レバノン大規模爆発:負傷者の治療や心のケア── 緊急医療援助を提供
2020年08月17日
2020年8月4日にベイルートで起きた大規模な爆発を受け、国境なき医師団(MSF)は被害を受けた人びとへの緊急医療援助を行っている。爆発後に感染者数が急増した新型コロナウイルス感染症(COVID-19 )への対応も急務だ。活動責任者の声と共に、現地の動きを伝える。
診療拠点を開設 負傷者を手当て
MSFは、爆発の影響が最も大きかったマル・ミハエル地区とカランティーナ地区の近隣に2つの診療拠点を開設し、傷の手当てなどを行っている。
さらに、戸別訪問も開始した。住民が何を必要としているのかをより具体的に知り、支援につなげていくためだ。MSFは調査から挙がったニーズを元に、貯水槽を設置して安全な水を提供するほか、衛生用品のキットを配布している。また戸別訪問では、高血圧や糖尿病などの慢性疾患を抱える患者が治療を継続できるよう支えている。

災害時に重要な心のケア
大きな災害においては、心のケアが不可欠だ。MSFは9人編成の心理療法士チームを現場に派遣。心理士らは心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド)を行うほか、心のケアを必要としている人びとのために長期的な対応の立ち上げに取り組んでいる。レバノンで活動責任者を務めるジュリアン・レクマンはこう話す。
「レバノンの人びとは、過去の内戦や今も続く経済危機に加えて今回の爆発を経験し、心にさらに深い傷を負いました。このような出来事は心の健康に大きな影響を及ぼし、その影響は何年も続くことが、これまでの経験から明らかにされています。そのため、国レベルで心の健康づくりに向けた計画を導入していく必要があるのです」

新型コロナウイルスの感染者が急増
今回の爆発の後、新型コロナウイルスの感染者数が増えているとレクマンは語る。「爆発後、レバノンの感染例はベイルートを中心に急激に増え、この1週間で新たに1500件余りが報告されています*。これは、パンデミック(世界的大流行)が始まってから国内で報告された全症例のおよそ4分の1に当たります。
爆発の夜には、ベイルート市内の医療機関に患者が詰め掛け、感染制御・予防策をきちんと行うどころではありませんでした。そのため感染した人が増えたのです。この状況への対応を検討しています」
地元組織との協力が不可欠
今回の爆発が発生して最初に対応を始めたのは、レバノンの人びと自身だった。人も物も限られる中、自発的に負傷者の支援に動いたのだ。
活動にあたっては地元の人びととの連携が大切だと、レクマンは話す。「地元の組織は爆発の直後から重要な役割を果たしてきました。彼らが行っている活動に合わせて、私たちの活動の調整を進めていきます」
MSFは爆発が発生した夜とその後の数日間、市民防衛局とレバノン赤十字社に応急用の包帯キットと手術用マスクを提供。その後も追加の医療物資の提供を進め、多数の負傷者の診療に当たる地元の医療体制を支えている。
*8月4日時点感染者数5,271人、8月10日時点感染者数6,812人(Worldometer)
