海外派遣スタッフ体験談

間違いなく行く価値がある!迷わず一歩を

関 聡志

ポジション
外科医
派遣国
イエメン
活動地域
アルカイダ
派遣期間
2016年11月~2017年1月

Q国境なき医師団(MSF)の海外派遣に再び参加しようと思ったのはなぜですか?また、今回の派遣を考えたタイミングはいつですか?

初回の南スーダンの派遣が予定より早く帰国となり、日本での常勤の仕事はいったん辞めていたので、今回の話があった時はすぐに受けました。

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか?どのような準備をしましたか?

MSFがドイツで行っている外科トレーニングに参加し、日本では以前勤務していた病院にお願いして非常勤で働かせてもらいました。外科で手術の助手をしたり、産婦人科の病棟業務などをしたりしていました。

Q過去の派遣経験は、今回の活動にどのように活かせましたか?どのような経験が役に立ちましたか?

前回の南スーダンの活動と比べると資機材は恵まれており、あまり違和感なく仕事になじめたと思います。

MSFに参加する前、6ヵ月間、産婦人科で研修をさせてもらいました。今回のイエメン派遣では帝王切開や異所性妊娠など産婦人科の症例が多く、その経験を活かすことができたと思います。

Q今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
手術に臨む筆者 手術に臨む筆者

紛争の最前線から約20km離れた町にある病院で、MSFは負傷者の受け入れや地域医療を担っていました。

外国人派遣スタッフは総勢12人で、医療チームはチームリーダーの下、外科医である自分のほかに整形外科医1人、麻酔科医2人、救急医1人、手術室看護師1人、病棟看護師1人が派遣されていました。

現地スタッフは外科医1人、救急医8人のほか、看護師や助手など多くのスタッフが働いていました。

交通事故や銃創、爆傷の症例が多く、開放骨折や帝王切開などは頻繁に搬送されてきます。植皮が必要となる場合も多くありました。

Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

朝7時30分からミーティングがあり、その後は病棟回診と包帯交換、植皮などの予定手術を行っていました。たびたび緊急を要する患者さんが搬送されて、救急救命室(ER)に呼ばれるので、手術室とERとを数え切れないくらい往復していました。

時間外は宿舎のダイニングでスタッフと話したり、映画を観たりして過ごしました。夜間もオンコールで呼ばれることが多いので、休める時に休んでおくようにしていました。

Q現地での住居環境について教えてください。
スタッフと一緒に昼食をとる筆者(右) スタッフと一緒に昼食をとる筆者(右)

自分は運良くシャワー付きの個室を使うことができ、非常に快適な環境でした。前線から近い地域だったため、安全上、弾除けの土のうで窓はすべてふさがっていたので、休日で時間が許す時には屋上で日光浴をしていました。

朝晩は毛布がないと冷えて大変ですが、日中は過ごしやすい気温で、とても快適な気候でした。

Q活動中、印象に残っていることを教えてください。

活動中、子どもが銃撃戦や空爆に巻き込まれたり不発弾で負傷したりして搬送されて来ることが多くありました。助けられなかったことも少なくありませんし、脊髄損傷で下半身麻痺となっていたり、手足を切断せざるを得なかったりしたこともあります。

空爆に巻き込まれた子どもの手を切断しなければならない時、父親に状況を説明すると「これも神の御意志だ。とにかくあの子を助けてほしい」と、沈痛な表情で手術に同意していました。自分がいま出来る精一杯の治療をしても、義肢などのサポートもほとんどない状況で、この子たちのこれからを考えると、正直、複雑な気持ちになってしまいます。

Q今後の展望は?

帰国後、2017年3月から南スーダンへの派遣が決まっているので、それに向けてまた準備をしたいと思います。

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス
一緒に働く仲間との、新しい出会いも 一緒に働く仲間との、新しい出会いも

参加に際しては、日本での仕事やキャリア、家族や金銭的な問題など、本当にたくさん考えなくてはいけないことがあると思います。でも、間違いなく行く価値はあります。

自分がこれまで現地で一緒に働いた外科医のなかには、定年退職してから参加したという人も少なくありません。70歳でも現役で活躍していました。今すぐでなくとも、その時が来たら迷わず一歩を踏み出してみてください。

MSF派遣履歴

  • 派遣期間:2016年7月~2016年9月
  • 派遣国:南スーダン
  • 活動地域:ベンティウ
  • ポジション:外科医

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