海外派遣スタッフ体験談
語学力不足を乗り越え登録、迎えた初回派遣
佐藤 聖子
- ポジション
- 麻酔科医
- 派遣国
- アフガニスタン
- 活動地域
- カブール
- 派遣期間
- 2015年9月~2015年11月

- Qなぜ国境なき医師団(MSF)の海外派遣に参加したのですか?
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ある程度経験を積んで一通りの麻酔をこなせるようになってくると(本当はまだまだなのですが)将来進むべき方向を模索する麻酔科医は少なくないかと思います。また、医者も中堅とよばれる頃には、純粋に医療に取り組む以外の事も増えてきます。そんな中、私は自分の将来に迷っているところでした。
そんなとき、あれこれインターネットで検索している時に偶然ヒットしたのがMSFのウェブサイトの麻酔科医のページで、見た瞬間にこれしかない!と思いました。
- Q派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?
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勢いで応募した初回の面接は、語学力不足で不合格でした。その後、短期語学留学やオンライン英会話などで勉強し、再度の挑戦でなんとか登録に至りました。
派遣決定後はオンライン英会話の先生にお願いして麻酔や手術の説明を英語で行う練習を重点的に行いましたが、実際、現場では現地の麻酔技術者がきちんと知識を持っており、現地の言葉で患者さんに説明してくれたので、今回はそれほど使う機会はありませんでした。
- Q今までどのような仕事をしてきましたか? また、どのような経験が海外派遣で活かせましたか?
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麻酔科医として手術麻酔をしてきました。バックパッカー旅行や途上国での生活の経験は特にありませんでしたが、私としては困ることはなかったです。料理の腕は磨いておくべきでした。(週末には海外派遣スタッフ同士、お互い手料理を振る舞ったりしました。)
- Q今回参加した海外派遣はどのようなプログラムですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
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仲良くなった手術室看護師と筆者(左)
カブール郊外の産科病院での勤務で、私の任務は手術(主に帝王切開)の麻酔管理、現地の麻酔技術者の指導と教育でした。
1ヵ月の分娩件数は約1000件、手術件数は約50件でした。手術の9割は緊急帝王切開です。全例が緊急症例なうえ、重症胎児機能不全や胎盤早期剥離、臍帯(さいたい)脱出といった重篤な症例も多かったので、24時間常に緊張していました。
現地の麻酔技術者は5人おり、脊椎麻酔の手技は皆上手でしたが、きちんとした医学教育を受けていないので知識は不足していました。それを教育するのが私の任務なのですが、皆自分に自信を持っており、特に私は初回派遣でMSFのプロトコルに慣れていないこともあり、なかなか話を聞いてもらえないこともありました。
- Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか? また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?
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朝、宿舎から病院へ車で移動後、全医療スタッフでミーティング(申し送りと業務連絡)、その後現地の産婦人科医と病棟の回診を行い、後は緊急手術がなければ特に決まった業務はありません。データ管理や薬剤管理などの事務仕事、スタッフへの講義の準備などや、分娩室にお邪魔してお手伝いしたりしていました。
どういうわけか、日中は手術症例があまりなく、宿舎に帰ってから(特に深夜早朝に)呼び出されてばかりでした。
- Q現地での住居環境についておしえてください。
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地上3階、地下1階のゲストハウスで暖房付きの個室が与えられていました。水洗トイレ、熱いシャワー、料理・掃除・洗濯は現地の家政婦さんが担当、虫もいない、WiFiもつながる、など、想像よりはるかに快適な生活を送りました。
安全管理上外出はほとんどできませんでしたが、特にストレスはなかったです。ほかの海外派遣スタッフと一緒に、毎日エクササイズをして、よい息抜きになっていました。
- Q活動中、印象に残っていることを教えてください。
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最終日、スタッフ総出で見送ってくれた(筆者左から3番目)
たくさんの現地スタッフといい仲間になれたことが何よりの宝です。皆本当にフレンドリーで人懐こいです(男性スタッフも)。彼らの英語も私の英語もたどたどしく、コミュニケーションの難しさはありました。
また私の性格上、スーパーバイザーというよりは友達のような関係になってしまい、リーダーシップが欠けていた部分もあったと思いますが、現地スタッフからは穏やかな態度が親しまれ、対等に接していると捉えてくれたようで、このような寄り添い方もあるのではないかと思いました。
- Q今後の展望は?
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産科病院のため、麻酔はほとんど脊椎麻酔でしたので、次回はもっとさまざまな症例を経験できるプロジェクトに参加したいです。
ただ、現在勤務している病院に無理を言って派遣活動に参加したので、しばらくはご恩返しをします。
- Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
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語学面でためらっている方は1度応募してみてください。何とか業務ができる英語力があれば、通る可能性はあります。
ただし、どんなに英語が出来ても、現地ではさまざまなことが起こり、自分のふがいなさに落ち込むことは必至です、が、それが勉強のモチベーションにもなります。