国境なき医師団日本、日本政府に署名10万筆を提出──イスラエル・パレスチナでの「無差別攻撃の即時停止」と「医療の保護」、「人道性の回復」を

2023年11月09日
署名を堀井外務副大臣に提出した Ⓒ MSF
署名を堀井外務副大臣に提出した Ⓒ MSF


国境なき医師団(MSF)日本は11月8日、イスラエル・パレスチナでの「無差別攻撃の即時停止」、「医療の保護」、「人道性の回復」の3点を求めるオンライン署名10万307筆を外務省に提出しました。MSF日本がSNSなどで呼びかけ、約2週間で10万人の思いが集まった署名です。

ガザ地区における人道状況の改善を

10月7日から続くイスラエルとパレスチナでの衝突の激化により、多くの市民が犠牲となり、患者や医療従事者、および医療施設が繰り返し攻撃にさらされています。MSF日本は事態の早期鎮静化およびガザ地区の人道状況の改善の必要性を広く訴え、日本政府に届けるため、10月24日から11月7日の間、「無差別攻撃の即時停止」、「医療の保護」、「人道性の回復」を求めるオンライン署名を呼びかけました。

集まった署名を11月8日、日本政府に提出しました。

約2週間で10万筆を超える署名が集まった Ⓒ MSF
約2週間で10万筆を超える署名が集まった Ⓒ MSF
日本政府は今年、G7の議長国であり、国連安全保障理事会で非常任理事国を務めています。MSF日本は今回のオンライン署名で、イスラエルとパレスチナ・ガザ地区での衝突、人道状況の悪化に対し、日本政府が引き続き尽力されることを、強く希望するメッセージを打ち出しました。


外務省を訪問したMSF日本事務局長の村田慎二郎は、こうした点を堀井巌・外務副大臣に改めて伝え、署名を手渡しました。

堀井副大臣は「ガザ地区の状況は深刻化の一途をたどっており、一般市民が被害に遭っていることに大変心を痛めている」と述べ、11月2日から5日まで実施された上川外務大臣のイスラエル、パレスチナ及びヨルダン訪問や、11月7日から8日にかけて東京で開催されたG7外相会合について言及された上で、日本政府として引き続き、刻一刻と動く現地情勢を踏まえ、関係国・国際機関等との間で意思疎通を行い、事態の早期沈静化や、人道状況の改善等に向けた外交努力を、粘り強く積極的に続けていくと語られました。

村田(左)が提出した署名を手に、意見交換する堀井副大臣 Ⓒ MSF
村田(左)が提出した署名を手に、意見交換する堀井副大臣 Ⓒ MSF


事務局長の村田は、ガザでは燃料や物資の枯渇から医療体制がほぼ崩壊しており、また病院や救急車が爆撃の被害に遭うなど、医療への攻撃も起きている状況を説明した上で、今回の署名について「期間を2週間のみに設定したのは、一刻も早い状況改善につなげていきたいという思いがあったからです」と説明しました。続けて、「この短期間に10万人以上のご賛同を得ることができたのは、日本でも多くの人が現在の状況に心を痛めており、状況改善を望んでいることにほかなりません。一刻も早いガザの人道状況改善のため、日本政府に引き続き、国際社会に働きかけていただきたい」と、改めて要請しました。

国境なき医師団日本・事務局長、村田慎二郎からのメッセージ


この度は、イスラエル・パレスチナでの「無差別攻撃の即時停止」、「医療の保護」、「人道性の回復」を求めるオンライン署名に数多くの方々にご賛同いただき、まことにありがとうございました。
 
今回のオンライン署名活動は10月24日から約2週間という短い期間での取り組みとなりましたが、多くの皆様にご協力いただき、10万307筆の署名を集め、日本政府に提出いたしました。
 
ガザ地区では国境なき医師団のスタッフ約300人が活動してきました。膨大な援助のニーズがあるにもかかわらず、広範囲に及ぶ爆撃が続き、安全の確保は不可能で、人道援助物資の搬入も不十分なため、私たちはほとんどの活動を中断せざるを得ない状況になっています。
 
医療・人道援助団体として、国境なき医師団はもっと多くのことを行いたい──。しかし今、それができなくなっているのです。
 
11月6日には、MSFの検査技師としてガザで活動してきた私たちのスタッフの1人が、家族とともに命を落としました。 シャティ難民キャンプの自宅で爆撃を受け、建物の倒壊により数十人が死亡したと報じられています。
 
私たちはガザの同僚たちを心配し続けています。彼らの多くは、今もガザ各地の病院で救命医療に取り組んでいます。 
 
医療スタッフへの攻撃は、それ自体が非難されるべきものですが、それに加えて紛争地での医療への攻撃というのは、その医療施設を命綱にしている現地の何千人、何万人という人たちから医療へのアクセスを奪う行為です。
 
それにより、助かるはずの命、救えるはずの命が救えなくなるという状況を、シリアやイエメンその他の場所で、私たちは目撃してきました。今、ガザで同じようなことが起きていることに、強い憤りを感じています。
 
無差別な爆撃を受けているガザには、安全な場所はありません。保健省によると、すでに4000人の子どもを含む1万人以上が亡くなりました。 世界の指導者らが意味のある行動を取らない間に、ガザの至る所で多くの人びとが、家族や家、そして命を失い続けています。 
 
私たちは改めて訴えます。ガザでこれ以上の犠牲者を出すことを避け、必要な援助を行えるようにすべきです。
 
状況が一刻も早く改善されるよう、国境なき医師団は引き続き、声を上げていきます。どうか今後も皆さまのお力を貸してください。

命を救う活動を、どうぞご支援ください。

寄付をする

※国境なき医師団日本への寄付は税制優遇措置(寄付金控除)の対象となります。  

この記事のタグ

関連記事

活動ニュースを選ぶ