はしかで奪われる子どもの命 MSFが2000人以上を治療 「過去にないほどの流行」

2019年06月07日掲載

MSFが作ったはしか科の様子 © Abdulkareem Yakubu/MSFMSFが作ったはしか科の様子 © Abdulkareem Yakubu/MSF

ナイジェリア・ボルノ州。州都マイドゥグリの州立専門病院には、国境なき医師団(MSF)のはしか科がある。ベッド数は70床で、MSFが設置した。

5歳になるムスタファ・オスマンくんは点滴をしているところだ。ムスタファくんは3日前に治療を受けに来た。あと数日で退院できるという。「こんなに早く退院できるなんて、ラッキーですね」と、主治医のムハンマド・アブドゥラヒ医師は話す。

「何週間も入院する子も珍しくありません。何か別な病気にかかっている子もいます。重い急性栄養失調やマラリア、肺炎などで、命を落としてしまう子どももいます」 

かつてないほどの流行

はしかにかかった子どもを診るMSFの医師 © Wairimu Gitau/MSFはしかにかかった子どもを診るMSFの医師 © Wairimu Gitau/MSF

ナイジェリア北東部では、10年もの間、紛争が続いている。そのため、数千人が国内や近隣諸国に避難している。200万人近い人が人道援助によって命をつないでいる。ナイジェリア北東部マイドゥグリ市では2018年11月以降、2922人の子どもがMSFのもとで治療を受けた。国内避難者と、国内避難者を受け入れている地域の人びととの間で、はしか患者がよくみられた。

「2016年からMSFに医師として参加しています。ですが、マイドゥグリでこれほど多くのはしか症例をみたことがありません」とアブドゥラヒ医師。はしかの流行の原因は、定期予防接種とはしかの予防接種の不足によるもの。数千人の子どもたちに感染のリスクが高まっている。「活動している病棟はどこも患者であふれています」とグウェンジ病院でMSFの医療チームリーダーを務めるテレサ・チャン医師は話す。

「スタッフがよく働いてくれるお陰でなんとか乗り切れています」 

幼い子どもがはしかに

はしかの診察に訪れた1歳の女の子(右) © Wairimu Gitau/MSF はしかの診察に訪れた1歳の女の子(右) © Wairimu Gitau/MSF

マイドゥグリの西に位置するグウェンジ病院でも、MSFは、はしか患者を治療している。1月~4月の4ヵ月間で、2343人の子どものはしか患者を治療した。4月の症例数は1月の4倍を記録。患者数があまりに多いため、73床ある隔離用ベッドは空きがない状態だ。

3歳の女の子も母親に連れられて、この病院にやって来た。母親は「くしゃみを始めたと思ったら高熱が出ました。唇の裏側が真っ赤になって、吐き続けているような状態でした。ものすごく心配になり、もしかしたら娘は死んでしまうかもしれないと思って…」と振り返る。治療を始めて約1ヵ月。女の子は順調に回復している。母親も「娘を家に連れて帰れる!」と喜んでいる。 

奪われた多くの命

はしか治療の様子 © Wairimu Gitau/MSFはしか治療の様子 © Wairimu Gitau/MSF

だが、亡くなってしまう命も少なくない。子どものなかには、はしかの他に別の重い病気を併発して、亡くなるケースもある。州立専門病院とグウェンジ病院の2つの病院で、MSFは1月以降、58人の死亡を記録している。それも全体の死者数のほんの一部に過ぎない。

「これほど多くの子どもたちが、普通に治療できるはしかのような病気で亡くなるなんて、受け入れがたいことです。スタッフもギリギリのところで頑張っていますが、だからといって病気の子どもたちを病院で受け入れないなんて出来ません」とマイドゥグリでMSFの医療チームリーダーを務めるキャロライン・マスンダは話す。「はしかは既に多くの命を奪いました。地域には、今も悲しんでいる人が大勢います」
流行を食い止めるために、より早く病院にアクセスし、受診できる患者の数を増やしていくことが大切だ。合併症の患者を減らし、患者の死亡率の引き下げにもつながる。そのため、国内避難民や地域の人びとに無償の一次医療を提供していくことが求められている。またMSFは、定期的な予防接種実施のために、ナイジェリア当局や国連機関とNGOを含めた全ての関係者にも連携呼びかけている。 

MSFはナイジェリアで1996年から活動。ボルノ州では2014年以降、常に活動している。MSFは命をつなぐ医療をナイジェリア北東部で提供。活動地はグウォザ、マイドゥグリ、モングノ、ンガラ、プルカのほか、緊急対応チームが病気の流行をはじめとした人道ニーズに対応している。 

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