骨折患者が押し寄せるMSF病院、娘もまた歩けるようになった!

2019年10月18日

MSF病院で治療を受けた患者 © Evrard NgendakumanaMSF病院で治療を受けた患者 © Evrard Ngendakumana

8月のよく晴れたある朝。ブルンジ最大の都市ブジュンブラにあるブウィザ=ジャベ病院に、ブウィザ地区出身の大工の男性(20歳)がやってきた。男性は、とがった石によって、額にけがをしていた。現地の看護師が応急処置をする様子を、国境なき医師団(MSF)の看護チームリーダー、アラン・ムラヴィアが見守った。

「男性に当たったのは、猛スピードで走っていた車に跳ね飛ばされた石でした。応急処置はしましたが、まだ傷の内外を縫う必要があります。広い範囲でけがをしているので、ラルシュ・ドゥ・キゴベに移送予定です」 

交通事故被害者が急増 1カ月に2000人の患者

© Evrard Ngendakumana© Evrard Ngendakumana

ラルシュ・ドゥ・キゴベはMSFが2015年に、ブルンジを震撼させた政治危機の時に設置した病院だ。当初は、危機による暴力でけがをした人びとの治療を目的としていた。だが翌2016年、暴力関連の症例減少を受けて、MSFは事故でけがをした人も治療することにした。その結果、患者数は月に200人から2000人近くにまで跳ね上がった。現在では、交通事故の被害者がこの診療所で治療を受ける人の大半を占めるようになった。やけどと性暴力の被害者も来院している。

「国中から患者が来院しています」とMSFのプロジェクト・コーディネーター、ファンサン・ンクランクスは話す。「現在、患者の90%は事故、それも交通事故に遭った人です。昨年は2万2400件の救急診療と4000件余りの手術を行いました。──平均すると1日と11件弱扱ったことになります」。

ケアを必要としている患者が増えているため、MSFは2019年6月に複合的な外科処置の必要なけがに注力することを決めた。複合的な外科処置を必要としない外傷患者は、近隣に4カ所ある病院と診療所に分けて搬送している。病院はカメンジュとブウィザ=ジャベ、診療所はブテレレIIとンガガラだ。MSFは患者の治療費を負担すると同時に、医療スタッフに対しても研修などの形でサポートしている。 

魚を売りに行こうとしていたら車にひかれた

入院中の漁師のアブドゥル・カリムさん © Evrard Ngendakumana入院中の漁師のアブドゥル・カリムさん © Evrard Ngendakumana

漁師のアブドゥル・カリムさんは、道路を横断している途中、車が衝突する交通事故に遭った。ラルシュ・ドゥ・キゴベに搬送されたアブドゥルさんは、腕の手術を受けた。2週間後、アブドゥルさんは病棟の一つで健康を取り戻しつつある。

「ラルシュで目が覚めたあの日、自分がどこにいるのか、どうやって来たのかも分かりませんでした」とアブドゥル・カリムさん。

「それから記憶が断片的でしたが、よみがえってきました。道を渡って魚を売りに行こうとしていた時、一台の車が来たことを思い出しました」。事故の記憶はあいまいだが、アブドゥル・カリムさんは、MSFからの無償の治療がなければ、折れた腕の手術は受けられなかったことは、よく理解している。「ここに連れてきてもらえてラッキーでした」とアブドゥルさん。

「医師たちは、お金を支払える患者と同じように、私を手術し、いろいろ面倒をみてくれました。私はただの漁師です。自分ではとても、これだけ治療してもらえるだけのお金を工面できませんでした」 

患者のリハビリに立ち会うMSFの理学療法士 © Evrard Ngendakumana
患者のリハビリに立ち会うMSFの理学療法士 © Evrard Ngendakumana

ラルシュ・ドゥ・キゴベにある68床のベッドは常に埋まっていて、ここに勤務する240人のブルンジ人スタッフと12人の外国人スタッフはいつも忙しい。緊急手術と整形外科手術に加えて、理学療法と心理社会面の支援によって、MSFは心と体の両面から、患者が回復できるよう手助けをしている。患者たちが退院する頃には、元の生活にも戻れるようにするためだ。

診療所の廊下では、笑い声や拍手が響き渡る。「リハビリ室」では、アミナちゃん(7歳)が初めてのリハビリを受けている。片方の足を複数カ所も骨折したため、これまで何カ月もギプスをはめて過ごしてきた。アミナちゃんの父親も目を細め、娘がもう一度歩く練習する姿を見て喜んでいる。 

「MSFの治療は無償」人びとに伝える

MSFの健康教育担当スタッフが大勢の人たちの前でグループ講座を開く © Evrard NgendakumanaMSFの健康教育担当スタッフが大勢の人たちの前でグループ講座を開く © Evrard Ngendakumana

ブルンジ最大の都市であるブジュンブラのブウィザ地区ではMSFの健康教育担当スタッフ、ニコル・ニャヨヤンクンゼがメガホンを手に、大勢の人たちの前に立っている。ここに住んで働いている人の多くは大工で──仕事に関連するけがが多い。ニコルはグループ講座を開き、けがをしたときはどうしたらよいか、またどこへ行けば無償で治療してもらえるか人びとに教えているところだ。

「これは大きなメリットです。なぜならば、費用がネックになって、治療を受けられないことがあるからです」とニコル。

「MSFが運営・サポートしている医療機関では、患者が治療を負担する必要がありません」

そう、ニコルは呼びかけ続ける。 

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