私は砂漠で捨てられた──アフリカ北部、コロナ禍の影で進む移民の強制送還

2021年05月06日掲載

アルジェリアから強制的に送還された、妊娠4カ月のサフィさん © Mariama Diallo/MSFアルジェリアから強制的に送還された、妊娠4カ月のサフィさん © Mariama Diallo/MSF

アフリカ北部のアルジェリアで生活していた移民が、突如逮捕され、国に強制送還されるというケースが後を絶たない。新型コロナウイルス対策で陸路の国境を閉鎖という公式発表と矛盾する形で、国境の町では数多くの移民が国外に追放されている。

国境なき医師団(MSF)はニジェール北部のアガデス州で、アルジェリアから追放された移民を救助し、医療援助を提供。人びとの声から明らかになった、移民の置かれた状況とは──。

突然の連行 収容センターに運ばれて

「憲兵がドアを打ち破って入ってきて、お金も携帯電話も全部取られました。そして警察に連れて行かれたのです」。そう話すのは、マリから移民として隣国アルジェリアに入り、香辛料を売って生計を立てていたサフィ・ケイタさん。妊娠4カ月だ。

「翌日、満員のトラックに押し込まれました。ぎゅうぎゅう詰めで、大勢一緒にいたのに、誰もマスクをしていませんでした」

送られた先は収容センターだった。到着すると、トラックから地面に飛び降りるよう命令された。妊娠中のサフィさんも従って飛び降り、お腹には痛みが走った。その後4日間、収容センターに留め置かれたサフィさん。不衛生な環境で、パンだけが与えられた。「妊娠していても、特別扱いはありません。看守は私の体調など気にかけてもいませんでした」

そしてサフィさんは、他の移民とともにアルジェリアとニジェールの国境に連れて行かれ、無残にも砂漠に捨て去られた。

アルジェリアから強制送還され、ニジェールの国境沿いの町で食料の配給を待つ若者たち © Mariama Diallo/MSFアルジェリアから強制送還され、ニジェールの国境沿いの町で食料の配給を待つ若者たち © Mariama Diallo/MSF

新型コロナで国境が閉鎖された後も

2020年3月にニジェールとアルジェリアの陸路の国境は、新型コロナウイルスの感染対策のため公式に閉鎖された。それにも関わらず、MSFが集めたデータによると、ニジェール側の国境付近にある砂漠の小さな町アッサマッカには、2020年に2万3175人の移民が到着した。コロナ対策として国境が閉じられても、移民の強制送還は続けられているのだ。

2020年にMSFが行った外来診療は4万1801件に上り、2019年の3万9889件を上回っている。患者の多くは、暴力を振るわれ、時には拷問にかけられていた。2020年には暴力を振るわれた989人の移民を治療したが、そのうち21人は拷問にかけられたという。精神面への影響も深刻で、1914人の移民の心のケアにあたった。

今年に入ってからも、アルジェリアからニジェールに追放された移民は4月中旬時点で4370人に上り、その中には銃で撃たれた人や足を骨折した人もいる。
 

強制送還された人びとの中には暴力を受けたというケースが少なくない © Mariama Diallo/MSF強制送還された人びとの中には暴力を受けたというケースが少なくない © Mariama Diallo/MSF

真夜中、砂漠の真ん中で

移民の多くは西アフリカや南アジアの出身で、若い男性、女性、子ども、高齢者などさまざまな人がいる。数年にわたってアルジェリアに住んでいた人もいれば、欧州に行くための経由地としてアルジェリアを移動していた人もいた。

彼らの話によると、逮捕されてから数日または数カ月間にわたり収容センターに入れられる。その後、アルジェリアの治安部隊によってバスやトラックに押し込まれ、「ゼロ地点」として知られる場所で降ろされる。アルジェリアとニジェールの国境地帯に広がる砂漠の真ん中で何もない場所だ。真夜中に行われることが多いという。

彼らは着の身着のまま、地図も何も持たず、最も近いアッサマッカという集落まで15キロの道のりを歩く。途中で道を失い、そのまま行方知れずになった人もいたという。

マリ出身のトラオレ・ヤ・マドゥさんは、アルジェリアで6年間、塗装工として働いていた。しかし急に逮捕され、ニジェールに強制的に送られた。

「何人かで工事現場のそばに住んでいました。ある日、アルジェリア警察が来たのです。これまでは、お金を渡すか抵抗していると、そのうちにいなくなるのが常でした。でも、その日は20人ほどが扉を壊して押し入ったのです。私たちは手錠をかけられ、警察署に連れて行かれました。24時間、何も食べ物は与えられません。身体検査の挙句に、下着を脱がされるなど、ひどい扱いを受けました。私は2500ユーロ持っていましたが、数人の警官に全部取られてしまいました。さらに数人がかりで激しく殴られ、病院に行くほどの状況になったのです」

逮捕に抵抗しようとした罰として、トラオレさんが解放されたのは他の移民よりも砂漠のはるか奥深い場所だった。そこからアッサマッカの集落まで4時間も歩かなければならなかった。 

MSFがマッサマッカに設置した給水ポンプ MSFは緊急医療のほか水や食料の支援を行っている  © Mariama Diallo/MSFMSFがマッサマッカに設置した給水ポンプ MSFは緊急医療のほか水や食料の支援を行っている  © Mariama Diallo/MSF

移動する人びとに人道援助と保護を

この2人の移民の証言は、アルジェリアとニジェールの国境で起きていることのごく一部に過ぎない。

2011年にリビアで民主化運動を受け独裁政権が崩壊して以降、ニジェールを経由してリビアやアルジェリアを北上するのが、移民が欧州へ移動するための主要なルートとなっている。移動抑制のためさまざまな政策が講じられたが、人びとの動きを止めるには至っていない。むしろ、移民の行動を犯罪扱いし、人権を侵害することで、移民を危険に追いやっている。

2015年の移民・難民問題に関する首脳会合で、欧州・アフリカ諸国が国境管理体制を強化し、“不法”とみなされた移民の帰還を、自発的か否かにかかわらず促進することで合意した。その結果、移民は恣意的に逮捕され、虐待や迫害を受ける恐れのある国に送り返され続けている。

MSFのジャマール・ムルーチ現地活動責任者はこう話す。「アルジェリア政府が行っている移民の逮捕や収容、追放は、ノン・ルフールマン原則(※)への違反であり、国際人権法や難民条約にも反しています。政策を見直し、移動する人びとに人道援助と保護を保証することが不可欠です」

※難民ならびに保護を求める者を、迫害を受ける恐れのある国家へ追放または送還してはならないとする国際法上の原則 

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