コレラが流行!汚染された水や不衛生な環境なども原因に 予防に向けた取り組み

2019年09月05日

カメルーンでは、北部地域一帯が、コレラの集団発生に直面している。2019年5月以降、コレラ患者が増加。国境なき医師団(MSF)は、流行拡大を防ぐために活動を続けている。2018年に、チャド湖畔を見舞ったような深刻なピークの再来を避けるべく活動中だ。

コレラは感染力の強い深刻な病気だ。時に重い下痢とおう吐を引き起こす。適切な治療をしなければ重い脱水症状によって、短時間で危篤状態に陥ることもある。チャド湖畔地域の風土病とも言われている。

感染には、感染者の排泄物やおう吐物などへの接触や、トイレ後に手洗いや、汚染された食べ物や水を口にするなどの衛生習慣も影響する。雨期には、洪水によって伝染の危険が高まる。チャド湖畔では貧困と不安定な治安などにより、住民が避難を強いられる場合もあり、コレラの感染拡大に拍車をかけている。清潔な飲み水や、適切な衛生設備もままならない中、大勢の人が不安定な状況の中に置かれている。 

集団感染 4万人以上が感染

カメルーン北部の町で。MSFの水・衛生専門家アルフォンス・エロゴが地元住民から話を聞いている © Hadidjatou Bidisse/ MSFカメルーン北部の町で。MSFの水・衛生専門家アルフォンス・エロゴが地元住民から話を聞いている © Hadidjatou Bidisse/ MSF

「ピトアの町では最近、短い期間に十数件のコレラ患者の報告がありました。うち3件で患者が亡くなっています。現地でコレラが広がっています」と懸念を示すのは、MSFの疫学専門家ジャスティン・エヨングだ。

2019年は5月以降、北部州の州都ガルア、近隣の町ピトアにとどまらず、さらに北の極北州カエレ保健地区内の複数の村でもコレラ患者が増えている。2018年はチャド湖周辺の国々が、複数回のコレラ集団発生に見舞われた。4万5000人以上が感染し、900人以上が亡くなった。

対策に乗り出したMSFは、カメルーン、ナイジェリア、ニジェールで、各国保健担当局を支援し、3万人以上を治療。55万人以上にワクチン接種を提供した。今回の流行が最悪な事態とならないようにするため、MSFは再び現地入りしている。「コレラは、感染力の強い深刻な病気。治療しなければ、24時間以内に命を落とすこともあり得ます」と、MSF副医療コーディネーターのジャン・パトリック・ワンバ医師は話す。 

疫学調査により原因を特定

コレラ拡大の根源を突き止めるため、ピトア保健地区を訪れた健康教育担当者のハディジャトゥ・ビディスと、水・衛生専門家のアルフォンス・エロゴ © Juliette Müller/ MSF

コレラ拡大の根源を突き止めるため、ピトア保健地区を訪れた健康教育担当者のハディジャトゥ・ビディスと、水・衛生専門家のアルフォンス・エロゴ © Juliette Müller/ MSF

MSFの担当チームはピトアに到着すると、水・衛生専門家のアルフォンス・エロゴと健康教育担当スタッフのハディジャトゥ・ビディスが、住民に聞き取り調査を実施。その結果、汚染の可能性のある水源を突き止めた。 

MSF疫学専門家のエヨングは、「患者さんの約半数が安全ではない可能性がある水源を利用していることがわかりました。衣類や食器を洗うのに使ったり、汚染されているトイレの近くに井戸を掘ったりしていました」と話す。

不十分な予防接種

北カメルーン地域のピトーア健康地区の近隣の井戸を管理する様子 © Juliette Muller/MSF北カメルーン地域のピトーア健康地区の近隣の井戸を管理する様子 © Juliette Muller/MSF

「コレラについては、ワクチン接種などの具体的な予防策が優先されます。患者の治療にも備えなければなりません。コレラはすぐに命の危険が伴うことがあるからです。集団発生の初期の患者さんたちからの感染拡大を抑えるため、予防も大切です」とワンバ医師。

8月上旬には、ガルア一帯で地元保健当局が集団予防接種を実施した。「流行拡大を抑える一助にはなるでしょうが、全ての流行地域でワクチン接種ができたわけではありません。典型的なのがカエレ保健地区で、2019年6月末以降繰り返し患者が報告されています」


MSFはカエレと同じくピトアでも、患者とその家族や介助者、医療スタッフ、一般市民にコレラについての知識を伝えるために活動中だ。感染が懸念される地域では、食事前やトイレを使った後の手洗い、飲料水の浄化のほか、野菜などを洗ってから食べること、適切に調理した食事を採ることなど、予防方法を住民同士で共有できるよう、定期的に情報提供している。他の人道援助従事者と共に大規模な健康教育活動を行う計画もある。エロゴは、「一部の水源では除染も検討しています。長期的には、清潔な飲み水が手に入る場所を広く知ってもらえるよう、人びとに呼び掛けていくつもりです」と話している。

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