海外派遣スタッフ体験談

言葉の壁を越え世界とつながる

安藤 恒平

ポジション
外科医
派遣国
イエメン
活動地域
ハメル
派遣期間
2016年11月~2016年12月

Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?

今回で7回目の派遣になります。最後の派遣は2014年でしたが、その後もMSF日本の理事として活動を続けており、かつ、各国の派遣者や現地のスタッフとも連絡をとっていたので、日本にいても、心は常にフィールドに通じていました。各仕事の都合上、 派遣に赴くに十分な時間が今回のタイミングで得られたので、7月よりMSF日本のフィールド人事部に相談していました。

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?

2015年から、愛知県小牧市にある小牧市民病院という3次医療機関で整形外科のトレーニングに専念していました。2016年3月からは、北海道余市にある余市病院の整形外科で、整形外科医として手術その他の診療を行っていました。語学に関しては、3年前からMSF日本の理事としての仕事にも従事していたので、必然的に英語を使う環境にいました。

Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか? どのような経験が役に立ちましたか?

今回のイエメンは2回目ですし、その他にもシリアでの経験がありましたので、片言のアラビア語を使いながら、患者さんやその家族、現地スタッフとのコミュニケーションが可能でした。アラビア語を使うだけで、相手の気持ちが和んでいることが、感じ取れました。

Q今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?

私が赴任したハメルの病院は、内戦が続き、十分な医療が提供されていないイエメン北東部のアムラン州にあります。MSFはそこでイエメンの保健省と共同で医療活動を行なっています。当地では、アラブの春や、その後の政権交代を経て、現在、サウジアラビア主導の有志連合が軍事介入を行っています。私が滞在している間にも、戦闘機による空爆が2回ありました。私が直接被弾したわけではありませんが、空爆の爆音と振動、戦闘機の飛び去る音などが聞こえてきました。

現地では、医療そのものが不足している中で、私たちは、外科、内科、産科、小児科(栄養失調)に対応していました。外科としては、最も多かったものが虫垂炎で、平均すると1日1件の虫垂切除を行っていました。その他に、下肢開放骨折、胸部の銃創、事故による軟部組織損傷、緊急帝王切開にも対応しました。手術以外にも、手術室をどのように運営していくか、病棟の衛生環境を保つために、気をつけなければならないことなど、病棟看護師と共に改善活動を行いました。

Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

午前8時から、前日の病院の状況についての報告など、ミーティングを行います。その後、病棟回診となります。9時半頃から手術が開始できるのですが、時々、手術室スタッフと短時間の食事会をすることもありました。その後、手術を開始し、午後3時前には、概ね予定の手術が終わりました。そこから休みを取り、午後4時から病棟回診を行いました。これが基本で、そこに緊急対応が加わってきます。1日に、虫垂切除術を5件、かつ緊急帝王切開が2件、軟部組織外傷を行う日もありました。

夕食の時間は日によってまちまちです。後半は落ち着いていたので、皆で午後7時頃から夕食をとることもありました。夜間の緊急手術対応もあるため、早くに就寝していましたが、疲れや緊張のせいか、夜中に目が醒めることが多かったです。

イスラム社会では金曜日が休日ですので、木曜日の夜は、現地スタッフと皆で集まって、くつろぎながらイエメンのこと、日本のこと、政治、文化、教育についてなどについて話をしました。スタッフで団らんすることもあり、シリアのアレッポ出身の方や、コンゴ出身の方とは、それぞれの歴史や文化、現在の社会問題、政治についてなど語り合いました。

Q現地での住居環境についておしえてください。

11月の初旬は寒く、ヒーターが来るまで、コートを着たまま寝ていました。オフィスとなっている建物は、ゲストハウスを兼ねており、緊急時には避難できる部屋もありました。1ヵ月間で、雨が降ったのは1日だけ。晴天の日が多く、乾燥しています。皮膚が痛んでくるので、ワセリンを塗っていました。

Q活動中、印象に残っていることを教えてください。

アラビア語を積極的に学んでいきました。今回は医療的な内容ばかりでしたので、今後は日常生活に関わる言葉も、習得していければと思います。また、フランス語の練習になるので、フランス語圏の人たちと話をするときは、フランス語で話してもらうようにしていました。現場で日々使いながら覚えた方が、早いと思うからです。

Q今後の展望は?

MSF日本の理事としての仕事を行いつつ、日本の医療の中で介入する余地の多い分野も見出しながら、技術的な目標を達成できるように設定しています。外傷外科のスキルとしても、脊椎(せきつい)外科は自分に足りていないと考えているので、その習得をもくろんでいます。次回の派遣に関しては、時間の都合をつけて、早くにでも行きたいと思っています。

Q海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

最初は悪戦苦闘するかもしれません。その後も、チームと自身の問題点を見つけて、それを改善していく作業もあり、チーム内で良好なコミュニケーションを築くことが大切だと思います。日本で仕事をする際も、自分から積極的に現場の問題解決に取り組むことができるよう、自分のポジションを調整していくことも1つの戦略だと思います。

MSF派遣履歴

  • 派遣期間:2014年9月
  • 派遣国:南スーダン
  • プログラム地域:—
  • ポジション:外科医
  • 派遣期間:2013年11月
  • 派遣国:シリア
  • プログラム地域:—
  • ポジション:外科医
  • 派遣期間:2013年5月
  • 派遣国:シリア
  • プログラム地域:—
  • ポジション:外科医
  • 派遣期間:2012年8月~2012年10月
  • 派遣国:イエメン
  • プログラム地域:ハミール
  • ポジション:外科医
  • 派遣期間:2012年3月
  • 派遣国:パキスタン
  • プログラム地域:ハングー
  • ポジション:外科医
  • 派遣期間:2011年10月
  • 派遣国:イエメン
  • プログラム地域:—
  • ポジション:外科医
  • 派遣期間:2011年3月~2011年5月
  • 派遣国:ナイジェリア
  • プログラム地域:ポートハーコート
  • ポジション:外科医

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