「すべてが破壊され、生命の気配がない」──ガザ地区ラファ 人びとの帰還は遠く
2025年01月28日
国連によると、ガザにある建物の70%近くが破壊または損壊しているという。国境なき医師団(MSF)は、改めて即時かつ大規模な人道援助の拡大を訴える。
安全とは程遠い場所
「人びとがラファで生活を取り戻すためには、医療サービスをはじめとする人道援助や街の再建が必要です。ほとんどの地域はいまも、住民が戻るにはあまりにも危険です」
MSFの緊急対応コーディネーター補佐、パスカル・コワサールはそう話し続ける。「ラファにあるMSFのシャボウラ診療所を訪問しようとしていたとき、マワシ地区で子どもが砲弾で遊んでいるのを見かけました」
爆撃の音は聞こえなくなりました。それでも依然として危険は残っています。
パスカル・コワサール MSFの緊急対応コーディネーター補佐
人びとは瓦礫の中から、なんとか生活を再建しようとしている。ラファの破壊は凄まじく、家も店も道路も医療施設もすべてが廃墟と化し、電気網や水道設備も甚大な被害を受けた。また破壊された建物の周囲には、不発弾も散らばっている。この地域は安全とは程遠く、危険を取り除くには何年もの歳月が必要とされるだろう。

イスラエル軍による徹底的な破壊
2024年5月、ラファはガザ内でも最も避難民が集中する場所となった。その数は推定150万人とされ、人びとはテントや仮設シェルターで暮らすことを余儀なくされた。非人道的な状況の中、多くが病気のまん延、栄養失調、そして強制的に何度も避難させられたことによる心理的な問題に直面していた。
MSFのチームは、シャボウラ診療所で基礎医療とメンタルヘルスのサポートを提供。保健省が管轄するエミラティ病院では、小児科と産科ケアを支援していた。しかしイスラエル軍による爆撃と退避要求が相次いだため、活動を停止し退避せざるを得なくなった。そして2024年5月6日、イスラエル軍による地上侵攻の脅威は現実のものとなる。

イスラエル軍による軍事作戦により、ラファは無人となり街は徹底的に破壊された。ラファ検問所も閉鎖され、ガザ地区全体への人道援助も遮断。ラファには多くのMSFスタッフも暮らしていたが、彼らもまたガザの他の地域に避難を強いられた。
破壊され取り残された街で
「活気に満ちていたラファを取り戻すことは、とても難しいでしょう」
MSFの医療コーディネーター補佐で、以前エミラティ病院で働いていたナディア・アボ・マルーフはそう話す。「かつては生き生きと機能していた病院が完全に空っぽで、生命の気配がなく、すべてが破壊されている。それを目の当たりにすると、胸が痛みます」
病院があった場所の通りすらも、私たちは認識できませんでした。
ナディア・アボ・マルーフ MSFの医療コーディネーター補佐
インフラが破壊された結果、ラファでは医療をはじめとする基本的なサービスが足りていない。多くの人びとが帰還を試みているものの、家屋が破壊されているため、戻ることもかなわない。破壊の程度は凄まじく、時にはかつて近所だった場所すらも分からないほどだ。

家は完全に破壊されていました。そのショックはあまりにも大きかったです。私の家は、私のすべてでした。
ハディ・アボ・エネン MSFの警備員
「そこには家族、妻、そして子どもたちとの思い出が詰まっていました。私の持っていたもの、洋服、食器、結婚式の思い出──すべてがあったのです」

一方、マワシ地区の沿岸地域では、人びとが仮設テントの中でなんとか生き延びようとしている。適切な避難所もなく、食料や水の入手もままならず、医療へのアクセスも限られた状況の中で──。
そしてガザ北部のパレスチナ人もまた、同様の困難に直面している。イスラエル軍による直近の暴力的な包囲の結果、街は完全に破壊され、取り残されている。