コレラと新型コロナウイルスの二重流行の危険が迫るケニアの実情

2020年05月27日掲載

ケニアの首都ナイロビの一角にある貧困地域 © Paul Odongo/MSFケニアの首都ナイロビの一角にある貧困地域 © Paul Odongo/MSF

5月上旬、ケニアでは、豪雨に伴って洪水が起こり、多くの人びとが自宅からの退避を余儀なくされた。そのような状況下、ケニア北東部のマーサビット郡にあるテレスゲイという町は、コレラ流行対策にあたっている。

コレラの最初の症例は、2019年12月、ケニア国境付近にあるエチオピアの村シリチョで報告された。シリチョはテレスゲイの北6キロメートルの地点にある。その後、コレラ流行拡大を受けて、数千人が治療を必要とする事態に発展した。国境を超えた感染防止策を強化していかないと、ケニア側だけで対応しても効果が出にくい状況だ。

現地でMSF活動責任者を務めるエディ・フェルディナンド・アットは語る。「毎日のように、人びとは国境を越えてきます。止められません。国境監視体制を強化すれば、公衆衛生当局のコレラ対応もスムーズに行くかもしれませんが」

MSFはコレラ治療ユニットを運営中

テレスゲイにてMSFが運営するコレラ治療ユニット © MSFテレスゲイにてMSFが運営するコレラ治療ユニット © MSF

アイガーさんは、8歳の息子ナタールくんを背負って、ワタリからテレスゲイまで約1時間歩き、MSFが設立したコレラ治療ユニット(CTU)を訪れた。ナタールくんの急性下痢と嘔吐は数時間も続いており、救急治療が必要だった。

5月初旬、MSFは、テレスゲイ診療所で郡保健当局の支援を開始して、10床のCTUを設置した。また、テレスゲイから10km離れたイルレレ診療所にも6床を追加して、既存の4床と合わせて10床まで増床した。ケニア政府がコレラ流行宣言を発して以来、274の症例が報告された。MSFチームがイルレレからナイロビに戻った5月17日の時点で、症例数は大幅に減少した。MSFが受け入れて治療した人数は39人で、このうち31人が重体患者だった。

MSF看護師のパシフィック・オリアトは語る。「ある患者さんが印象に残っています。この少女はCTUに搬送されてきましたが、その後、元気を取り戻して退院しました。しかし、翌日、少女は救急搬送で戻ってきました。危篤状態に陥っていたのです。さらなる治療は成功して、再び少女は退院しました。ところが、今度は、彼女の弟さんがさらに悪い状態で父親によって連れてこられたのです。姉も弟も、コレラの陽性反応が出ました。コレラは治療可能な病気ですが、実際にこうした悲惨な事態を目の当たりにすると、胸が張り裂ける思いです」

「マーサビット郡は、ケニア最大の郡で、約71000キロ平方メートルの広大な面積を有します。東アフリカ唯一の砂漠であるチャルビ砂漠もあるところです。砂漠一帯は、エチオピアとの国境沿いに位置する僻地で孤立しています。この乾燥地域に30万人以上の人びとが住んでおり、家畜の飼育や、天候変化に応じた断続的な作物栽培に依存して生計を立てています。マーサビットの人びとは、気候変動の影響を肌身で感じています。干ばつが続き、食料確保も難しくなっており、住民の間で諍いが絶えません」 

コレラ流行を引き起こすケニアの生活環境

MSFの設置した手洗い場にて手を洗う地元住民 © Paul Odongo/MSFMSFの設置した手洗い場にて手を洗う地元住民 © Paul Odongo/MSF

MSFにおける給排水・衛生活動の専門家イブラヒル・エル・ラハムは語る。「ここ数年、マーサビット郡では、1年近く雨が降らないこともよくあります。地元住民は、トゥルカナ湖支流の土手を掘って、そこから水を汲まざるを得なくなりました。しかし、土手は住民や動物の排泄にも使われている場所です。その結果、汚染された水の使用も増えたと思われます。牧畜、食糧強奪、水不足、家畜の群れによる移動が絶えない遊牧民にとって、トイレ建設はそれほど重要なものではありません。こうした生活環境では、コレラのような水因性疾患になりやすいのです」

今回のコレラ流行が起きたケニアでは、すでに700人以上の新型コロナウイルス感染者が存在する。マーサビット郡の隣にあるワジール郡でも1人の患者が報告された。経済活動が活発であるため、郡と郡との間の通行量は多い。

現地のMSF活動責任者アットは語る。「ケニアの医療体制は脆弱であり、人員も防護具も不足しています。コレラだけではなく他の病気も流行するようになれば、壊滅的な影響が発生する可能性もあります」 

関連情報