で集団予防接種を実施した。© MSF/Caroline Thirion
ボソ・マンジ保健地区マカオ村におけるはしか啓発集会で温かい歓迎を受けるMSF健康教育チーム。この数日後には、保健省と合同で集団予防接種を実施した。© MSF/Caroline Thirion
ムビサ・エメ・コセンゲちゃん(3歳)は、はしかに感染した影響で、熱、発疹、口内炎があり、はしかのせいで結核にかかり、栄養失調状態にある。ボソ・マンジ保健地区の総合基幹病院にて、MSFチームによる治療を受けて10日目の様子。間もなく退院し、家族の暮らす55キロメートル先の村に帰れる見込みだ。 © MSF/Caroline Thirion
ムビサ・エメ・コセンゲちゃん(3歳)は、はしかに感染した影響で、熱、発疹、口内炎があり、はしかのせいで結核にかかり、栄養失調状態にある。ボソ・マンジ保健地区の総合基幹病院にて、MSFチームによる治療を受けて10日目の様子。間もなく退院し、家族の暮らす55キロメートル先の村に帰れる見込みだ。 © MSF/Caroline Thirion
MSFが支援する総合基幹病院にはしか重症者が移送されてきた © MSF/Caroline Thirion
MSFが支援する総合基幹病院にはしか重症者が移送されてきた © MSF/Caroline Thirion
集団予防接種と治療支援にあたるMSF現地スタッフ © MSF/Caroline Thirion
集団予防接種と治療支援にあたるMSF現地スタッフ © MSF/Caroline Thirion
はしかワクチンと合わせて、子どもたちには、ビタミンAと寄生虫治療薬メベンダゾールが投与された © MSF/Caroline Thirion
はしかワクチンと合わせて、子どもたちには、ビタミンAと寄生虫治療薬メベンダゾールが投与された © MSF/Caroline Thirion
子どもにワクチン接種を受けさせに来たモンガラ州ボソ・マンジ保健地区リカサ村の村民たち © MSF/Caroline Thirion
子どもにワクチン接種を受けさせに来たモンガラ州ボソ・マンジ保健地区リカサ村の村民たち © MSF/Caroline Thirion

この記事のタグ

関連記事

活動ニュースを選ぶ