プレスリリース
イエメン:ホデイダ県南部で戦闘激化──無差別攻撃で民間人が多数死傷
2020年12月15日イエメン西部、紅海に面した港湾都市ホデイダの南部で再び戦闘が始まり、国内でも最も激しい戦線となっている。大きな手術を必要とする民間人の負傷者数は急増し、近郊の町モカにある国境なき医師団(MSF)の外傷病院では、10月以降122人の戦傷患者を治療した。さらに11月下旬からは重傷患者の大半が女性と子どもで占められるようになり、負傷する人びとの属性に明らかな異変が起きている。MSFは紛争当事者に対し、無差別攻撃であっても、あらゆる戦争法規に違反している民間人への攻撃を即時停止するよう訴えている。
止まぬ民間人への攻撃
「モカのMSF外傷病院の患者には戦傷者、交通事故の被害者、産科手術が必要な妊婦などがいます。しかし最近になって突然、兵器により重傷を負った民間人で占められるようになり、深刻な疑問が生じています」とMSFの活動責任者を務めるラファエル・ファイヒトは話す。
「この小さな病院で起きている光景は大変憂慮すべきものであり、許されるものではありません。紛争における民間人の殺傷は、国際人道法の重大な違反であるだけではありません。患者には子どもや妊婦、授乳中の母親、砲撃を受けた牛乳工場で働く男性などがおり、こうした犠牲が正当化される余地はありません」
11月29日、救命のため両下肢をすでに切断され、矯正手術を必要とする女性がMSF病院に運び込まれた。彼女は親戚の女性や子どもたちと連れ立って、アド・ドゥライヒミ地区にある村の家で行われた衣料品セールに訪れていた時に砲撃を受けた。その時何が起こったのかを正確には覚えていないが、父親からその後、彼女らの上に砲弾が落とされたと聞かされた。家はアシとヤシの葉でできていて、何の防御にもならなかった。
「女性は4人いて、私の叔母、兄嫁、そしていとこの2人です。子どもは5人亡くなり、兄の息子、いとこ2人、いとこの子ども2人でした」。彼女は9人もの親戚を一度に失った。
MSFモカ病院はこの攻撃による他の負傷者1人を治療。また生後11カ月の赤ちゃんを、南部の主要都市アデンにあるより高度な治療を行うMSF病院に救急車ですぐに搬送しなければならなかった。しかし赤ちゃんはアデンに向かう途上で亡くなった。
11月24日には道路脇の爆弾が爆発し、結婚式から帰宅途中の民間人7人が負傷、MSFモカ病院に運び込まれた。報告によると、この爆発で子どもを含む5人が死亡した。
その翌日の25日、2人の子どもが道端で不発弾を発見し、地面に投げつけたところ爆発。腹部と胸部に重度の外傷を負い、MSF病院に搬送された。
12月3日、ホデイダにある牛乳工場が砲撃を受け、MSF病院は6人の負傷者を受け入れた。患者らは、同僚のうち少なくとも10人がこの攻撃で死亡したと話している。
激しさを増す戦闘、届かぬ援助
こうした武力による民間人死傷者の増加は、イエメン全土のなかでもホデイダ県南部で、いま最も激しい戦闘が起きていることを示唆する。紛争の激化はまた、何百もの家族が再び自宅避難を余儀なくされていること、砲撃などの危険にさらされる地域の拡大、そして最も必要な時に医療と食料援助が届かなくなることを意味している。
ファイヒトは次のように訴える。「標的を絞ったものであれ、無差別のものであれ、いま起きている攻撃はあらゆる戦争法規に違反しています。“民間人を攻撃するな”と言いたい。ただ生き延びようとしている一般の人びとが殺され、傷つけられている事態は、何としても止めなければなりません」