家は壊れ、道路は寸断 サイクロン「イダイ」の被災者に緊急援助

2019年03月26日

サイクロン「イダイ」が直撃し、破壊されたベイラの住宅(2019年3月19日撮影) © Joao Beirao/MSFサイクロン「イダイ」が直撃し、破壊されたベイラの住宅(2019年3月19日撮影) © Joao Beirao/MSF

3月上旬にアフリカ南部を直撃したサイクロン「イダイ」は、モザンビークジンバブエマラウイの各地に壊滅的な被害をもたらしている。国境なき医師団(MSF)は現地に緊急チームを派遣して被害状況を調査し、最も被害が大きい地域で医療援助をするほか、医療物資の供給と給排水・衛生活動ができるよう活動している。当局の発表によると、死者は数千人に上るとされる。 

破壊された都市——モザンビーク

ベイラの一時避難所には、屋根や木の上に逃げ救助された人びとが避難している(2019年3月24日撮影) © MSFベイラの一時避難所には、屋根や木の上に逃げ救助された人びとが避難している(2019年3月24日撮影) © MSF

3月14日、サイクロン「イダイ」はモザンビークの港湾都市ベイラを直撃。ベイラのあるソファラ州からザンベジア州、さらにイニャンバネ州に大きな被害を与えた。速報によると、ベイラの周辺地域では90%が損壊した。ベイラへの幹線道路は寸断され、建物は水没して大きな被害を受けた。全ての商業活動は停止している。

ベイラと周辺地域は停電しており、通信回線はほぼ絶たれているため、死者数や災害規模の把握は難しい。ベイラ、ドンド、シモイオの周辺で少なくとも84人が死亡したほか、1500人が負傷したと報じられている。 

破壊されたベイラの住宅(2019年3月19日撮影) © Joao Beirao/MSF破壊されたベイラの住宅(2019年3月19日撮影) © Joao Beirao/MSF

MSFは現在、緊急対応の経験がある35人のスタッフが被災地に入っている。ベイラでは4つの緊急チームが医療活動を開始。移動診療と一部損壊した診療所の修復、他2ヵ所での活動開始に向けて全力を挙げている。また、洪水の被害にあった周辺地域の調査も進めているほか、別の2チームも首都マプトに到着し、被災地に向かっている。 

ベルギーからベイラへ、3機のチャーター便で緊急援助物資を運ぶ(2019年3月24日撮影) © Albert Masias/MSFベルギーからベイラへ、3機のチャーター便で緊急援助物資を運ぶ(2019年3月24日撮影) © Albert Masias/MSF

援助物資はベルギーから空路でベイラへ向かった。3機のチャーター便に積まれた貨物は合計43.3トン。さらに貨物機4便をベルギーとドバイから数日のうちに飛ばす予定だ。その後も、数週間にわたって援助物資の輸送を計画している。 

道路が寸断され孤立した地域へ——ジンバブエ

チマニマニ地区で道路が寸断され、孤立した地域へ向かうMSFの移動診療チーム(2019年3月23日撮影) © MSFチマニマニ地区で道路が寸断され、孤立した地域へ向かうMSFの移動診療チーム(2019年3月23日撮影) © MSF

サイクロン「イダイ」は3月15日の深夜にモザンビークを通過し、ジンバブエのマニカランド州チマニマニ地区を直撃した。人口約3万人の小さな地区で、3月22日現在、154人が死亡、162人が負傷したほか、5000人近くが避難したと報じられている。チマニマニへ通じる複数の道路は寸断され、援助を届けるのが難しくなっている。

MSFはチマニマニに入り、地域の病院で保健省職員とともに活動を開始した。チマニマニ地区には20ヵ所の診療所と居住区域があり、2つのアウトリーチ・チーム(※)ができるだけ多くの診療所と区域に向かっている。到着次第、現地の医療ニーズ調査とともに、必須医薬品、日用品と、飲み水を作るための浄水剤の配布を始める。

さらに、チマニマニ近郊でMSFは負傷者の容体を安定させるための医療センターを設置し、患者の診療とともに医療物資の提供を続けている。また、ピチンゲの南にあるコッパー谷でもニーズ調査を開始した。

※医療援助を必要としている人びとを見つけ出し、診察や治療を行う活動。 

ペーターさん(左)はチマニマニで洪水に流され、木につかまって3晩を過ごした(2019年3月21日撮影) © MSFペーターさん(左)はチマニマニで洪水に流され、木につかまって3晩を過ごした(2019年3月21日撮影) © MSF

これまでのところ、チマニマニで必要な医療は外傷治療とHIV患者用の抗レトロウイルス薬(ARV)の補充、慢性疾患患者の治療だ。今後、サイクロンによる長期的な影響にも取り組んでいかなければならない。停電のため、定期予防接種はストップし、医療物資と医薬品の在庫も底をつきつつある。HIV、結核、慢性疾患など長期に及ぶ治療が中断し、洗剤や塩素などの衛生用品も全般的に不足している。 

堤防が決壊し、数千人が避難所へ——マラウイ

MSFスタッフと現地保健スタッフが増水したシレ川をボートで渡り村を訪問する(2019年3月23日撮影) © MSF MSFスタッフと現地保健スタッフが増水したシレ川をボートで渡り村を訪問する(2019年3月23日撮影) © MSF

マラウイでは、シレ川下流地域のチクワワ県とンサンジェ県で激しい雨が降り、そこへサイクロン「イダイ」が追い討ちをかけて深刻な洪水被害が出ている。国の災害報告によると、ンサンジェ県では川の堤防が決壊して約1万6000世帯が被災。膨大な数の家屋が倒壊し、数千人が避難キャンプや、学校・教会などに作られた急ごしらえの避難所に身を寄せている。当局の発表によると56人の死亡が確認されたほか、577人が負傷、3人が行方不明となっている。 

マカンガで救援物資を配るMSFチーム(2019年3月23日撮影) © MSFマカンガで救援物資を配るMSFチーム(2019年3月23日撮影) © MSF

MSFはマラウイ当局と国の災害対策部、地元団体と国際団体と連携して対応を続けている。18人編成のMSFチームが現地入りし、保健省を支援して診療と衛生管理を行い、シレ川東岸のマカンガの住民約1万8000人を対象に、救援物資の配布に当たっている。

これまでのところ急を要する医療ニーズは見つかっていないが、HIVや結核、慢性疾患用の薬が足りなくなっていることが懸念される。マカンガの診療所にはまだ保健省の職員が戻っておらず、MSFが一次医療、HIV診療、簡易的な疫学調査・監視を行い、1日あたり150件ほどの診療を行っている。

アウトリーチ・チームは地域を訪問し、井戸の修復と水質検査を行い、安全な飲み水が手に入るようにしている。また、トイレとシャワー台も設置し、救援物資と衛生用品キットを配布するほか、地域の人びとに衛生的な習慣と清潔な水の利用について伝えた。これまでにマカンガでは、2000世帯余りに援助を提供している。 

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