海外派遣スタッフ体験談
内戦終結後のスリランカで医療再建
田辺康
- ポジション
- 外科医
- 派遣国
- スリランカ
- 活動地域
- ポイント・ペドロ(北部)
- 派遣期間
- 2010年4月~2010年5月

- QなぜMSFの海外派遣に参加したのですか?
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医師という仕事を日本でしていて、途上国で医療をやりたいという気持ちが自然に湧き上がってきました。MSFのような洗練された組織から派遣されることは、医療協力を志すうえで大変勉強になりますので、MSFから学ぶ、盗む、という気持ちでのぞみました。
- Q今までどのような仕事をしていたのですか? また、どのような経験が海外派遣で活かせましたか?
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癌の外科医を11年間、その後、救急医療に6年間従事し、さらに外傷整形外科の修行を始めて3年目になります。その間、常に研修医教育にかかわっていました。ただし、海外派遣で活かせたと思うことは、そういった医者としての経験というよりは、好奇心いっぱいであることや、自然に親しむことで得たサバイバル技術かな、と思います。
- Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
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スリランカ人のスタッフとの手術風景。ガウンが全員、違う色
でカラフル。医療再建を援助するプログラムです。スリランカでは、昨年4月までタミルの過激派と政府軍の紛争が続いていました。それが終結し、多くのタミル人がスリランカ北部の町に戻ってきています。そのため、医療不足が深刻です。それを補充しながら、再建に必要なアドバイスなどを行うことが任務でした。私たち外科医は主に、手術を始めとする治療、そして地元の若い医師への教育を行いました。
- Q週末や休暇はどのように過ごしましたか?
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宿舎から車で10分、この美しいビーチで毎週泳ぎました。
たった3週間でしたので、休みはありませんでした。ただ、毎日、早起きし(朝からヒンズー教のお寺が鐘やら音楽やらで騒がしく、おいそれと寝ていられませんでした)、ジョギングしたり、夕方は美しいビーチに泳ぎに行ったり、日々、楽しく過ごしていました。
- Q現地での住居環境についておしえてください。
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あたかも東南アジアのリゾートのような、すてきな建物、個室、天井にはカフェにあるような大きなファンが取り付けられていました。インターネットも使い放題で嬉しかったです。日々、掃除もしてくれて清潔でした。ただし、アリ、トカゲ、カメムシなどとの同棲生活でした。
- Q良かったこと・辛かったこと
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毎日3食のスリランカカレーは、ご飯の上に一度に
数種類のカレーをかけて食べます。仕事も、そこでの生活も大変よかったです。多くの笑顔、感謝をもらいました。100回の旅行にも優る心の交流が現地の方々とできることが、医療者としての海外派遣の醍醐味だと思いました。また、MSFスタッフ間で毎夜開催されるテーブルを囲んでの国際交流も有意義なものでした。
辛かったことは、蒸し暑さです。毎晩、扇風機を全開で直接体に吹きつけながら眠りました。早朝でさえ、ちょっと動けばTシャツがびしょぬれでした。この暑さには適応できないままプログラム終了となりました。ただし、3kgのダイエットに成功。帰国後、別人のようだと言われ、鼻高々でした。
- Q派遣期間を終えて帰国後は?
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幸い、有給休暇がたまっていたので、それを利用して参加しました。
何事もなかったかのように、元の職場に戻っています。
- Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
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医者として参加するなら、ちゃんとした医療を提供することが最低限大事だと思います。今回のスリランカでは、外科医として参加しましたが、日本で必要とされる技術とは違い、骨折整復や四肢切断、植皮といった整形外科的治療のニーズが高かったです。事前に現地のニーズに対する調査を行い、対策をたててから出発したほうが、楽です。また、プログラムに参加しやすくするために、日本での職場環境づくりを実践したいです。皆さんで協力して知恵を絞り合いましょう。