海外派遣スタッフ体験談

整形外科に帝王切開、さまざまな経験を現地で役立てる

関 聡志

ポジション
外科医
派遣国
南スーダン
活動地域
ベンティウ
派遣期間
2016年7月~2016年9月

Qなぜ国境なき医師団(MSF)の海外派遣に参加したのですか?

小さい頃からの夢でした。その一言に尽きるかと思います。医師になってからもMSFを目標にしてやってきたので、外科医として経験の条件をクリアした段階ですぐに応募しました。

Q派遣までの間、どのように過ごしましたか? どのような準備をしましたか?

整形外科や産婦人科に短期間勤務させて頂き、さまざまな分野の経験を積むようにしました。また英語は昔から苦手でしたので、インターネットでの学習や英会話学校に通い、英語力の向上に努めました。

Q今までどのような仕事をしてきましたか? また、どのような経験が海外派遣で活かせましたか?

初期研修の後、救命救急センター、消化器を中心とした外科で勤務しました。その後、整形外科、産婦人科で短期間研修をしました。

産婦人科で7ヵ月間勤務し、帝王切開に限らず自然分娩や胎児エコーなども経験したので、現地で助産師とのコミュニケーションもスムーズに取れ、良好な関係を築けたのではないかと思っています。

Q今回参加した海外派遣はどのようなプロジェクトですか?また、具体的にどのような業務をしていたのですか?
手術室スタッフとともに(筆者中央) 手術室スタッフとともに(筆者中央)

約12万人の人びとが暮らす国連民間人保護地域で唯一、病床を持つ病院での活動で、保護地域内に限らず周辺地域からの患者さんを受け入れていました。病床数は約100床で、海外派遣スタッフは15人程度です。外科医は自分1人で、麻酔看護師が1人、現地スタッフの手術室看護師が4人という構成でした。

主な症例は銃創や骨折、感染創、壊死(えし)による四肢切断、異物除去(石や木片、弾丸など)、蛇咬傷(こうしょう)などでした。また小児科からは腸チフスや腸重積(腸の一部が重なりあってしまう症状)の診察依頼、内科からは腹部の腫瘍や腹水がたまる症状での腹部エコーの依頼なども多くありました。助産師からは乳腺炎、分娩後大量出血や前置胎盤、常位胎盤早期剥離(はくり)の疑いでの診察依頼があり、帝王切開も行いました。

Q派遣先ではどんな勤務スケジュールでしたか?また、勤務外の時間はどのように過ごしましたか?

毎朝8時から医療スタッフのミーティングがあり、8時30分から外科病棟の回診、9時30分頃から外来診察と並行して外科病棟の包帯交換、予定手術をしていました。もちろん緊急の症例やコンサルトがあった場合にはその都度対応していました。

平日の勤務時間外は基本寝ていることが多かったと思います。週末で時間があるときには派遣スタッフみんなでカードゲームやバスケットボールをしたり、ダンスパーティーをしたりすることもありました。

Q現地での住居環境についておしえてください。

自分は毎日24時間オンコールであったため、すぐに寝られるようにとエアコン付きのプレハブ1部屋を3人でシェアして住んでいました。プレハブでない派遣スタッフはテントでの生活でした。昼食と夕食は現地スタッフが作ってくれますし、美味しかったので食事に困ることはありませんでした。

Q活動中、印象に残っていることを教えてください。
活動地を離れる帰国の途、飛行場で 活動地を離れる帰国の途、飛行場で

整形外科的な疾患が多数を占めており、消化器外科をメインに診療してきた自分には慣れない部分も多くありました。また女性の診察や手術をする際には夫や父親の了解を取る必要があったり、伝統医療への信頼が非常に強かったり、文化の違いに苦労する部分もありました。

自分が現地を離れる際には、現地スタッフや患者さんからたくさんの感謝の言葉を頂き、一生懸命やろうとしていることは伝わったのかなと思っています。

Q今後の展望は?

今は再度の派遣の機会を待っている状況です。決まり次第すぐに行くつもりですので、それまでは英語力のさらなる向上を目指したいと思います。

その後は、現地で自分に足りないと痛感した分野(整形外科や血管外科など)について学びたいと考えています。日本に軸足を置きつつも、定期的にMSFの派遣に参加できればと思います。

Q今後海外派遣を希望する方々に一言アドバイス

いろいろな条件や職場、家庭環境など、派遣にはさまざまなハードルがあるかと思います。ですが、行くと決めてしまえば、思いがけないところから助けを得られたりもします。たくさんの方がMSFの活動に参加されることを願っています。

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