食料足りず木の葉を調理 「援助の拡大が急務」南スーダン緊急援助を立ち上げた日本人スタッフが訴え
2022年05月06日
それから2カ月以上の間、避難した数万人の人びとは食料も仮設住居も足りない状況に置かれている。国境なき医師団(MSF)は現地で緊急援助を進めるとともに、他の援助機関に支援の拡大を繰り返し訴えている。
緊急援助の立ち上げを率いた日本人スタッフ

(2020年撮影) © Majd Aljunaid
2月から3月にかけてプロジェクト・コーディネーターとして緊急援助活動の立ち上げを率いた萩原健はこう話す。
「村が焼き討ちに遭うなどして、皆ごくわずかな荷物だけを持ち、着の身着のまま逃げて来ていました。大半が女性と幼い子どもたちです。この地域は、日中は45度近くまで気温が上がり非常に暑くなりますが、夜は日本の春と同じくらいまで冷え込みます。その中で、何万人もが毛布もなく木の下で夜を過ごしていたのです。
MSFが到着するまで、避難してきた人たちは1週間近く食料がないような状況でした。私たちは食料や毛布、衛生用品を配布するとともに、清潔な水を提供しました。井戸がない所では川から汲んだ水を塩素で消毒し、井戸があれば電動のポンプを付けて汲み上げ速度を上げて提供します。トイレも設置しました。
MSFが到着するまで、避難してきた人たちは1週間近く食料がないような状況でした。私たちは食料や毛布、衛生用品を配布するとともに、清潔な水を提供しました。井戸がない所では川から汲んだ水を塩素で消毒し、井戸があれば電動のポンプを付けて汲み上げ速度を上げて提供します。トイレも設置しました。
そして、緊急の移動診療を開始し、マラリアや下痢などに対応しました。それでもこの規模の人道危機に対し、MSFの援助だけでは足りないことは明らかです。これから雨期が来てコレラや栄養失調のリスクが増し、医療ニーズは高まるばかりです。MSF以外にも支援が入らないと、さらに多くの命が脅かされてしまうのです」

食料が不足……木の葉を調理して子どもたちに
避難から2カ月以上が経っても、仮設住居、食料、清潔な水など、生活に最低限必要なものが足りない状況が続き、ほとんどの人は野外で寝泊まりしている。MSFが対応しているトゥイック郡の6カ所には現在、約3万3000人の避難者がいる。
南スーダン現地活動責任者のスサナ・ボルヘスはこう話す。
「キャンプの状況はひどいものです。人びとは、棒や布で作った小屋で暮らしています。食料が不足しているため、親たちは木の葉を取って調理し、子どもたちに食べさせています」
これまでの2カ月間、MSFは複数の場所で、合計374.2トンの食料と、1人あたり1日平均14.5リットルの清潔な水を提供。また、135基のトイレを建設し、約1万世帯に毛布、蚊帳、貯水容器、石けんなどの救援物資を配布した。
「私たちは最善を尽くしていますが、これほど規模が大きい危機に対応するためには、他団体による援助の拡充が不可欠です」とボルヘスは強調する。

帰れる見通しは立たず 今後も続く援助のニーズ
MSFは避難者が過ごす3カ所で移動診療を行っている。MSFの診療所に訪れる患者の健康状態は、劣悪な生活環境と食料不足に深く関わっている。仮設住居やトイレ、蚊帳がないため、マラリアやコレラといった病気に陥りやすい。
雨期が始まろうとしているいま、人道対応を即座に拡大しなければ、人びとの健康はさらに悪化する恐れがある。

避難者がすぐに戻れるという見通しは立っていない。また危険にさらされる恐れがあるからだ。
2人の幼い子どもを連れてアゴクの自宅から逃れ、ゴムゴイ避難民キャンプで過ごすアデムさんは話す。「銃で撃たれた人たちを見てきました。何の罪もない、私のような人たちが撃たれているのです。自宅も店も略奪されました。帰れるわけがありません。ここで苦しむ方がましです」
今後数カ月は、生活環境の改善や食料・水の提供など、生きるための支援が必要とされる見通しだ。何カ月も見過ごされ、極めて危うい状況に陥っている人びとの命を守るため、持続的な人道援助活動が求められている。
