プレスリリース

新型コロナウイルス感染拡大:MSF、欧州やイランなどで活動開始

2020年03月19日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が広範囲に拡大する中、国境なき医師団(MSF)は、欧州における緊急医療援助活動に乗り出した。現在、イタリアの病院に医療援助を提供するほか、フランスでは社会的に脆弱な集団への医療援助を開始する。また、世界で3番目に感染者数が多いイラン、および国境を接するアフガニスタン西部においても保健当局の支援に動いている。アジア太平洋地域においては、香港で保健教育などの活動を実施。また、医療体制が脆弱な国々での感染拡大に備え、カンボジアなどにおいて医療スタッフへの感染予防研修を行っている。 

イタリアで最初の感染確定が出た病院の支援にあたるMSFスタッフ © Lisa Veran/MSF
イタリアで最初の感染確定が出た病院の支援にあたるMSFスタッフ © Lisa Veran/MSF

新型コロナウイルス感染症関連の主なMSFの活動

■イタリア:
流行の中心地であるロンバルディア州の4カ所の病院に、感染症専門家、麻酔科医、看護師、ロジスティシャンを派遣して医療援助を提供。患者のケアに加え、感染予防の活動を行っている。
■フランス:
協力関係にある医療・社会団体やイル=ド=フランス地域圏保健局と、首都パリと周辺地域で、移民、ホームレス、保護者のいない未成年など、特に脆弱な人びとの検査・ケアに協力する準備を進め、医療施設での診断・隔離・感染者への対応補助も計画している。
■イラン:
重症患者のケアに関する協力を保健当局に申し出。
■アフガニスタン:
イランとの国境近くのヘラート州において保健当局を支援。
■香港:(1月末~)
難民、庇護希望者、視覚障がい者、道路清掃者や高齢者など、感染リスクが高く、感染すると重症化しやすい人びとに対し、保健教育と心のケアを提供。
■カンボジア、パプアニューギニア:(3月初旬~)
医療従事者向けに感染予防や感染者対応に関する研修を実施。
 

ウイルス感染の厳格な予防策が敷かれたパリでは人通りが少なくなった © Aurelie Baumel/MSF
ウイルス感染の厳格な予防策が敷かれたパリでは人通りが少なくなった © Aurelie Baumel/MSF

世界70カ国での活動を維持することが最重要課題

MSFは現在、世界約70の国と地域で440あまりの医療人道援助プログラムを行っている。今回のような新たな感染症の世界的な流行の中でも、すでに何らかの人道危機の下に生きる人びとに対する通常の活動を維持することは非常に重要だ。しかしながら、世界各国における入国・渡航制限によりMSFスタッフの国家間の移動が難しくなっていること、また、医療用消耗品、特に医療スタッフ用保護具の世界的な不足が、医療援助活動の継続に大きな障害となっている。

MSFは現在の継続中の活動地でも、感染予防を中心に、新型コロナウイルスの流行への対策を進めている。今後感染者が出る可能性が高いと思われる場所では、感染予防策を導入し、患者のスクリーニングとトリアージ態勢の確立、隔離区画の確保と維持管理、保健教育の徹底が必要だ。MSFは、世界保健機関(WHO)および各国保健省と連携し、感染者が増えた場合どのような援助ができるか検討を重ねている。 

難民キャンプや紛争地で暮らす人びとのリスクが高まる

世界各地の難民キャンプや、イエメン、シリアといった紛争地で暮らす人びとなど、すでに危機的な条件下で暮らしている人びとへの新型コロナウイルスの影響を、MSFは懸念している。これらの地域では、新型コロナウイルスの流行防止策へのハードルは高く、発症した場合に治療を受けるのも難しいと考えられる。

例えば、ギリシャ・レスボス島にあるモリア難民キャンプでは、人びとは定員オーバーのキャンプに超過密状態で押し込められ、水やせっけんなども不十分な中、こまめな手洗いや人から距離をとるなど、基本的な感染予防すら不可能だ。すでに地元住民には新型コロナウイルスへの感染が確認されており、MSFは難民を早急にキャンプから避難させ、適切な居住地に移送するべきだと訴えている。 

モリアの難民キャンプで5人家族がひとつのテントで暮らす=2019年撮影 🄫 Anna Pantelia/MSF
モリアの難民キャンプで5人家族がひとつのテントで暮らす=2019年撮影 🄫 Anna Pantelia/MSF

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