コロンビア:"三重苦の犠牲者"内戦下で続く暴力、放置と偏見 求められる心理ケアの充実
2010年07月30日40年以上にわたる内戦が続くコロンビアで暮らす人びとは、暴力による直接的な被害と社会的な偏見、政府機関からの放置という三重苦を余儀なくされている。国境なき医師団(MSF)は、2010年7月に発表した調査報告書「三重苦の犠牲者」で、こうした問題が同国南部にあるカケタ県民の精神面での健康状態に深刻な影響を及ぼしている事実を指摘し、継続的な心理ケアの必要性を訴えている。
MSFは、2005年3月から2009年9月の間、カケタ県で提供している心理ケアプログラムに5064人の患者を受け入れた。このうち、49.2%は内戦の直接的な影響を受け、複数の武装勢力間による戦闘に巻き込まれた。また、脅迫や負傷、強制徴用、強制移住、移動制限、さらには家族の殺害といった暴力事件も経験していた。
これらに加えて、暴力の犠牲となっている人びとは社会的偏見にも直面しており、雇用や住宅を確保できず、教育や医療を受ける機会も失われている。MSFのコロンビアにおける心理ケアオフィサー、マリア・クリストバルは次のように説明する。
「内戦の被害者たちは、周囲からの偏見の影響で、自らを取り巻く状況や苦しみについて沈黙せざるを得ない状況にあります。その結果、地域社会の一員として認められたり、連帯感を得たりすることが難しくなります」
また、政府機関からの放置は、コロンビア国内で避難した人びとの状況がほとんど認識されていないことからも明らかである。
コロンビアにおけるMSFの活動統括責任者、テレサ・サンクリストバルは語る。
「MSFは、人びとが政府による社会および保健分野のサービスからも除外されている場合が多いという、過酷な現実を目撃しています。本来、こうした問題が引き起こす重大な心理的苦痛へのケアは、政府が主導して継続的に続けていく責任があります。カケタ県におけるMSFの治療経験をもとに考慮したところ、紛争地など設備が限定された治療環境においても、効果的な心理ケアを行うことは可能だからです」
MSFは1985年からコロンビアにおいて医療および心理ケアを提供している。多くの紛争被害者への援助を提供しているほか、病気の流行や自然災害にも対応している。現在、同国13県で、約370人のスタッフがMSFのプログラムに従事している。
1999年以降、MSFはカケタ県で活動しており、2005年からは特別な心理ケアプログラムを展開している。現在、MSFのチームは定期的にカルタヘナ・デル・チャイラ、サン・ビセンテ・デル・カグアン、クリジョにある行政センターを訪れて心理ケアに関する啓発および予防活動を行っているほか、公立病院内に常設の診療所を設置した。さらに、カルタヘナ・デル・チャイラ、サン・ビセンテ・デル・カグアンの農村地域で実施している移動診療でも、一次医療とともに心理ケアを提供している。
MSFの調査報告書「三重苦の犠牲者」はこちらからダウンロードできます。