世界難民の日: "自分ごと"として考えるために知ってほしいこと

2016年06月20日

6月20日は世界難民の日です。

ある日、突然、町が爆撃されたら……、武装兵に襲撃されたら……、理由なく逮捕されて拷問にかけられたら……?世界各地で難民となって過酷な生活に耐えている人びとは、こうしたつらい体験を経て、国を離れるしかないと決断しました。しかし、安全な生活を求めてたどりついた場所で彼らを待っていたのは、水や食糧の不足、不衛生な環境、そして病気やけがをしても病院に行けない現実でした。

国境なき医師団(MSF)の活動の中で、難民となった人びとへの医療・人道援助は大きな割合を占めています。難民問題は国際社会が協力して解決すべき大きなテーマ。その一員である日本の皆さまにも、ぜひ一緒に考えていただきたく、まずは下記の地図をご覧ください。

MSFが活動している主な難民キャンプ(2015年6月~2016年6月)


世界全体では約6000万人が自宅から避難し、そのうち約2000万人が国外へ逃れて難民生活を送っています(国連難民高等弁務官事務所=UHNCR調べ)。難民の受け入れ国の上位には、トルコやレバノンといった国が並びます。内戦が続くシリアから大勢の人びとが逃れてきているのです。

「難民」となった人びとの生活を知ろう

360°動画: シリア人難民の生活~ベッカー高原

シリア内戦を逃れてきた人びとが滞在しているレバノンのベッカー高原。自然環境が厳しい上に、都市圏から遠い辺境の地で、医療を受けることもままなりません。人びとの現状をより臨場感を持って受け止めていただきたく、360°動画を作成しました。

3人のシリア難民が直面した現実を図解

シリア出身の3人が、安全な生活を求めて欧州を目指した途上で体験したことをまとめた動画です。登場人物は仮名で、すごろくのように話が進みますが、ここで語られている出来事はすべて事実です。もし、同じ立場だったとしたら……?私たちと一緒に考えてみていただければと願っています。

『妹は3歳、村にお医者さんがいてくれたなら。~わたしたちが900万人の人びとに医療を届けるわけ』

MSFの活動地で医療・人道援助活動を続けているスタッフたちによる体験談と考察をまとめた1冊です。この本で取り上げられているスーダンの事例は国内避難民キャンプについてですが、その生活の過酷さや援助活動の困難は難民キャンプと変わりありません。

「難民」についての基礎知識

中東やアフリカから地中海をわたって欧州を目指す難民 中東やアフリカから地中海をわたって欧州を目指す難民

広い意味での「難民」は何からの理由で住んでいた場所を追われ、国外に出て困難な生活をしている人びとを指します。国際社会は、こうした境遇に追いやられた人びとを保護するために難民条約を定めました。

この条約では、難民を「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた」人びとと定義し、条約の加入国には、出身国に送還されると命の危険にさらされる恐れなどがある人の保護を義務づけています。加入国は145ヵ国で、日本もその1つです。

日本に求められること

伊勢志摩サミットで会談する各国首脳(2016年5月) 伊勢志摩サミットで会談する各国首脳(2016年5月)

ところが、日本の難民認定は他の先進国と比べて非常に厳しいことで知られています。世界情勢の悪化を受け、2015年度、日本には過去最多の7586人が難民認定を申請しました。そのうち、日本の認定は27人にとどまりました。

日本は2016年5月、内戦が続くシリアから難民・国内避難民150人を留学生として受け入れることを表明。早ければ2017年から5年計画で実施するとしています。しかし、欧州や米国は数万~数十万人の規模で受け入れているのです。

難民支援の財政面では、日本は大きな貢献を果たしています。UNHCRへの拠出額は毎年世界でもトップレベルですし、安倍首相が2015年に表明したイラク人・シリア人難民の支援や、中東・アフリカ地域の安定化への出資額は、いずれも数百億円規模に上ります。こうした点は評価できますが、財政支援にとどまらず、国際社会の一員としてさらに踏み込んだ支援策が求められます。

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