“死の組み合わせ”で消えゆく命 栄養失調の子どもたちに、はしかが及ぼす深刻なリスク
2022年03月22日
眠れない夜
合併症に対処するため、タクベーラちゃんには酸素、抗菌薬、ブドウ糖が投与されている。この男の子は、MSFが2月にヘルマンド州とヘラート州のプロジェクトで診た1400人以上のはしかの子どものうちの1人だ。その半数は何らかの合併症にかかっていたため、入院が必要だった。
ベッドが足りない
ブースト病院では、はしかの患者数が急激に増えている。 2021年12月から2022年2月末までに、毎週平均して150人以上のはしかの子どもが来院した。その4割は肺炎などの重い合併症があり、入院して治療を受けている。
ヘラート州では、MSFは2月に800人弱のはしか患者を診察した。このプロジェクトでは、2022年の始めに結核やはしかなどの感染症患者用に隔離ベッドを8床用意したが、あっという間にはしかの患者でいっぱいになった。今後、改修工事により60床が完成する予定で、重症患者や回復期の患者の入院治療が可能になるが、これも充分とは言えない。ヘラートの病院を訪れたはしか患者の60%は入院が必要で、重症患者の半数は栄養失調になっていた。
“死を招く組み合わせ” はしかと栄養失調
既に栄養危機に直面しているアフガニスタンでは、状況はさらに深刻だ。ヘルマンド州とヘラート州にあるMSFの栄養治療センターでは、治療を受ける子どもの数がベッドの総数を上回り、数カ月前から一つのベッドに数人の子どもを寝かせている。また、1月から2月末までの2カ月間に、両プロジェクト全体で約800人の子どもが重度の急性栄養失調で入院した。
MSFのブースト病院臨床チームリーダーであるファザル・ハイ・ジアルマルはこう語る。

どこへ行けば治療を受けられるのか
はしかは予防接種で防げる病気だが、アフガニスタンでは接種率が低く、患者数が急増する一因となっている。また、複数の家族が一つ屋根の下で暮らしていることもあり、病気が急速にまん延する条件がそろっている。
はしかに感染しても自然に治る子もいる一方で、合併症のために薬を必要とする子もいる。アフガニスタンでは、薬や物資が不足している医療施設が多いため、保護者の多くは薬局で買わざるを得ない状況だ。
ブースト病院のはしか検査室で息子を待つハン・ビビさんは、孫に囲まれて次のように説明する。
「12人いる孫は全員病気になりましたが、そのうち3人が一番ひどいです。みんな、ぼんやりした表情を浮かべて気がふさいだ様子です。3人ともはしかにかかっています。
村で薬を買いましたが、子どもたちの状態は良くならないので、ここに来ました。長女は胸が痛いと言って泣き、吐いていました。水はたくさん飲んでいますが、それ以外は何一つ受けつけません」

予防接種の定着が急務
ブースト病院でタクベーラちゃんに付き添っていたザイナブさんは、残念ながら息子と一緒に帰宅することはかなわず、荷物をまとめて、残された子どものために一人で故郷に帰って行った。小児集中治療室では、タクベーラちゃんが寝かされていたベッドに医師らが集まり、いまも新しい患者の命を救おうとしている。
