夏のレジャーではない 国境の町にキャンピングテントが並ぶ理由

2019年09月17日掲載

たくさんのテントが立ち並び、ロープにはタオルが干されている。しかし、ここはキャンプ場ではない。米国と国境を接する、メキシコのある町の光景だ。犯罪組織がうごめく夜、身を守るのはこの薄いテントだけ——。

「どこで夜を過ごせばいいの?」 危険な町に放り出される人びと

劣悪な環境の中、テントで生活を送る © MSF劣悪な環境の中、テントで生活を送る © MSF

「娘と一緒に追い返されました」と話すモニカさん(仮名)。中米ホンジュラスから米国を目指して4000キロ近い道のりをたどって来たが、米国国境でメキシコ側に追い返された。ここは、メキシコ北東部に位置する、タマウリパス州マタモロス。犯罪組織の抗争事件が絶えない、メキシコでも特に危険な地域の一つだ。

「メキシコ当局は、保護施設の場所も、どこで夜を過ごせばいいかも全く教えてくれません。ここは見知らぬ土地ですが、危険な場所だということは知っています」とモニカさんは途方に暮れる。

モニカさんのように米国で難民申請を希望する人びとを、審査が終わるまでメキシコ側で待機させる、移民保護手続き。米国の移民政策の一つだ。マタモロスで移民保護手続きが施行された8月以降、国境なき医師団(MSF)が把握するだけでも1日平均約100人の難民申請希望者が米国国境からマタモロスに追い返された。しかしここには保護施設が乏しく、彼らを受け入れる体制は整っていない。下水設備は貧弱で、飲用水も保健サービスも不十分だ。劣悪な環境の中で人びとが留め置かれている。

路上に張ったテントに寝泊まりする人も少なくない。薄いテントの外では犯罪組織の縄張り争いが繰り広げられており、拉致や恐喝、性暴力の危険にいつ巻き込まれるか分からない。
 

住まいを追われた人びとを守るために

即席のテントが並ぶマタモロスの町 © MSF即席のテントが並ぶマタモロスの町 © MSF

「弱い立場に置かれた人びとが、犯罪組織の暴力がはびこる危険な場所で待たせられ、メキシコと米国の担当局から非人道的な扱いを受けています。それが女性か、子どもか、男性か、家族連れかどうかかにかかわらず、決して見過ごすことはできません」。そう話すのは、メキシコでMSFの活動責任者を務めるマルセロ・フェルナンデス医師だ。

MSFはタマウリパス州ヌエボ・ラレド、レイノサ、マタモロスの3都市で、満員状態の保護施設の移民・難民に医療と心のケアを提供している。モニカさんもMSFの患者の一人だ。

事態の解決には何が必要なのか。MSFは米国政府に、難民申請希望者を暴力と迫害の危険がある場所へ送還しないよう求めている。また、人命を脅かす移民政策の廃止も、米国・メキシコ両政府に求めている。両政府は、住まいを追われた人びとを守り、必要な人道援助を今すぐ行わならければならない。

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