海外派遣スタッフ体験談
外科チームを率いて紛争の被害者を治療
臼井 律郎
- ポジション
- 外科医
- 派遣国
- シリア
- 活動地域
- タル・アブヤド
- 派遣期間
- 2017年8月~9月

- Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?
-
職場での休暇日数が貯まったので参加可能と考えたから。年初から可能性を考えて、MSFのフィールド人事部と相談していた。
- Q派遣までの間、どのように過ごしましたか?どのような準備をしましたか?
-
MSFから送られてきたシリアに関する書類を読むなど、現地の情報を蓄えてはいた。ただ、最終的に派遣が決まったのは出発の1週間前だったので、特別な準備をする時間はなかった。いつもの派遣と同様に、現地チームへチョコレート、チーズ、ハムなどのお土産を買うくらい。
- Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか?どのような経験が役に立ちましたか?
-
治安に関して、特に厳しい行動規範を守る必要があったが、過去の派遣での経験から無理なく受け入れることができた。
- Q今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
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タル・アブヤド病院で患者を治療するチーム
最近シリアでは、過激派武装組織「イスラム国」が支配する都市が政府連合軍などに包囲・攻撃され、住民が脱出を試みる中で受傷したり、攻撃の直接の犠牲になったりする事例が多発している。
MSFは、約3ヵ月前より、その都市から1時間30分程度でアクセスできる町の病院の機能を強化し、多数の外科患者を受け入れる体制を構築することを目標として、約15人の派遣スタッフと200人程度の病院職員を管轄している。
外国人派遣スタッフの内訳は、外科系、麻酔科および救命救急医計4人と手術室、回復室、病棟、一時救護所などの看護師計6人の他、アドミニストレーターやロジスティシャン、プロジェクト・コーディネーターなど。
今回の主な任務は、外科チームのリーダーとして外国人派遣スタッフと現地スタッフを統率し、日々の戦闘の被害を受けた患者などの診療を行いながら、勤務体系を確立して後任者へ引き継ぐことであった。戦闘被害の患者と、キャンプなどで受傷した火傷患者が多く見られた。
- Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?
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午前8時に事務所にて全体ミーティング。8時30分から病院にて回診開始。10時に手術開始。昼休みを挟んで17時ころまでに予定手術をこなし、その後、夕方の回診をして帰宅。
夜間は、3~4日に一度オンコールで、一時救護所などからの臨時症例を把握、必要があれば病院で診察する。
また、時間外に臨時手術を要する症例があれば、オンコール業務とは別にいつでも対応した。
- Q現地での住居環境について教えてください。
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清潔で広い家にチームで居住し、私は4人部屋。MSFの活動地で初めて冷房を使える家に住んだ。インターネット環境はおおむね良好。食事も美味しかった。アルコールは一滴もなし。
- Q活動中、印象に残っていることを教えてください。
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治安環境が厳しい中での激務で、チームは精神的・肉体的にしばしば疲弊していた。自身を管理するのはもちろん、チームリーダーとして外科チーム全体のコンディションを考慮して、モチベーションとチームスピリットを保ちながらチームの仕事が円滑に進むよう常に目配りする必要があった。これは、苦労する点であるとともに、やりがいのある部分でもあった。
- Q今後の展望は?
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健康を保ち、多くの経験を持つ外科医が必要とされる事態があるときには対応できるよう心掛けたい。
- Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
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とにかく一度行って見て下さい。行かなければ分からないことは多いし、行けばいろいろなことがよく分かります。
MSF派遣履歴
- 派遣期間:2015年4月
- 派遣国:イエメン
- 活動地域:アムラン州ハメル
- ポジション:外科医
- 派遣期間:2006年7月~2006年8月
- 派遣国:チャド
- 活動地域:アドレ
- ポジション:外科医
- 派遣期間:2004年12月~2005年1月
- 派遣国:スリランカ
- 活動地域:バティカロア
- ポジション:外科医
- 派遣期間:2001年11月~2012年2月
- 派遣国:ブルンジ
- 活動地域:マカンバ
- ポジション:外科医
- 派遣期間:1998年3月~1998年6月
- 派遣国:スリランカ
- 活動地域:バティカロア
- ポジション:外科医
- 派遣期間:1996年5月~1996年6月
- 派遣国:スリランカ
- 活動地域:バブニヤ
- ポジション:外科医